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改新奇譚カリバン~封じられし魔王~  作者: 北原偶司
三之明之篇
27/67

二五ノ業 結成『三之明』!リーラ基地を吹き飛ばせ!!

一回目の投稿時点だとタイトル詐欺になってるような気がしたのと、迫力の演出が足りなかったのでちょっと修正しました。

何かド◯ゴンボールみたいになった…。

 仙攻丹の稲妻が去った後、薙ぎ払われたオーガの首が五つ、ボトボトと地面に転がった。

 直前に相手にしていた野狐やインプも加え、合計十二体が皆同じように首だけを斬られた状態で散らばっている。


 馬と一緒に離れていたルナは、戦いが終わると二頭の手綱を引いてディアナに駆け寄る。

 二剣を握り締めたまま一息ついたディアナは、彼女を一瞥するとポーチから白布を取って刃の血を拭き取っていった。


「…ディアナ、大丈夫か?」


「…ちょっと大丈夫じゃないかもね…。複数が相手じゃ僕には分が悪い。一回の戦闘で怪霊領域が空になっちゃった。…やっぱり、ヴィスにも来てもらわなきゃいけなかったかな…」


「ひ、引き返すかっ? じゃあ!」


 心配そうに顔を近づけて提案したルナだったが、ディアナは少し悩んでからゆっくりと首を振った。

 そして傍に倒れているオーガを無言で指差し、ルナはそれを受けて急いで死体を貪り始めた。


「…複数との戦いが厳しいだけだよ。今回はメデューサだけを倒してすぐに逃げ帰ろう。…限界まで込めた怪霊力を一秒分の仙攻丹に費やして、その一撃で勝負を決める。…恐らくそれで倒せるはずだから」


