課題②【無名の墓のために】
一本の置かれた小さな花
誰とも知らない私のために
もうここにいないのに
必要のなくなった名も刻まれることのなかった墓
名も無い無名の私の墓…
いつも隣では花が供えられ
水が清められる
私とは違う誰かの生
手が合わせられ拝まれるその後
決まって君はこちらに視線を落とす
生えたままの雑草
手入れなど必要ない
これでいいんだと私は思う
荒れ果てた野に転がる石
苔むして虫の住み家になっているのが
私らしく全う出来なかった生
うらやむ気持ちなどなかった
私とは違う生を生きられた
その御方が誇らしかった
こちらに視線を落とす君
誰も来ない誰も覚えていない
君以外は
私が生きたことなど忘れてほしい
君は何かおもっている様子だが
それとも君は君自身の未来を
私に重ねているのだろうか
決まって君は毎年来る
誇らしい隣の御方に会いに
君の姿を見ていると
清々しい気持ちになる
私には無かった繋がりを見られて嬉しい
もう
必要のなくなった
名も刻まれることのなかった墓
名も無い無名の私の墓…
君は自身を憂う未来を憂う
いつしかの私のように
祈りながらも聞こえてくる
もしも君が私だったらの声
そっと置かれた花に
私は何も言わないよ
最期に出来た君との繋がりは
私を示す石ころが片づけられても
供えられた花が枯れるように
もとにもどるだけ
確かに存在した私に
いつまでも手を合わせる君
誰とも知らない私に
名など必要のなくなった私に
静かに心をそえて…