兄は弟の実力を認め、弟は兄を偉大だと思って育った。
三歳年上の兄がいる。何をやっても勝てない兄だ。
今日も今日とて剣で向かっていったが、腹を突かれて食べたものを吐き出す目に合ってしまった。
兄は父に叱られていたので、ざまを見ろと思ったが、俺は父に向かって、俺が卑怯にも後ろから飛びかかったせいだと言って兄に謝った。
父に拳骨を一つもらって、兄さんにもう一度「ごめんなさい」と謝った。
兄は笑って許してくれたが「最近はユーノの力が強くなってきているから、手加減ができなくなってきているので、突然飛びかかってくるのは止めてくれ」と言われた。
少し兄に認められたような気分になって「わかった!!」と返事をして、互いに正剣で構えているときしか戦わないようになった。
十回に一度位勝てるようになるとそこからは早かった。
半年もしない内に戦った数だけ、俺の勝利になった。
父は武力があればいい!!という人だったが、母は勉学ができない男など何の役にも立たないと言って、兄と俺には勉強をこれでもかと言うほど詰め込んだ。
兄は俺に剣で負けだしてからというもの、勉学に力を入れるようになり、いつも母に褒められるようになった。
それが悔しくて、俺も必死になって勉強した。
そうしたら、俺も母に時折褒められるようになった。
やはり、兄の後追って行けば俺は両親に褒められる人間になれると思った。
兄が学園に行くと、俺は一人で母に付きっきりで勉強を教えられたが、兄ほど褒められることはなかった。
俺ががっかりしていると、母は「あなたは努力で成果を掴み取る子なのね。努力を忘れないで、毎日積み重ねなさい」と俺も学園へと送り出された。
俺は剣でも学業でも入学当初から首席を取った。
気を抜いて、首席から落ちるのが嫌だったので、予習復習は欠かさなかった。
苦手だったのは魔法だった。
これだけは両親からも、兄からも教えてもらえなかったのだ。
魔力量はそこそこあると評価されたのだが、俺は一度に使ってしまう量が多いらしく、数度使うと魔力切れを起こしてしまっていた。
魔力を少なく出すことが上手なクラスメイトに教えてもらいながら、一度に魔力量を少量ずつ使う方法を覚えていった。
ちまちましたことは苦手だったが、必要なのだから頑張らねばならないと自分に言い聞かせ、張り出された兄の成績を見ては、己を奮い立たせた。
それでもやっぱり魔法の授業は苦手で、授業の最後に全ての魔力を使い果たす魔力を打ち出して、ストレスを発散していた。
毎回魔力を使い果たしているせいだからか、どんどん魔力量が多くなり、授業の最後に魔力を使い果たすのに苦労するようになった。
俺が全力で魔法を放つと、強化された魔法教室ですら、壊れる可能性があると言われたためだった。
俺は兄の成績より劣りたくなくて、必死に頑張った。
卒業する時には、魔力でも首席がもらえるようになり、卒業生代表に選ばれて、俺は誇らしい思いになった。
両親と兄にも褒められて、俺は嬉しくて仕方なかった。
領地に戻ると、兄が「家督はユーノに譲る」と言い出した。
俺は家督などほしくなかったので、辞退して、俺は俺のやりたいように生きる!と言って、着替えだけをカバンに詰めて、家を飛び出した。
徒歩で、たまに馬車に乗せてもらったりしながら、色んな国を回って、一人の女と出会った。
その女とは何故か離れがたく、女のいる地に腰を落ち着けることにした。
両親と兄に手紙を出し、しばらくはここに腰を落ち着けると手紙を出すと、父が会いに来た。
父は会うなり、俺に家督を継げと言った。
俺は兄が家督を継ぐべきだと思っているし、俺にその能力はないと知っている。と父を説得した。