 ルナは背中に掛かったその言葉に、振り向かず「おう…」と不安げに答えた。

 ディアナは辺りを警戒しつつ収霊を行い、次の戦いに備える。

 そうして一体の肉を食べ尽くしたルナは、空いてもいない腹に鞭打って次の死体を食べに歩いた。


「最近、どれだけ食っても腹一杯にならなくなったぞ。お蔭でたくさん殺すことになっても命を無駄にしなくて済むけど、何だか自分の身体じゃねぇみてぇで怖いんだよなー」


「きっと消化機能が怪霊獣に近づいてきてるんだよ。元の研究が霊力強化のためのものだから、その変化も自然な流れだね。怖がることないよ」


 軽く会話を挟み、またすぐに次の死体を食べていく。

 ルナはただ命の責任を取りたいからそうしているだけだが、ディアナにとっては自分がそれを強要しているような気がしてならない。


 結局のところ、自分も博士達と大して変わらないのだと、ディアナは瞳を伏せて思った。


「…ごめんなさいね、ルナ。こんな血生臭い世界にあなたを巻き込むことになって…」


「…ん、何でぇ…。ディアナが謝らなきゃいけねぇことなんざねぇよ。ちゃんとどこまでもついてくさ」


「………ええ、ありがとう。…旅が終わってから、全てを打ち明けてちゃんと謝るね。その時はあたしをどうしてくれても構わないから」


「…むぅ~…。…ディアナ、ホントに大丈夫かよ? 何かこないだから暗いぞ…?」


 辛気臭い会話に少しうんざりしたルナは眉根を寄せて振り向く。

 ディアナはそれを見てまた寂しそうに笑った。


「大丈夫だよ、ルナ。あなたのことは何があってもあたしが守るから。…例え僕の身に、何があろうと…!」


 そんなことを力強く言われても、ルナは嬉しくなどなかった。

 だから早く移動の時間に戻りたくて、彼女は腹に詰め込むような勢いで食を進めていった。


 そうして十二体を腹に収め、流石に吐き気を催しながらも、「い、行くぞ!」と大きく声を張り上げてルナは彼女の先を進み始めた。



 延々と荒野が続いたが、地図からして後一時間足らずで基地が見えてくることは判明していた。

 間も無く繰り広げられる壮絶な戦いを予感し、ルナは口腔の乾きと腹の痛みにげんなりとしてくる。


 …記憶の中ではディアナよりも弱かったはずのヴィスの姿が、今の彼女には随分と頼もしかったように思われるので不思議だった。

 彼さえいれば、こんな鬱屈した空気は良くも悪くもぶち壊されるし、戦いが始まれば勇んで先陣を切ってくれる。

 呆れるような滅茶苦茶な言動で場を掻き乱して、少なくとも陰鬱とは違う何処かへと気持ちを誘ってくれるだろうことは間違いなかった。


「…ホント、何で来なかったんだよ…あんにゃろー…」


 堪らず呟いたその一言に、『何か言った…?』と言うような視線を送りながらディアナが並走した。

 ルナは苦笑いを返して誤魔化す言葉を探したが、不意に気になったことがありそれを話題にしたくなった。


「前から訊きたかったんだけどさ、今ヴィスがいねぇから訊くよ。…ディアナはさ、ヴィスのこと、恨んでねぇのか…?」


 ディアナは思わぬ問い掛けに目を丸くして、言葉も無く俯いて考え込んだ。

 無言だけは止めて欲しかったルナは、発言を引き出そうと質問を続ける。


「…ディアナの姉ちゃんって、ヴィスを封印するために消えちまったんだろ? 神仙様が船で詳しく教えてくれたんだ。前のヴィスは怪霊獣の親玉として、自分から率先して人間達を殺し回ってた。実際それで大陸が一つ奪われたんだろ。そんだけ悪い奴だったから、誰かが何とかしなきゃいけなくなって、…ディアナの姉ちゃんが封印師に選ばれた。いくらヴィスが自分から殺した訳じゃねぇって言ったって、そもそもあいつが悪い奴じゃなかったら姉ちゃん死なねぇで済んだろ? ……俺は、にぃちゃん達を殺した博士達が許せねぇ。ぜってぇ、仲良くなんてなれねぇ。…だから、本当だったらディアナもヴィスと仲良くなんてなれるはずねぇのに…。…なのに、ディアナは今回、ヴィスのためを思って途中で港に帰しちまった。その分苦労すんのはディアナ自身だってのにさ…」


 しかしその問い掛けの連鎖は、却ってディアナを思考の海に沈めていく。

 ルナは、黙って悩み続けているディアナの姿に胃が重たくなり、やはりこんな事を訊ねるべきじゃなかったと後悔した。


「…わりぃ、やっぱ何でも――」


 そう撤回しかけた時、ディアナが悲しそうに笑って顔を上げた。


「…本当は恨みたかった」


 …ルナは何と返せば良いのか分からなかった。

 彼女の言った意味が分からず、しかしそれを聞き返すのは野暮のような気もして、ただ黙って次を待っていた。

 ディアナも、ふと誰かに本心を聞いてもらいたくなってしまった。


「姉さんがヴィスを封印する役目を授かったのは、仙儒霊峰で怪霊術の修業に明け暮れていたある日……そう、今から一年と八ヶ月前のことよ。何をしても姉さんの才能についていけなくて、日々自己嫌悪を重ねていた最中、エ連から外交官が来てその話を申し出たの。…元からその話はあったし、姉さんがその役の候補者だからこそ神仙様の下で修業してきた。それでも当時のあたしは、『どうして姉さんが死ななくちゃならないの』って長いこと癇癪を起こしてたわね。…でも、姉さんは平気な顔で『大丈夫よ』と言ってばかりだった」


「…じゃあ、やっぱり嫌だったんだよな」


「…うん、嫌だった。姉さんは皆の犠牲になるのに、産まれてからずっと同じ場所で生きてきたあたしはいつも安全なところに退けられるから。…だから、あたしも姉さんと同じように命を掛けるべきだと思った。姉さんと双璧を成す戦士になろう、と…。それ以来、既に水準以上に怪霊術をマスターしていた姉さんは封印術の研究に没頭することが多くなって、才能の無いあたしは普通の怪霊術師として形になるように神仙様とそれまで通りの修業を続けた。そして三ヶ月後、ラティナ軍へ帰還したあたしは剣聖ルキウスの下での修業を推薦してもらった。…姉さんは封印師として、あたしは戦士として、…別々の死を目指して自分の道を突き進んでいった」


 じっとディアナの横顔を眺め、その語りに耳を傾けたルナは、そこにある悲しい微笑から言わんとする決意を読み取った。


「…ディアナも死ぬ気だから、姉ちゃんが死んだことも受け入れちまったのか…」


「そうかな。…うん、そうかも。姉さんが命を捨てることを、あたし自身が受け入れてしまった。心の整理がついてしまったから、今更ヴィスを恨むつもりも失くなってしまった。…そして今度はあたしが死ぬ番」


