第2話 人として
第2話です。
村の景色を眺め、深呼吸をした。透き通った風、水から反射された光、楽しそうに畑を耕している人々。
長年ここに住んできて、人々はどんどん成長しているというのにこの景色は全くといっていいほど変わっていない。
多分この先もずっと変わらない。いや、変わってほしくない。と目を瞑りながらそのような思いを馳せていた時、一言の怒鳴り声が響いた。
「こらーー!!シバ!!!いつまで時間をかけているんじゃあ!!」
爺さんの声だ。先のことに夢中で俺も飯のことを完全に忘れていた・・・
「おい!エリシー戻るぞ!」
「はーい」
エリシーが俺に返事をした後、目を瞑りながら丘を降りていくエリシーの後を続いて俺も丘を降りた。
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食事中唐突に爺さんから質問された。
「ところでお前たち、もうすぐアトリビュートに行くんじゃろ?荷造りは終わっておるのか?」
そう聞かれて俺は「ああ。」と素っ気ない感じで答えた。
エリシーは「まだだよ」というかと思っていたが、俺と同じく「うん」と答えた。意外だった。
エリシーはいつも直前になってようやく動く人間だと思っていたのに。
「そうかそうか。そういえば、お前たちの使える神脈ってなんじゃったっけ?」これまた唐突の質問だ。
認知症が進行しているのか、はたまた俺たちに旅立ちの意識を強める為にわざとやっているのか分からないがどっちに転がったとしても面倒なので、俺は無視した。
エリシーはその質問に対して「私は水の神脈よ!」と答えた。
「水かぁ、ならエリシーは婆さんと同じじゃな。」長年の経験で分かる。
これは思い出話コースに入ると・・・こうでもなるとこの人の話の最中に離席するのは許されないのだ。
「へえ!ばぁばも水属性だったのね!あっ一つ質問していい?ばぁばは昔何をしていたの?」
「婆さんは昔は国王補佐として務めていたんじゃよ。婆さんは昔から人として素晴らしかったからのぉ。」という返答がきた。
これには流石に驚きを隠せなかった。物心つく前には婆さんは死んでしまって話をした記憶なんてなかった。
当然、婆さんが国王補佐だったことも当然知らなかった。
「国王補佐である以上常に側にお仕えしなきゃいけなかったと思う。そんな中儂と婆さんが出会って結婚して今に至るわけじゃ」
おいおい、随分簡潔に終わらせるじゃないか。
そこはもうちょっと詳しく教えてくれる所じゃないのか?はぁ、仕方ない。
「なぁ、婆さんのいた時のリップルってどういう感じだったんだ?」
「まあ昔も今も水の国が落ち着いてるのには変わりないぞ。いつの時代になっても国王と神は心優しき人物じゃ。まあ他の国は知らんがの」
なんやかんや話しながら俺は昼食を完食し、そのまま自分の部屋に入って学校で使った教科書を広げた。
「慈愛の大国”リップル“ 武装国家”イグニス“ 神秘たる空島”ゲイル“ 武力主義の”ソイル“ 俺はどこの国に行くことになるんだろうな」
そう教科書を眺めながら俺はベットに身を移し、深呼吸をしながら浅い眠りへとついた。