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5話 「七不思議創造─終わり」

­­­­--­­--9月2日 同刻 ­

­--­­--天ノ川エリス視点­­­­--­­--



「何故呼び出されたかわかるか?」


私を廊下に呼び出し開口一番高橋先生が問いかけてきた。呼び出された理由は分かる。でも何故バレたかが分からない。─しかし、昨日私は帰り際をこの先生にみられているが、それだけで判断したと言うの?


さて、どう答えるべきかしら。肯定か否定か。

とりあえず肯定しておけば怒られなさそうかしらね。


「えぇ、私がこの事件を起こしたと疑っているからでしょう?」


「その通りだ。だが私は、疑っているのではない。ある程度だが確証があって君を呼んだ」


「確証?」


確かにあなたの手に持っているスピーカーも御札も時計も仕掛けたのは私よ。でも、スピーカーも時計も落としたのは私じゃないわ。


「あぁ、これは君の物だろう?」


そう言って手に持っていたスピーカーを前に出した。


「確かにそれはそうよ。でも事故とは関係無いわ!!」


「このスピーカーの模様、それにあの御札。はぁ…噂は本当だったんだな」


「噂?なんのことよ」


「お前、霊媒師やってるんだって?」


「えっ!?」


奥羽先生が驚いて声を上げた。今まで喋らないから存在忘れてたわ。一方で秘密を暴かれた当の本人は驚いて声すら出なかったのだけれど。


「はぁ、その様子だと図星か…まさか本当だったとはな。両親もやっているのだろう?その手伝いという訳か?」


「どこ情報よ、それ」


「それは言えん」


「どういうことよ!!」


「そういう事は、きちんと示すべきだと思います」


そこで奥羽先生は天ノ川に加担するように話に加わる。高橋先生は怪訝な表情で肩をすくめる。


「むっ、奥羽君もかね」


「個人情報ですし、情報の出どころ次第では信憑性に欠けるものかと」


「その通りよ!!」


良いこと言うじゃない奥羽先生。それにおかしいわ。

確かに私は霊媒師よ。今回の事故─いえ、事件ね。その事も霊媒活動が関係してる。でも、他人に霊媒師だって言ったことは一度もない。両親も高橋先生の言うとうり霊媒師なのだけれど誰にも言うなと口止めしたのはその両親よ。だから言うはずないわ。なら一体何故…


同じ教師にも反対されればいくら高橋先生でも意見を変えてくれるようだ。


「しょうがない。なら話そう。確かに信憑性には欠ける部外者だ。その情報を持ち掛けてきたのはな。ある日職員室に一本の電話がかかってきたんだ。男の声で、

『貴校に在学している天ノ川エリスと女性がいると思うのですが、彼女は親から霊媒師になるよう言われていて現在でもその修行を続けているはずです。それだかけならいいのですが、時折彼女はその事を言い訳にトラブルを起こします。私もその被害に遭いましたので忠告しておきます』

という内容だった」


「なによ、それ…」


高橋先生の─否、その電話の男の話にいくつかおかしいところがあるわ。でも1番の問題はそれを言い訳にトラブルを起こすというところ。いえ、被害にあったというのも…

何回も言うようだけど、私は自分の正体を他言していない。一体何者なの?

高橋先生は畳み掛けるように言葉を発する。


「最初は、いや、ついさっきまでただの悪戯だと思っていたよ。それに私はその証言は証拠の1つとしてみている。これが確証にまではつながっていない」


「1つとして?」


「そう、私は昨日君が放課後1人で教室に居たところを見た。そしてスピーカーからさっきのと同じ音が聞こえた。

その時はなんの音か分からなかったが先刻聞いて確証したよ」


高橋先生の言葉は探偵が事件を推理するような、確証と自信に溢れた声で犯人を問い詰めるかのように強いものだった。

事実、私は瑠璃の言う通り心配になって小さめの音でテストしたわ。まさか聞こえていただなんて。

先生の言葉が動揺を呼び正常な思考力を奪われていく。

私は言い逃れが思いつかないほど追い詰められていた。


「もう言い逃れはできないよ。君はあれを落とし、あと一歩で取り返しのつかないことになるところだった。」


「いえ、あれを落としたのは私じゃないわ!!」


「あのねぇ、誰が信じるんだよ。証拠もないしな。それに霊媒師ごっこなんてなぁ、君はもう高校生だ。そんな遊びで人を傷けようとするなよ」


「──ッッッ、遊びじゃないわ!!」


「ふざけるな!!これもその霊媒師ごっこの修行とでも言いたいのか!!あと少しで怪我人が…死者が出るかもしれなかったんだぞ!!こんな事なぜした!?」


違うわ。違う!違う!違う!違うわ!!

私は二日前8月31日に探知機でこの学校に強い霊力反応を確認した。夜だったし学校には入れないから翌日に対処しようとした。

強い霊怪で簡単に姿を表すやつじゃなかった。呼び出そうにも生徒と先生の目がある。だから、こんなことをして…スピーカーの音で霊を呼びを出して御札で霊縛しようとした。私が持ってる中で2番目に強い中級御札を使って皆を救おうとした。

─でも強かった。その霊は中級御札をもってしても抵抗した、だからスピーカーと時計が破壊された。その後はなんとか霊縛は成功した。死者が出るところだった?違うわ!!あれをやったのは霊怪。

私は皆を救ったのよ!!


こんなこと言っても信じてもらえないわ。


私は皆を救うために行動し、救った。でも皆からは私は皆を傷けるために行動したように見えている。


自分の行動が裏目裏目に出て責められる、自分自身が1番分かっていることを相手から指摘され叱責を受ける。

言葉にならない言葉、感情にならない感情、何をしてももう手遅れと感じる絶望の状況。

なんで私は怒られ、罰を受けて、皆から悪者のレッテルを貼られなきゃいけないの?

そんなの…おかしいじゃない…。


その思考にたどり着いた時彼女のまなじりから涙が溢れこぼれる。


「君はなぁ、泣いてもどうにもならないぞ!!」


分かってるわよ、そんなこと…どうにもならないから泣いてるのよ。


脳の指示とは裏腹に涙はこぼれ続ける。

濡れ衣だ。冤罪だ。自分は悪くないのに罪人にされてしまう。

その辛さは世界の終わりを錯覚させるほどの邪悪だった。


…助けてよ。誰か…。


彼女は有りもしない何かに縋るように助けを求める。虚無に縋ったところで意味は無いことは理解している。

だがもう、彼女の精神は限界を迎えている。

彼女自身ではこの状況は変えれない。


その時教室の方からざわめきと近づいてくる足跡が聞こえた。


「ん?なんだね?新宮しんぐう君。用でもあるのか?」


「ええ、大ありです!僕は弁明しに来ました。この事故は自分に責任があります。彼女は悪くありません」


やってきたのは私の救世主だった。






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