 …ルナは、その最後の一言に奇妙な不気味さを抱いた。

 剰りにも悲観的な言葉を口にしながら、剰りにも満足そうに笑う彼女が理解できなかったのだ。

 そしてその悪寒は、決して看過して良いものではないと感じた。


「か、怪霊衆は、ヴィス除いて全部で八人だろっ? その全員倒すまでは、死なねぇんだろっ?」


 ディアナはただ、優しく笑った。

 ルナはそれを見てこれだけは伝えねばならないと確信した。


「死なねぇでくれよ、頼むからさ!」


「……ん」


 ディアナは表情を変えず、了解とも拒否とも取れない返事を以て馬の足を速めた。

 そうなるともう、ルナは押し黙るしかなかった。



「…着いたよ」


 突如、ディアナは荒野の真ん中に馬を停めて告げた。

 この旅の行方を無言で案じていたルナは、その声に呼ばれてハッと顔を上げて、急ぐように鞍を降りる。


 先んじて地に足を着けたディアナはいつものように石のポールを作り、そこに馬二匹の手綱を結び付ける。

 そして遂に、目と鼻の先に見えている目的地へと速足に歩き出した。


 壁のように立ちはだかる山々の麓に、牙を剥いた怪物の口のような大きな洞窟が空いている。

 それこそが今から攻め込むべき基地の入り口だった。


「ルナ、これ。ポケットに詰めておいて」


 ディアナはそう言ってポーチから仙活湯の小瓶を取り、二つルナに差し出した。

 ルナは言われるまま、せかせかとズボンの左右に付いたポケットに小瓶を押し込む。


 緊張して何も言えなくなっているルナだったが、今回ばかりはディアナもクスリと笑ってやれるような余裕は持ち合わせていなかった。

 ルナは額に汗を滲ませて生唾を呑む彼女の姿を初めて目にした。


「…僕は決戦の瞬間まで怪霊力を温存する。ルナは怪霊領域限界まで読霊を展開したまま歩いて。それで基地内の通路も把握できるし、半径一キロ内の敵の動きや会話も把握できるはず。気になったことは些細でもいいからその瞬間に伝えて」


「…り、りょ、了解…」


 ルナは初の大役に怯えて背中を汗だくにしながら、深呼吸を二度繰り返して意識を集中した。

 そうして三秒の間を置き、読霊を全方位に最大距離まで放つ。


 その効果は洞窟内にまで及び、彼女は知り得たことを早速報告する。


「…中はすげぇ入り組んでんな…。読霊使わなかったらぜってぇ迷子になんぞ。それに怪霊獣がたくさんだ…全部で五一体。霊力は六千、五千、三千が殆どだ。…でも、その中の一体だけは、…。……な、何だこれ…一三五万もある奴がいるぞ…!?」


「そいつの場所は? 入り口から近い?」


「…い、いや、一番奥だ」


 ディアナは顎に手を触れて熟考し、少し首を傾げつつゆっくりと歩き出しながら頷く。

 ルナは彼女の背に隠れるようにしながらついていった。


「…そうなると、そいつがメデューサってことになるのかな。確かメデューサは石化能力が厄介なだけで身体スペックも霊力も大したことないって話だったけど。…参ったな、僕で対処しきれるか怪しくなってきた」


「か、帰るかっ?」


「帰らない。お師匠様に『倒してくる』って宣言しちゃったし、今の僕の実力で本当にメデューサに通用しないなら、全ての怪霊衆を倒すなんて夢のまた夢だ。メデューサの身体能力が大したことないって情報を信じて突き進もう」


 ディアナの言動はもはやただの意地にしかルナには見えなかった。

 しかし彼女も状況を楽観している訳ではない。

 見張りがいないことを確認して洞窟まで接近し、足を踏み入れようとした所で彼女はルナに強い口調で告げた。


「…もしも僕が全く手を出せず殺されてしまったら、…ルナ、あなたは土下座でも何でもして怪霊衆の仲間にしてもらいなさい。僕や他の人間を口汚く罵ったり、本当は人間に仕返しをしたいだとか嘘を言って取り入りなさい。そうやって何としても生き残って、力を付けて、機会を探しなさい。…そして時期が来たら、『僕の仇を討つ』か『自分のために生きる』かをあなた自身の心で決めなさい。……ここまで連れてきたのは僕だ。だから、あなたが何を選んだとしても責めない」


