2話 「出会いその2」
----学校 教室
奥羽一美か、不思議な人だったなぁ。
まずなんであんなところに居たのか、
それに普通町中で自分の生徒、になるかもしれない人にいきなり話しかけるかなぁ。
いや、俺がコミ障なだけで普通なのか?
そんなことを思っていると、1人の男が俺の席に近づいて来た。
「おはよう、みやっち!!」
「ん、太志か、おはよう」
今俺に挨拶してきたのが厳島太志、中学からの友達だ。
名前は太志だけどスマートで筋肉質。名前勝ちだな。
バレーボール部に入ってるけど、俺と趣味が合うし、パリピってないから話しやすい。
あぁ、趣味って殺人妄想じゃないよ。
そりゃ性癖だ。
もっともこの事は誰にも言ってないしな。
この場合の趣味は、アニメ鑑賞だな。あと、漫画。
「今日だよな!!新しい先生が来るの」
「ん、あっ、そうだね」
あれぇ、なんで知ってんだ?
俺は今朝あったから知ってるけど…
あー、夏休み前に担任の先生が言ってたっけな。
うん、そうだ。完全に忘れてたな。
「いやぁー、どんな人かな?」
「女の人らしいよ?」
「まじ!?なら、かぐや姫みたいな人がいいな!」
「おいおい、なんでかぐや姫なんだよ。そこはさぁ、石原〇とみとか、浜辺〇波とか今をときめく女優とか来て欲しいって思うだろ」
そう、太志はかぐや姫愛好家なんだ。何のアニメの影響かは知らないが。
「何回も言ってるだろ、かぐや姫こそ最高の女性だ。
まず、顔が良いし、性格も完璧」
「どこがだよ」
「そりゃ、求婚に来た帝たちを直接振らないで不可能な条件を出して遠回しに脈なしを告げる、優しいところとだな」
「えっ、それって性格悪いだろ」
いくら趣味はあっても意見は仲違いするんだよな。
会話は同意を得られる方が気持ちよくなるのは理解してるけど、自分の思ってること違う事言われたら否定したくなっちまう。悪い癖だな。
「いやいや、直接振られるより良いだろ?」
「そうかぁ?脈アリか脈なしか分からない、思わせぶりな態度じゃん、それ。」
「まぁ、そうだけど…」
「それに多分、帝の方はその時点で振られたなんて思ってないし、条件を満たせれば結婚出来ると思って頑張ってたんだぜ?そんなんだったら、振られた方がまだましだろ」
「分かってねぇなぁ。
まっ、意見は人それぞれってことで」
こうやって喧嘩になりそうな時はお互いの意見を認めて話を終わらさせる。
後味は最悪だがな。太志も自分の好きな人の悪口言われてテンション下がったんだろうな。
そうこうしてる間に太志は自分の席に戻っていった。
もうすぐ朝礼だからな。
あんな話をしたが、俺は彼女なんて出来た事はない。
だが、太志の方は中学1年の時に彼女が居た。
過去形だ。
二三ヶ月で別れたから。おそらくチェリーだろう。
「ガラガラガラ」
禿げた中年の男…担任の高橋先生とその後ろから20代くらいの綺麗な女性が扉から教室に入ってきた。
誰だ?──って奥羽先生か、メガネしてないから一瞬分かんなかったな。
裏切られた気分だ。
でもコンタクトの方が美人だなぁ。
「起立、おはようございます!!」
「「「おはようございます」」」
「はい、おはよう」
「えー、それでは皆さんに紹介したい人がいます」
「はい、今日からこのクラスの副担任になりました。
奥羽一美です。担当教科は日本史です。よろしくお願いします」
元々俺ら五組には2人の副担任がいた。
が、2人ともそれぞれ別のクラスの副担任もしていた。
掛け持ちってやつだな。
つまるところ、1人副担任が足りてなかったんだ。
そこに奥羽先生がきたってことか。
こうして一日が始まった。
