第15話 冷徹の氷王 エリシーside~
15話目です。
遅くなってすんません
闘技場で対戦を終えたルフレ団長は控え室へ向かい、戦場を去った。
ルフレ団長は何故この様な大会に出たのだろう。
騎士団の仕事とかないのだろうか?
「団長さんはね。この闘技場に数年ぶりに参加したのよ。」
「エリシーちゃんの相手をしたのが今日だったのもこれに参加する前に腕を温めておきたかった事が理由だったのかもね。」
それってやっぱり舐められてたって事じゃない・・・
「でもいい機会じゃないかしら?」
「ん?どういうことですか?」
「ここならエリシーちゃんが知らない団長さんの力を見れるかもしれないわよ。」
「あっ次はこの闘技場の常連さんらしいわよ。団長さんも手を抜かずに戦うんじゃないかしらね。」
「きっとカッコいい姿も見れるわよ。」
「それは・・・興味あります。」
「買い物は試合が終わってからでもいいですか?」
「いいわよ。あっ次の試合が始まるらしいわ。じっくり見ましょ」
フローラさんの発した言葉と同時に辺りの観客がまたしても歓喜で溢れた。
そして、アナウンスが入り選手の名前をあげる
「最終戦は「闘技場の常連者・イブ選手」vs 「冷徹なる氷王・騎士団長ルフレ選手」です!!」
「それでは選手のお二人方。入場してください!」
すると戦場にある双方の門がガラガラと音を立てながら開門する。
「よぉし。騎士団だろうとなんだろうと関係ねぇ。6連覇目指して頑張ってやる。」
イブ選手は何やら杖の様なものを手にしている。
「フローラさん。あの人が持ってる杖ってなんですか?」
「あれは神脈をより簡単に安定させて出すことができる道具よ。」
「あれはルール上使用していいことになってるから、別にズルしているわけじゃないわよ。」
「じゃあ私があれを使って試合に出ることもできるってことですか?」
「いいけれど、まだあなたには早いかしら。」
「出れるとしても最低限の戦い方が身についてからね」
「試合の準備が整いました。それでは決勝戦開始!!」
その言葉と同時にウォォォという叫び声が会場内で反響した。
ルフレ団長は私の時と同様に白い煙をステージ中に充満させた。
私の時よりも規模がデカい!
うう・・・観客席にいるのに寒さがこっちまで伝わってくる。
他の観客も防寒具を着るなり、神脈で寒さを凌いだりしていた。
「さあ。貴様の力を見せてみろ。」
「さ、さすが我が国の騎士団長さんだ・・・。だが、どんな相手だろうと俺は怯まん!!」
「葉ノ脈・グラスフィールド!」
ルフレ団長の霧を防ぐ様にイブ選手の辺りに葉でできた壁が生い茂る。
これでステージの半分だけルフレ団長の霧で満たされた状況になった。
「さて、まずはこれだ!葉ノ脈・リーフブラスト!」
お手並み拝見と言わんばかりにルフレ団長の霧を防いでいる葉の壁からシュバババと鋭い葉がルフレ団長を襲う。
ルフレ団長は私と同じ様に氷のクリスタルで防ぐのかと思ったが、ルフレ団長はなんと素の状態で軽々しく避けまくっている。
「ただ正面から飛んで来ただけと思ってもらっちゃ嫌だな〜」
「その葉は何かにぶつかると反射する性質がある。そしてその葉の中に俺自身が操れる葉が数枚あるのさ。」
「っ!シュ・・・!!」
「・・・なるほどな。反射に反射を重ね、更には貴様が操ることでより乱反射を起こさせるということか。」
「はぁ、準備運動にしては中々だ。」
するとルフレ団長は体の周りに氷の盾を作り葉の壁へ踏み込んだ。
それは観客席から見ても目で追いつくので精一杯な程の速さだった。
「氷脈・氷葬拳」
ルフレ団長の氷で作られた拳が葉の壁に触れた瞬間、壁が一気に凍り粉砕した。
これには観客のみんなも興奮を抑えきれなかった。
いとも簡単にあの分厚く巨大な壁を秒で破壊できるなんて誰しも思ってもいなかったからだ。
「うお!?まじかっ!まだ次の策の準備してたっていうのに!」
「・・・だがこちらに入ってきた時点で有利な状況を掴んでるのは俺だぜ!」
「グラスフィールドは俺の神脈の領域化したもの。つまり、あんたは俺の手の内にいるのと同じだ。」
「手っ取り早くあんたの足元を取って試合終了にしてやる!」
するとルフレ団長の足元からツタがニョキニョキと生え始める。
ルフレ団長は驚きもせず、更には足元から生えてきているツタを気にせず前を向いている。
「・・・戦いにおいて相手の身動きを抑えることは戦況を有利にするための一つだ。」
「だが、俺も騎士団長の身だ。そう易々と引っかかってしまっては威厳がなくなってしまう。」
「3割の力で行くぞ。」
「氷脈・地河氷結!」
団長は立ち止まり片手を地面に突き辺りの地面を“ビキビキビキ”と一瞬で凍らせてしまった。
幸い観客席までは凍ってはないものの戦場の壁全体に氷が貼っている。
私はハッと団長の方へ勢いよく振り向いた。
すると、先程まで威勢があった相手がカチコチに凍っていた。
「避けるか防ぐくらいはするかと思っていたが、呆気ないな・・・」
「まあ、“あいつ”よりかは骨があったな。」
するとここで試合終了の合図が鳴り響く。
「イブ選手!行動不能、よって勝者はルフレ選手!!」
「ルフレ選手。直ちに神脈を解除してください!」
このままだと凍死してしまうことを危惧したのか、司会者は焦った口調でルフレ団長に解除するように促す。
団長はすぐさま身体から出していた霧を消し、凍っていた地面や壁の氷も徐々に溶け出した。
「ふぃぃぃ〜〜〜寒ぃぃ!!」
「ああ!!チクショウ!!!せっかくの連覇が途切れちまった!!」
「活気だけはあるやつだな。」
「貴様の実力はそこら辺の奴よりは上だ。数年後アトリビュートで行われる大会でも活躍はできるだろう。せいぜい励め。」
団長はそう告げると、門をくぐりその場を後にした。
「あーん!やったわ!やっぱり団長さんが勝ったわ!」
「そ、そうですね。あ、あの・・・苦しいです。」
「やっっっぱり団長さんが一番だわ!」
「そう思わない!?エリシーちゃん」
「は、はい。そう思いますが・・・離してください。苦しいです・・・」
「フローラさんの胸に顔が埋まって・・・」
「あらあら・・・ごめんなさいね。つい熱くなっちゃって・・・」
「エリシーちゃんは、この試合で得られたものはあった?」
私はその質問を聞かれて深々と考えた。
色々あってうまく言語化できないけど、一つだけ言えるのは・・・
ルフレ団長は“未だに本気で戦ったことがないだろう”ということだけだ。
私の時もそうだったけど、なんだか子供の遊びに渋々付き合ってる大人みたいな感じだった。
簡単に言えば『面白味がないただのごっこ遊びをしている』みたいなことだ。
「なんでお前らがここにいる」
「はへぇ!?る、ルフレ団長!?」
「ええっとこれは、買い物途中で・・・」
「あっ!フローラさん!お買い物の続き忘れてますよ!」
「さぁ早く買いに行きましょう!」
フローラさんの腕をガシッと掴んで私はフローラさんとその場を去ろうとした。
「ちょっとぉ〜。急かさないでぇエリシーちゃん」
「フン・・・」