 ルナは呆気に取られて口を大きく開き、ディアナが「さ、行こう」と言うまで何も言えなかった。

 そしてその後も、唐突の指示に心が揺れ、選ぶ手をまごつかせたまま読霊で読めたことを無心で報告して進んだ。


 …しかし、進むに連れて緊張感が解れていく。

 読霊で敵の位置を掴んでいるため、敵との遭遇の可能性が徹底的に廃されたルートを進み続けていた。


 読霊でルナが聞き取れる限り、基地内で過ごす怪霊獣達の会話にも敵襲に勘づいた雰囲気はまるでない。


 ――あの町での戦いは楽しかったなぁ――

 ――この前向かいの大陸まで飛んできたぜ――

 ――コレ、ハナバタケでツンできたんダ。キレイだろ――

 ――いい加減人間ども殺しまくる許可出ねぇかな――

 ――あひゃひゃひゃひゃうひゃひゃひゃ――


 今のルナには怪霊獣達がただ談笑しているだけでも恐ろしいものだが、その様子は平和ボケそのものだというのは分かった。


「……変なの…あいつらみんな、普通にしてらぁ…。…何か呑気だぞ…?」


 ディアナは不思議そうに耳を済ませているルナを横見しながら暫し考え、「…まさか」と目を見張って顔を強張らせる。

 そのまさに直後、ルナの耳に低く澄んだ一言が届いた。


 ――さて、定期チェックだ――


 …ルナは直感的にその声の主の周辺に意識を集中し、異変を察知した。

 声の主が消えた…――否、声の主を中心とした直径五百メートルの範囲だけが突如として読霊で読めなくなったのだ。


 ルナは急いでディアナを振り向き焦り顔で、


「――…ディ、ディアナ! 何か読霊が弾かれたぞ!?」


「…っ! 今すぐここから――」



「総員包囲!! 敵襲だぁぁあああああッ!!」



 二人の会話は、一体の怪霊獣がとてつもない声量で叫んだ声とそれに続く無数の足音に断ち切られた。


 ルナは顔を青くして引き攣らせ、怯えて身を縮ませながらキョロキョロと辺りを見回す。

 ディアナは気を張り詰めて足音の方向を読み、ルナの手を無言で引いてとにかくその場所を離れた。


 …大勢と廊下で対峙するのは剰りにも不利だ。

 進む予定になっていたルートを仙攻丹で素早く進めば、メデューサが待っているはずの奥の部屋がある。

 ルナの話によれば広間のような場所であるため、ディアナは怪霊力を消費してでもそこを目指すべきだと踏んだ。


「…()かった、読霊を使われるなんて…。けど、どうして…? 定期的な読霊で侵入者を網に掛けるなんて、まるで何者かが侵入してくると分かっていたかのような…」


 ディアナは今にも舌を打ちそうな悔しげな表情で、領域半分の怪霊力を消費して仙攻丹を用いた。

 その高速移動により、軍勢の接近を振り切り広間の扉まで突き破る。


 …仄暗く広い空洞を、中央から放射状に並んだ灯籠が照らしている。

 その中心に、燃え盛るような朱色の髪をゆらゆらと逆立たせた黒い魔人が立っていた。


「……メ、メデューサ…じゃ、ない…?」


 困惑の声を上げ、頭が真っ白になってしまっているディアナを睨み付け、その魔人は敵意を剥き出しにしたままわざとらしくボウ・アンド・スクレープのポーズを取った。


「ごきげんよう、お客人。我が名はノサティスだ。……まさか本当に人間が攻めてくるとは、面白いこともあるものだな」


 ノサティスが元の姿勢に戻ると、同時に先程まで追ってきていた怪霊獣達がディアナ達の後ろに現れてくる。

 その面々はインプにオーガ、そしてオーガに女性的なフォルムと胸帯を加えたような姿のオーグレスである。


「ディ、ディアナ……。に、逃げ道が…どこにも逃げ道がねぇぞ…!」


 ディアナにはルナの不安そうな声に答えている暇は無い。

 気を抜けばすぐにも殺されてしまうのだ。


 仙攻丹で速さと動体視力を強化すれば雑魚に埋め尽くされた廊下も掻い潜って抜けられる。

 その後は領域を閉じて隠れつつ隙を見てルナに飛んでもらえばいい、そこまで考えてあった。

 もしその手筈が上手くいかなければ、ルナだけでも怪霊獣に混じって生きていくように指示をしてある。


 しかし、手柄無しに生きて帰っても意味は無い。

 ディアナは元々、死を以てしても戦うと決めているのだ。

 だからこそ、今確実に為せることをして、それから死のうとしていた。


「…怪霊獣は大勢で一人をなぶり殺しても楽しいものかな? …もしあなたにも()()があるのなら、…ノサティス、僕と一騎討ちをなさい。もしそれで僕が勝てたら、潔く敗けを認めてこのまま僕を帰しなさい。その代わり僕が敗けたら、此処にいる怪霊獣の子を譲ってあげる。どう?」


