第16話 団長との対談 シバside~
第16話目。
初任務を終えてから、俺は芝生の斜面で自己研鑽に励んでいた。
この自警団に入ってからというもの、副団長のランブルやこの前のアイツらの攻撃を避けるどころか受け止める事さえできなかった。
“はじめてだったから緊張していた”みたいな言い訳はいくらでも言える。
だが、それらを言い連ねることができるということは自分が未熟だったという証にもなる。
俺は他の人とは違い、神脈で何かを飛ばすことは出来ないし、先祖から託されてきているものもない。
俺ができるのは“自分の神脈で一度創ったものを再度素早く出せる”言い換えるのであれば、”コピー“みたいなものだ。
俺は初任務が終わってから「自分にできる戦い方は多彩な武器を使った戦闘」ということに気付き、そこで今こうして自分の神脈で新たな武器を創っている。
もちろん頭の中で想像して創ることも出来なくはないが、一度でもそのイメージが消えると1からやり直しになる。そうなりたくはないから武器を扱っている鍛冶屋の方に協力してもらって武器を見ながら創っている。
「おい坊主!そろそろ休憩にしねぇか!?朝から昼までずっとやってちゃ気がおかしくなっちまうぜ!?」
「鍛冶屋のおじさん!俺は大丈夫です。でも俺は早く力をつけたいんです。その為には休憩なんてしてる暇など、、、いてっ!」
話の最中突然頭に軽いゲンコツが降った。
俺は後ろを振り向くと、そこにはなんと頂神のパルヴァティ様が立っていた。
「ぱ、パルヴァティ様!?ご苦労様です!えっと、、、俺何か無礼な事をしましたでしょうか?」
「盗み聞きして申し訳ないけど、あなた朝からそれやってるの?」
「あ、はい。」
「はぁ、ちょっと隣座るわ。あっ、貴方には申し訳ないけど今はこの子とお話しをしたいの。いいかしら?」
「いいえ!全然大丈夫です。それでは」
すると、鍛冶屋は少々汗を垂らしながら素早く去っていった。
そしてパルヴァティ様が口を開く。
「・・・あなた、バカなの?」
俺は心臓に矢が刺さったような苦しい感覚になった。何かパルヴァティ様の気に障る様な事を・・・
「休みもせずに自己研鑽に励む。その姿勢は評価するけど、神も人間もそんなすぐには大きく成長しないわ。」
「・・・今の俺は、まともに戦える土俵に立っていないんです。俺はこの前の任務で敵の攻撃をモロに受けてしまいました。」
「俺の神脈は過去に自分で創った物を素早く出せる。っていう力なんです。」
「だから、今は自分の中にある武器の種類を増やしたいんです。」
「へぇ・・・“創った物を素早く出せる“ねぇ。」
パルヴァティ様が少し溜めた後、俺にこう言い放った。
「あなたの神脈はなんだかテイトに近しい感じがするわ。」
「イミテイト様に?」
俺は疑問に思った。そもそもでイミテイト様の神脈はなんなのだろうと。
聞いてみようと思ったが、その時のパルヴァティ様の表情は少し頬を染め、軽く微笑んでいた。
「あっそろそろ仕事に戻らなきゃ。」
「仕事に戻る前に一つ聞いておきたいことがあるの。」
「なんでしょうか?」
「あなたは、どうして強くなろうとするの?」
パルヴァティ様の質問に俺は考える間も無く答えを言い放った。
「前までは、幼馴染との勝負に負けないため。っていう理由だけで強くなろうとしてました。」
「ふーん。そうなんだ。」
「・・・ですが、初めての任務を通じて”守るべき人々のために戦う”こっちの方が自警団として自分を律することもできると思いました。」
そう答えた瞬間パルヴァティ様が少し止まった様に見えた。
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とある森の中にて・・・
「ねぇ!なんで君はそんなに強くなろうとするの?」
「人間は力が強い人は悪い人になるってお婆ちゃんが言ってたけど、君は悪い人になりたいの?」
「まぁ確かに、人間の怖い人はみーんな力が強くて体がデカい奴らばっかりだよ。」
「でも同じ人間の僕は、誰かを傷つけたり物を奪ったりするんじゃなくて、”守るべき人を守れるようになる“為に強くなる!」
「それが僕のモットーだよ。」
「でも・・・君は人間だよ。悪い人と出会っちゃったらひょっとしたら君も悪い人になっちゃうかもしれないし・・・」
「じゃあ質問。種族が神だからといってみんな性格はいいのかい?」
「現に、君は君のお婆ちゃんが死んじゃってから色々といじめとか受けてるみたいだけど。」
「それは、ええと・・・」
「人間でも神でも悪い奴らはいる。それに負けないように強くなる、それだけのことだよ。」
「力があれば弱い人達も、そして君も守ることができる。だから僕は強くなりたいんだ。」
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数秒硬直していたパルヴァティ様が俺の顔を見て微笑みながら
「あなたはやっぱり・・・強くなると思うよ。」
と言った。