7話 「告白─秘密」
----9月2日 放課後 帰り道
「あっ、ありがと…感謝するわ。瑠璃」
俺と天ノ川は二人で下校中だ。しかし、あんな事がありお互い沈黙を貫いていた。そん中先に口を開いたのは天ノ川だ。
「あっ、いや、いいよ。実際俺も手伝ったわけだからさ。大した事はしてないよ」
「でも凄いわ!!あんな空気の中、先生に真っ向から立ち向かうなんて普通じゃ出来なもの」
そう言われると照れるな、ハハ。本当は天ノ川が泣いてるの見て罪悪感が込み上げてきただけなんだけどね。後悔すると寝つき悪くなるからね。
それまでは俺もしらばっくれようとしてたさ。
「で、でね?話聞こえてた?」
天ノ川は、こっからが本題だ。といった雰囲気で話題を変え、質問してきた。その質問の意味はおそらく先生と天ノ川の会話のことだろう。
「いえ、怒鳴り声しか聞こえてきませんでしたよ」
「で、でも。その、れ、霊媒師の事は聞いたわよね?」
その話に触れるのか。怖いな。趣味だとしても…本当だとしても。パンドラの箱ですぜ、そりゃ。
「き、聞いたけど。大丈夫ですよ。口は固いし広める友達もいないので」
とりあえず当たり障りのない返しをしたが、次にかえってきた言葉は、予想外のものだった。ウソ、期待してたものだった。
「お化けって信じてる?」
「えっ、見えたことはないですけどアニメにはよくいるんで僕もどっかにいるんじゃないかなぁ〜と思います」
「そっ。あ、あのね」
天ノ川は言いづらそうにモジモジと体を揺すり、頬を赤らめ、目線をやや泳がしながら言葉を続ける。
「わ、私霊媒師なの。ホンモノよ」
「霊媒師っていうのは具体的にはどういうものなんですか?」
「信じてくれるの!?」
「そういうのには理解があります」
本物って言われてもな…
異能力が使えるとか霊と戦いますとかっていう厨二心くすぐるものじゃなくて、神社でお祓いしますとか、霊が見えます、話せます。っていったものだろう。
「霊媒師って言うのはね霊に干渉できる存在の事なの。でね、それっていうのは2種類にに別れてて、1つが霊を祓う除霊術師。もう1つが霊を呼び出す降霊術師っていうの。」
????なんか凄いこと言い出したな。
霊を呼び出すとか凄くないか?やってみたい。
「で、私は除霊術師なの」
オーマイガー…降霊術見たかったのに…
「今回の七不思議の件も除霊活動の一環なの。あの学校にはそれなりに強い霊がいたのよ」
「じゃあ、あのスピーカーと御札はそのため?」
「ええ!!そうよ。音で引き寄せて御札で霊縛するっていう手筈だったの。その時に霊が抵抗して、あんなことになったのよ。でも、その霊は無事祓ったから大丈夫よ」
なんか思ってたのと違うな。厨二心くすぐられる内容だ。でも…すげぇ。
そこから俺は霊媒師についてのあれこれを聞いた。
普段なにをやっているのか、何が目的なのか。
「そうか…天ノ川はヒーローみたいだな。すげぇよ!霊怪ってやつから皆を守るってカッケェよ!!」
「べっ、別に凄くないわよ…」
天ノ川は赤面し手を後ろに組みながらそう言った。誰にも他言してないって言ってたし褒められた事は無いのかなぁ。だとしたら、そりゃ嬉しいか。
いや待てよ、誰にも他言してないって…
「なぁ、そんな事俺にペラペラ喋っていいのかよ」
「いいえ、秘密よ。一般人にはね」
一般人…?まさか…俺口封じされる!?
いや、違うな天ノ川は寂しかったんだ。誰も助けて貰えず一人で今回も頑張った。だから、欲しいんだろ。
「新宮瑠璃、私と一緒に霊媒師になりなさい!!」
「ええ」
「暇でしょ?良い刺激になるわよ」
「まぁ、確かに暇なんでいいですけど」
確かに暇だけど、他人に言われると腹立つな。でもただの他人ってわけじゃないか。
「なら決定ね」
「私ね、あの時本当に終わりだと思ったわ。霊媒師の事もバレてあんな事件を起こしたと思われて…だからね瑠璃が助けてくれて凄い嬉しかったわ。ありがと」
「ど、どういたしまして」
天ノ川は数歩先に行き、振り返って言った。
「これからは同じ霊媒師よ!!仲良くいきましょう!!」
その姿は夕日に照らされ、髪がなびいていた。とても綺麗で美しかった。にしてもこんな人がこれから同じ霊媒師になるのか。いまいちどういうのか分かってないけど…
それにしても「仲良くいきましょう」か…
「ああ、よろしくエリス」
そこで天ノ川…いや、エリスはムッとした表情で腰に手を当てて言った。
「でも、私先輩だからね」
「あっ、すみません」
「でも名前呼びも悪くないわ!」
エリスは意地悪な笑顔で俺に笑いかけて言った。
こうして、おれの霊媒師活動が始まる。