 彼女はヴィスと関わりを持てたことに感謝した。

 そのお蔭でこのような取り引きができる。


「…ハッ、人間にしては我らの扱いを分かっているようだな。…しかし怪霊獣の子だと…? お前の後ろにいる奴か? 人間に飼い慣らされる程度の雑魚など賞品に――」


 嘲笑いながらディアナの後ろを覗き込んだノサティス。

 しかし彼はルナを見た瞬間、一気に血の気が引いて慌てふためいた。


「なっ、お、お前は…!? そ、その耳…尻尾……!」


「…な、……?」


 怯えたルナはノサティスの問いに眉をハの字にして硬直し、指摘された耳と尻尾をしょんぼりと垂らした。

 ノサティスは彼女の弱々しい様子を見て落ち着きを取り戻し、冷や汗混じりに悪意の笑みを浮かべた。


「…いいだろう、その勝負に乗る。そして勝ったら、その怪霊獣と人間のハーフは貰い受ける」


 ディアナが緊張走った笑みで深く頷いたのを認め、ノサティスはその後ろに屯す部下達に「お前らは手を出すな!」と声を張り上げた。


 ディアナが動いたのはその瞬間であった。

 彼から得たい言葉を引き出した以上、もうフェアな戦いには拘らない。


 今の問答で収霊の時間を稼げたディアナは、予ての予定通り領域限界分の怪霊力を全てその一瞬の仙攻丹に注ぎ込んだ。

 これまでどの敵を相手にしても発揮したことの無い、秒速四十キロの脅威的な速度でノサティスへと迫る。


 彼女が走り出しただけでその足下は轟音を立てて崩れ、洞窟全体にまでその振動が伝わる。

 発生した衝撃波はルナと、廊下に待機する怪霊獣達をも吹き飛ばす。


 初動と同時に二腰の長剣に手を掛け、その姿勢のまま彼女は進む。

 その場にいる殆どの者がその姿を肉眼では追えていなかったであろう。



 …ノサティスを除いては。



 彼はディアナのスピードには確かに驚いた。

 しかしそれも、ただ()()()としただけ。

 彼は接近を待たずして正面から彼女に立ち向かい、その腹部を正確に蹴り抜きにかかる。


 ディアナにも野生の勘が働いた。

 彼の接近の寸前に何とか立ち止まり、その蹴りに合わせて飛び退きながら両腕を組んで防御を取る。


 …そしてノサティスの蹴りを受け止めた彼女の両腕はぐしゃりと大きな音を立て、纏めて折れ曲がった。

 衝撃も防ぎきれず、腹部に恐ろしい程の激痛が走った彼女は、喉を駆け上がった胃液と大量の血を吐き出しながら吹っ飛ばされる。

 二人が衝突したその場所は、その衝撃だけで床に大きな窪地を生んだ。


 まるでボールか何かのように床を大胆に弾み、ボロ雑巾のように叩き付けられる彼女の身体。

 床に這いつくばって飛ばされないようにしていたルナは衝撃波が止むと思わず駆け寄って、「ディアナ!!」と泣き叫びながら彼女を抱き止める。


 そのまま勢いに敗けて自分もその場に倒されたものの、急いで仙活湯を取り出し全て彼女の口へと流し込んだ。


「だ、大丈夫かっ…!? 待ってろ、治すからっ!」


 ディアナのポーチからも小瓶を取り出し、彼女を腕に抱いて全て飲ませる。

 それが功を奏したか彼女の口から血が流れなくはなったが、依然として状況は変わらない。


「…そん…な、…今のは…あたしの、全力だった…。……なのに、…それ以上のスピードで、蹴り返されるなんて…。……か、怪霊術すら、無しに…」


「しゃ、喋んなディアナ…! も、もう逃げよう! 無理だってこんなの…!」


 よろよろと立ち上がりノサティスを睨むディアナに、ルナは抱きつくようにして止めに掛かる。

 しかしルナにはここからどう逃げれば良いか分からなかった。


 …否、もう逃げようがない。

 全力の仙攻丹でもノサティスに勝てなかったディアナでは、例え万全の状態でもここからルナを連れて逃げることはできないであろう。


 誤算だった。

 もはや完全に手詰まりだ。


「…お、驚いたぞ…人間…! まさか下等種族の身でこの私と変わらないレベルで動けるとは…。……惜しい気もするが、お前はやはり危険だ。ここで始末する。そしてハーフの小娘も貰い受けよう。リーラハールス様もきっとお喜びになられるだろう」


 ノサティスは警戒してディアナを見つめたままジリジリと歩み寄っていく。

 観客に徹していた部下達は皆、予想通りの呆気無い幕切れに退屈そうに笑い、一部は雑談などしている。


 ルナは足を震わせ、喉を枯らし、大粒の涙で頬を濡らした。

 唯一頼れたはずのディアナがこうなってしまっては、彼女にももうどうにもできない。


 …しかしディアナを放って逃げる彼女ではない。

 へたり込みそうな足腰を必死に立たせ、ディアナの前で立ち塞がって両腕を広げた。


「…ディアナに…ディアナに、近づくなっ!」


「…何故お前が人間の肩を持つ? お前も同胞と同じように我らに加わればいい。…スティリウスと同じように…」


「う、うるせぇやい…! ディアナはオレっちの友達だ!! 手ぇ出したらぶっ飛ばすぞっ!! バカーっ!」


 ノサティスは再び嘲るように笑い、ルナを見た。

 ルナは泣いて怯えながらも決して逃げない。


「…ならお前も死ぬがいい。例え例の混血でも、お前のような雑魚ではリーラ様も要らないだろう。二人まとめて仲良く逝け」


 ノサティスの指先に我霊射の赤い閃光が集中していく。

 もはやこれまで、そう思われたその時、



「「うぎゃぁぁああああああッ!!」」



 廊下から鬼気迫った叫び声…そして一瞬の青い光。

 ノサティスは目を見張ったまま廊下の方を見つめていたが、その眼下にいつとも知れず人影が現れると、「なッ…!?」と短く困惑の声を上げて十メートルほど飛び退いていく。


 ルナはその人影を見上げて息を呑み、その声に釣られてディアナもゆっくりと顔を上げる。

 …そこにいた人物は、自慢の長い白髭を撫でながらいつもの軽い笑顔を浮かべていた。


「お、お師匠様…!?」


「おっ、無事じゃったな。チッスチッス」


 神仙はウィンクしながらピースなどしていて、その姿に安心したルナはペタンと腰を抜かして「は…ははっ……ぐすっ…あはははっ…!」と泣くような笑い声を上げた。


「ルナさんや、もう大丈夫じゃぞ。…おおっ、何じゃディアナ、両腕折れとるではないか。…待っとれ~、今治したるから」


 彼はそう言ってディアナの腕の曲がりを整えると頭をポンポンと撫で、仙活湯を作る要領でディアナの回復力を一気に高めてやる。

 すると忽ち彼女の腕の骨は元の形で繋がって内臓の傷も癒える。


「…なッ、何だお前は…! 何者だ!?」


 ノサティスの怒声に神仙はディアナの傍を離れ、優しそうな、しかし僅かに影を帯びた深い眼を向けた。


「わしゃぁただのジジイじゃよ。じゃからホントはこんな戦いには手を貸さんつもりじゃった。しかし意外な奴が頭を下げてきたもんでな、ちょっくらサービスしようと思ったんじゃ」