日本史の授業は無かった。
-----7限目 LHR
この授業では、4人一組を作り、歴史上の偉人についての論文、というか自分の意見を交えたレポートを書く授業である。
最初は、論文を書くはずだったが歴史のことについて高校一年生が研究するなんて不可能だから表向きだけの論文制作になった。
じゃぁ、なんでこんなお題にしたんだよって思ってたけど十中八九、奥羽先生が来たからだよな。分からないところを聞けてコミュニケーションになるっていう算段なんだろう。
正直失敗だと思うが。
「にしても奥羽先生美人だな。ありゃ、まるでかぐや姫だ」
最初に口を開いたのは太志だ。
「どこがだよ、ってそんなことよりレポートはなんか案ある?」
俺は太志の言葉を足蹴にしつつ、他の2人にも聞こえるように話しかけた。
ちなみに、俺が否定したのはかぐや姫の部分だ。
美人だとは俺も思う。
「それなら、もう大丈夫よ!!」
そういいながら気の強そうな女が紙の束を差し出す。
「これは?」
「レポートよ!!」
「「え?」」
俺と太志は驚いた声を出し、そのレポートを読む。
内容は『織田信長が裏切られたのは自業自得!?』
という題名から始まる本能寺の変についてのものだった。出来栄えは──良いなこれ。自分の意見と考察まで書いてある。夏休み前に言われたことだがもう完成まですませたのか。
にしても、自業自得か…織田信長だってそれが正しいと思い信念を持ってやってきた事がこうやって時間がたって否定され、批判される。悲しきかな。
おっと、問題はそこじゃない。
これはレポートを書く授業だった訳だが完成品出されてもどうするんだこれ?
「で、こっからどうすんだ?」
ナイス太志。言いたいこと言ってくれた。
「あっ、うん、それはね」
今喋ったのはレポートを出した気の強そうな女じゃない。その隣に座っている気の弱そうな女だ。
名前はえーと、
「じゃあ、これは弥山と天ノ川で書いたのか?」
そうだ、弥山、弥山小鳥、名前の通り小鳥っぽい態度だなぁって、思ってた奴だ。
同じメガネ族でボブカットの守ってあげたい系女子だな。殺すときは泣いて命乞いしてきそうだ。
「そうよ!!殆ど私が書いたけど、小鳥に確認してもらったわ」
で、この気の強そうで、赤っぽい茶髪のロングヘアが
天ノ川エリス、だったけな。ハーフらしい。
なるほど美人な訳だ。
殺すときは足を震わしながら抵抗してきそう。
こっちの方がタイプだ。
「でね、みんなにエリスちゃんからお願いがあるんだって」
「ええ!!太志に瑠璃、今の学校楽しい?」
なんだ急に、お願いとかいいながら質問してきたぞ。
まぁお願いがあるって言ったのは弥山のほうだから、
ちょっと食い違いがるのか。
それにしても、学校が楽しいかだって?
そんな訳ねぇよな。一応俺の通ってる西高は進学校と呼ばれてはいるが、東大に行くような人はいない。
自称進学校ってやつだ。
行事は少ないし、授業もつまらい。部活は…将棋部の幽霊部員だし、楽しい要素は皆無だ。
「「楽しくないよ」」
俺と太志は同時に答えた。
おかしいな、太志はバレー部だろ?アニメに憧れて入ってワクワクしてたじゃねぇかよ。
まぁ、現実は甘くねぇよな。
「そうよね!!私たちでだったら楽しくしてみない?」
「どうやってだよ」
「七不思議よ!!学校の七不思議、トイレの花子さんとか理科室の動き出す人体模型とか聞いたことあるでしょ!!」
「まさか、俺たちで七不思議を見つけるのか?」
「違うわ、そんなん見つかるわけないじゃない!!
だから、私たちで創るのよ!!」
「「え!?」」
こうして俺たちの学校七不思議創造が始まる。