4話 「七不思議創造─中断」
----9月2日 3限目 開始から30分後
突如、スピーカーと時計が壁から落下し大破するという事故が起きた。
その原因は──おそらく俺と天ノ川だろう。
先日、その2つの物に俺たちは細工を施した。
だが、決して壁から落下する仕掛けなんてしてない。
だから、このことで俺が何か責任を負ったり、叱責を受ける義理は無い。
そう…俺にそんな責任は無い。
これを提案したのも仕掛けを考え施したのも天ノ川エリスだ。
そんな天ノ川は今、高橋先生と奥羽先生と一緒に教室の外の廊下で会話をしている。
いや、事情聴取って感じだな。たまに、怒鳴り声も聞こえるし。
一方俺たちは自習中だ。
と言っても、周りの奴らは何が起こったか理解できず会話している。
何故天ノ川が連れて行ったのか、時計の後ろからでてきた御札はなんなのか。
一体何が起こったのか。──そんな会話だ。
俺と太志と弥山はバツの悪そうな顔して沈黙している。
あの事故が起きた後、高橋先生は落ちていた小型スピーカーを見ただけで天ノ川を呼び出し、廊下へ連れて行った。
それから何分かたったが、一向に終わる気配は無い。
一応俺も共犯なんだが、今まで呼び出されてはいない。天ノ川の奴もこんなよく分からない事故の責任が俺にあるとは思ってないようだ。
…良い奴だな。
あぁ、そうだ。天ノ川エリスは良い奴だ。
まだ、1日の付き合いだが分かる。
口調は強いがお礼は言うし、コミ障俺にも優しく話しかけてくれる。
そもそもあいつがこのイタズラを提案したも昨日仕掛けを施したのも動機は人を楽しませるためだ。
今の学校生活は楽しいか?って
楽しくないら、私たちで楽しくしようって
そんな優しい理由だったんだ。そんな奴がなんで怒られなきゃいけないんだ。
そう思い、廊下に居る天ノ川の方を見た。
天ノ川は……泣いていた。
客観的に見ればこんな事になったのは自業自得だって思われるかもしれない。
でも自業自得だとしても、彼女は信念を持って人を楽しませようと思ってやったことだ。それを知ってるからこそ、高橋先生の憤怒に疑問を感じた。
そう。あれは俺たちの仕掛けと同時に起こった経年劣化による事故だ。
俺たちは関係ない。
こんなことで天ノ川が責められ、怒られ、涙を流す理由なんて無い。
しかし今は自習中で授業中、今俺が天ノ川の所へ向かえば視線は集まりクラスメイトから疑問が生じる。
俺の席は廊下の反対側で距離がある。
陰キャの俺には辛いものがある。
でも、そんなこと言ってられないだろ。俺より天ノ川のほうが辛いはずだ。
人助けなんて俺の性癖から考えれば柄にも無いことだがな。
俺は席を立つ。彼女の味方になるために。