「ふざけるな老い耄れ! 誰が貴様に頭を垂れるかぁ!」


 神仙の後に続いた低く荒々しく、しかし今の彼女達には少し優しく思えるような不思議な声。

 二人は夢を見ているような気持ちで振り返った。


 廊下からは、怪霊獣達の遺体と血の海を蹴り飛ばしながらオーガの生首を手にズカズカとヴィスが歩いてきた。


「チッ、全員殺しやがって貴様…。俺様の楽しみが残っておらんではないか」


 不機嫌そうに言い捨て、フン…と鼻を鳴らして生首を他所へ投げ捨てる。

 そうしてディアナの隣まで来ると、彼女から顔を背けたまま「…よお」と重い口を開いた。


「あなた、何で、ここに…」


「借りを返しに来た」


 彼女はその言い分にキョトンと目を丸くし、「…借り?」と覚えの無いような声を上げた。


「あぁ借りだ。…助け、要るだろう?」


 何のことかと暫し首を捻った彼女は、オーガの首が視界の隅に入ってくるとハッと息を漏らして思い出し、そしてクスリと微笑んだ。


「…『借りとは思わんからな』、じゃなかった?」


「……チッ…。揚げ足を取るな、黙って救われてろ」


「…フフッ」


 …肩の荷が降りたのだろう、彼女の瞳に少し涙が滲んだ。


 ヴィスは続けてルナの隣に立つ。

 安心しきったルナの微笑を彼は鼻で笑う。


「貴様、何だそのザマは…。しかも様子を見るに戦っておらんな貴様。そんなもので俺様の下僕が務まるか、愚鈍め」


「…む、むぅ…。…好き勝手言うない…。オレっちだって、オレっちなりに…――」


「あぁ、頑張ったな。…なら、次は精々もっと頑張りやがれ」


 そう言って頭を撫でていった彼の背中を、ルナは泣き笑いで見送った。

 ヴィスは困惑と怒りでワナワナと震えているノサティスと相対した。


「…あれっ? ワシは? ワシには何も無しか?」


「ここまで送迎ご苦労だったな老い耄れ。もう下がってろ、俺様の楽しみの邪魔だ」


「えぇ、ここまでやったのに辛辣…。まぁ別にいいんじゃがな。やれるところまでやれ、駄目そうなら手を貸す」


 フン、とヴィスは見えないように口角を上げて、更にノサティスへと近づく。

 そして歯を剥くほどの怒りを帯びたノサティスの顔に睨み返し、「よぉ、リーラの腰巾着」と小馬鹿にしたような声を上げた。


「お、お前は…怪霊王かッ…! 何故怪霊王の癖に人間側に付いている!? しかもその姿、封印を受けたのは本当だと言うのか!?」


「御託はいいんだよ、さっさと貴様のご主人様を出しやがれ三下め」


 ヴィスは忌々しげに睨むノサティスに肩を竦め、「ど、どういうこと…?」と戸惑っているディアナへと顔だけ振り向く。


「俺は貴様らを嵌めるつもりだったのだ。貴様にメデューサの基地と伝えたここは、リーラの基地だ。…すまなかったな。後でどうにでもしろ」


 折角笑顔が戻っていたディアナだったが、それを聞くと眉を寄せ、少し考えてから大きな溜め息をついた。

 しかし、飛び出した声は妙に安心した感じを帯びた。


「あたしからもごめんなさい。旅が終わったらあなたの封印を解いてあげるって言ってたけど、ホントは解き方知らないの。これでお相子(あいこ)ね」


「あ゛ぁ!? 何だと貴様、この俺様を騙しやがってたのか!! …クソッ、俺ばかり気にしていたのが馬鹿のようだ…!」


 そうして一頻り怒鳴った彼は拗ねたように続ける。


「…ならば、『借り』などもうやめだ! 誰が貴様なんぞに恩など感じてやるか! 貴様などに助けられたとも思わんし、尊敬もしておらんし、失望するほど期待を寄せたこともない! 貴様に対して抱いた想いは全てまやかしだった! やはり貴様は他と何も変わらんただの女だ! …だから、――」