そして父に、好きな女のエリカだと紹介した。
父と長い長い時間話し合って、父はエリカに俺のことを頼むと言って、帰っていった。
帰り際、家に一度帰ってきなさい言われ、そのうち帰ると答えた。
エリカは辺境伯の一人娘だったので、俺が婿養子になることで話は進んだ。
だが、俺の両親からの許可を取らなくてはならなくて、婚約したいと伝えに、両親と兄が待つ家へとエリカを連れ帰った。
エリカに、兄を紹介して、エリカには俺が子供の頃からずっと背中を追いかけている相手だと紹介した。
兄は既に結婚していて、知らぬ間に子供が出来ていた。
「子ができたと教えてくれないのはあまりにも酷くない?!」
と拗ねると「帰ってこないユーノが悪い」と父と兄の二人に拳骨をもらった。
エリカは他国の辺境伯だ。
陛下に謁見を申し出て、エリカと結婚したいことを申し出て、一週間ほど掛かって、有事の際は帰ってくることを条件に、許可が降りた。
エリカの国と戦争が起こらないことを願いながら、辺境で、魔物と毎日戦っている。
魔力量がどんどん増えていて、今なら兄に勝てるかもしれないと思っていた。
倒しても倒しても現れる魔物の原因を探すと、ドラゴンが辺境伯の山の中に巣を作っていた。
俺達は魔物を狩りつつ、ドラゴンを倒す機会を伺っていた。
ドラゴンの夫婦が卵から離れた隙に卵を隠した。
人間が育てて、懐かれたなら、人間の味方になると教えられていたから、何としてもこのドラゴンを俺の家族にすると決めていた。
卵を盗まれた親ドラゴンは怒り狂っていた。
卵を探して、縦横無尽に飛び回り、俺を見つけて執拗な攻撃を仕掛けてくる。
俺の全身に血が滲んで、痛みを感じないところのほうが少ないような気がする。
もう負けてしまうかもしれない・・・と思った時、兄の背中を思い出した。
魔法と剣を使って一匹のドラゴンの上に飛び乗り、首筋を一突きにした。
そのまま失速して、俺死ぬかもと焦っていると、落ちた衝撃はドラゴンが吸収したようで、俺はドラゴンの上から落ちて、強かに背中を打った痛みに悶えた程度で済んだ。
もう一匹が連れ合いを殺した俺をめがけて炎を吐き出して攻撃してきたが、俺も魔法で必死に防いだ。魔法でドラゴンを縛り上げることに成功して、地面に引き下ろし、眉間を一突きした。
何とか二匹のドラゴンを倒したが、俺は全身傷だらけで足は千切れかけていた。
このままじゃ死んでしまう。
ドラゴンの肉を食べると、失った血肉が戻るという噂を信じて、俺はドラゴンの肉にかじりついた。
本当にみるみるうちに怪我が治り、千切れかけた足も元に戻った。その上、活力が湧いた。
カツカツコツコツという音が卵を隠した当たりで鳴り始めたので、側に寄って、卵を抱きしめてみた。
卵にヒビが入り、内側から卵にヒビが入り始めた。
嘴が卵の殻から突き出てきて、その奥にドラゴンの雛の顔が見える。
俺を見て嬉しそうに鳴き声を上げ、必死に卵の殻を破って、外の世界へと出てきた。
ドラゴンの雛は俺を見て、俺を親だと認めたようだった。
名前をクークと名付けた。
クークが飛べるようになるまで待って、クークが俺に乗れと言うので、クークの背中に乗ると飛び上がり、辺境伯の屋敷まで乗せてくれた。
俺以外にはまだ歯を剥くが、追々懐いてくれると信じたい。
倒したドラゴンの骨で細工を作り、エリカに持たせると、エリカにも歯を剥かなくなった。
俺はいつの間にかドラゴンスレイヤーと呼ばれるようになり、俺はクークに乗って、世界を飛び回ることになるのは別の話に、なるの、かな・・・?
ハイファンタジーで問題ないでしょうか?
不安です・・・。