 そして最後の一言を、背を向けて、渋りながらも口にする。

 彼女にはそれが照れたようにも見えた


「――だから、ただの仲間だ。仲間として助けに来た。…それでいいな…?」


「……うん。…あなたから、そんな言葉を聞くとは思わなかった…」


「フン…」


 ヴィスは再びノサティスに注意を戻す。

 その視線に促され、それまで口を閉ざしていたノサティスは全速力で駆け出しながら口を開いた。


「リーラハールス様の居所を知りたくば、この私を倒してからにしろ!!」


「ハッ! 脳の無さでメデューサに敗けて怪霊衆の座に就けなかった雑魚めが! いいぜぇ遊んでやるよぉおッ!!」


 笑いながら走り出した彼にディアナは手を伸ばして叫ぼうとした。

 自分が敗けた程の相手に彼が叶うはずがない、迂闊に飛び込むな…と。


 しかし、彼女の予想は外れる。

 ノサティスと全く同じように腕を振りかぶり、同じように接近し、そして同じように拳を打ち下ろしたヴィス。

 その二つの拳の内、先に相手の頬へと到達したのはヴィスの拳であった。


 ノサティスはその拳を届かせる前に宙へと打ち飛ばされ、即座に飛び掛かったヴィスが組んだ両手で床へガツンと叩き落とす。

 そして着地後、ノサティスが床から跳ね上がった所へ飛び蹴りを食らわせ、以降も反撃を許さず一方的な戦いが続いていく。


 その衝撃波は凄まじく、二人の間では幾度となく大気に破裂が起こり、床は窪地だらけ、洞窟は振動のため彼方此方で崩壊が起き始めていた。


「…う、嘘…、仙攻丹を使ったあたしより強くなってる…! …どうしてこんなに急激に封印が解けて…?」


 そうして戸惑うディアナへと横で観戦する神仙が得意気に笑い、廊下に転がった五十体の怪霊獣をいつかのように小さな結界の玉に封じ込めた。

 それをルナの前に移動させ、何も言われずとも自分から飲み込んで苦しそうにしている彼女を見届けるとそのまま口を開いた。


「あやつはこの短期間で何度も自分を見つめ直した。それが封印に影響を与えたんじゃろ。お前さんらが思っている以上に成長しおったぞ、あいつは…」


 彼の言葉を聞きつつ、ヴィスの姿に感銘を受けた彼女は「…自分を見つめる…」とぼんやり呟く。


 その視線の先では、ノサティスが懸命に我霊射を当てようとしながらも至近距離と速度差が災いして、発射前に腕を振り払われ軌道を逸らされてしまっていた。


 ヴィスの方からは怪霊術の使用はまだ無い。

 彼は我霊射での戦いには限界があること、術がなくとも肉体が武器となることを学んでいた。

 故に相手が術に集中出来なくなる程に絶えず肉弾戦を続け、どれ程の攻撃で仕留めきれるかを把握しようとしている。

 これも今までの彼ではあり得ない程の大きな変化だった。


「ク、ソッ…! 邪魔だぁぁああああッ!!」


 ただの拳にいいようにされ怒りが頂点に達したノサティスは、自棄になったように両腕を広げ、領域を半分程も使って強烈な我霊閃を放った。

 その威力は並の怪霊獣とは比較にならず凄まじく、暴風が吹き荒れ、床や壁はピシッと亀裂を走らせてバラバラと崩れていき、ヴィスは一時的に両目を潰され血涙を流した。


「ぐぅあッ…! 目を…クソッ!」


 両目を手で押さえた彼へと、ノサティスはニヤリと血走った目で笑って両手を突き出し、残る殆どの怪霊力をそこへ注ぎ込んでいった。


「死ねぇぇぇええええッ!!」


 響き渡る怒声、おぞましく膨れ上がる強大な赤い怪霊力。


 その光が撃ち出され、ノサティスが勝ちを確信したその瞬間、ヴィスは目を閉じたまま右腕を深く引いて身を屈めて我霊射を避ける。


 我霊射は他の者達まで通り過ぎ、廊下の先へと到達して一気に通路を全崩壊させた。

 消し飛んだ廊下は陽の下に晒され、仄暗かった広間までも夕焼けの赤に照らされる。


「な、なにぃッ!? ば、バカな――」


 彼の言葉は直後、腰の入った深いアッパーに遮られた。

 その身は天井を突き破って更に先、岩山の中を抉るように突き進み、やがて山そのものの崩壊と共に落下してくる。


 一瞬冷や汗を掻いて息を呑んだディアナであったが、「危ねっ」と両腕を上げた神仙により青い結界が張られ、ノサティス以外の落下物は全て斜めに滑っていくように廊下側の方へ逸れていった。

 洞窟だったはずの基地は見る影も無く破壊し尽くされ、岩屑の山と、削られて断層を露にし夕日に照らされた断崖絶壁だけが残った。


 ヴィスはフラフラと後退って目を瞬き、血を拭って再び開眼した。

 窪地に身を埋めたノサティスは霊力切れを起こし、指一本動かせない状態でその場に横たわった。


「…な、何故…最後の攻撃を避けられた…」


「…ハッ…。ただの読霊だ。かつての俺や、貴様などのように、力のあるものは読霊を霊力計測にしか使わん。故に貴様は、視界を塞がれても読霊で感覚を代用できることを知らんのだ。そして考え無しに怪霊力をぶっ放すことしか知らん。だから貴様は敗けたのだ」


「……な、…に…。……チ…ク……ショォ…」


 ノサティスは息も絶え絶えになりながら必死にヴィスを見上げ、拳を固く握り締めた。


 腰が抜けたルナは神仙に背負われ、回復したディアナは少しふらつきながらも神仙と並んで歩きヴィスの背後に集まる。

 ヴィスはディアナとルナの二人が揃った所でその場にしゃがみ、身動きの取れないノサティスの頭を掴み持ち上げて問い質す。


「それで? 敗けたからには答えるな? 二言はねぇだろ、あ?」


 悪魔のようにニタニタと笑うヴィスに顔をしかめつつも、ノサティスは諦めて白状した。


「…リーラ様は、メデューサ基地に、行かれた…」


「…あ? 何故メデューサ基地に?」


「……もし…、怪霊王が人間と…結託していれば…最初に攻めるのは、メデューサだろう、と…」


 ディアナはそれを聞いて肩を強張らせた。

 もしもヴィスが嘘をつかず、元々の予定で進行していれば、今頃全滅は免れなかったであろう。


 ヴィスは腹立たしそうに舌打ちしてノサティスの頭を放した。


「…リーラの野郎、頭のキレが裏目に出たな。とことん俺様を信用しない奴だ。今まではそこも気に入っていたが、流石にイラッと来たぜ…今のは…」


 そして立ち上がると、意識が途切れ掛けているノサティスへと大声で宣言した。



「案内役として貴様を生かしてやる。リーラに伝えろ。『俺達はいずれ怪霊衆の八名全員と戦ってやる。貴様にも怪霊獣の誇りと力の自負があるならば、小細工などせず堂々と迎い討ってみせろ』とな」



「…ぐっ……こ、この…!」


 ノサティスは怒りの形相で起き上がろうと奮闘したが、遂に気力が限界を迎えバタリと倒れる。

 それを見届けたヴィスは微かに笑い、「悔しけりゃまた挑め」と残して岩屑の山へと歩き出した。


 ディアナはいつの間にかヴィスがリーダーシップを執っていることに戸惑いながらもその後に続き、ルナを背負った神仙もスタスタと歩き始めた。


「…ヴィス、ありがとう。僕達を……ルナを助けに来てくれて…」


「…勘違いするな。俺はルナを助けに来たが、()()()()()助けにも来たのだ。…言ったろう、もう仲間だと」


「………何だか、あなたじゃないみたい…」


「……フン、そうかもしれんな」


 二人は笑って言い合った。

 そこへルナが神仙の背中から身を乗り出し、「さっき、『俺達は』って言ってたよな?」と確かめた。


「言ったが、それが何だ?」


「それってさ、オレっち達は三人で仲間、チームってこったろ?」


「……チーム名を決めたいと言うのか?」


 ヴィスの問い掛けに、ルナはウンウンと嬉しそうに何度も頷いた。


「名前はディアナに決めてもらいてぇんだ! この旅を始めたのはディアナだし、リーダーもずっとディアナだろうしさ。なっ?」


 ディアナはそう呼び掛けられると、困ったように笑ってヴィスを見た。

 しかしヴィスが「…だ、そうだぞ」と彼女に選択を委ねたので、本当にリーダーでいいのだろうかと疑いながらも少し考えてみることにした。


「…ヴィス、怪霊衆の今のトップの三体組って、何て呼ばれてるって言ってたっけ?」


 彼女はまた唐突にそう訊ねた。

 何が聞きたいのか分からん、と首を捻りながらもヴィスは答えた。


「イナベル・ゼブブ、リーラハールス、ラーベルナルドの三者組のことか? それならば、『三之幽(さんのゆう)』と呼ばれているが…」


「僕達の旅は、その三体を倒した時に終わるんでしょう? なら、それと対になるといいかもね」


 そう言って気分良さげに悩んだ彼女は、「…決めた!」と笑ってヴィス、ルナへと振り向いた。


「僕と、ヴィスと、ルナ……この三人で『三之明(みのさや)』だ。…改めてよろしく、二人とも」


 本当の旅はこれから始まる。

 しかしその暗雲もきっと三人で打ち破れるであろう。


 朗らかに「おう!」と頷くルナに続いて、ヴィスは小さな首肯を以て応えた。

(ノサティス戦開始時点)


・ディアナ

握力80kg

パンチ力200kg

キック力500kg

耐久度120

走力8m/s

霊力6540

怪霊領域4096

回復力1

術: 仙攻丹、我霊閃、我霊射、読霊、収霊、発霊、操霊


・ルナ

握力2.7t

パンチ力5.75t

キック力17.2t

耐久度3798

走力162m/s

霊力2,403,001/2,403,128

怪霊領域128

回復力9

術: 我霊閃、我霊射、読霊


・ヴィス(封印解放度0.02%)

握力1,000t

パンチ力2,800t

キック力6,800t

耐久度1,680,000

走力68,000m/s

霊力99,999,999

怪霊領域19,999

回復力2,000

術: 我霊閃、我霊射、霊玉操、読霊、操霊、発霊



・ノサティス

握力675t

パンチ力1,800t

キック力4,500t

耐久度1,125,000

走力45,000m/s

霊力1,350,000

怪霊領域1,350,000

回復力4,500

術:我霊閃、我霊射、読霊、操霊、発霊

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