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ブックマーク追加、ありがとうございます!
本当に励みになっています!
えー、11月に入りまして、毎日更新がちょっと難しそうな風向きになって参りました!
時間にルーズだったり日付ずれても、ご寛恕くださいますよう……。
侍女と側仕えの世話を受けながらベッドに入ったあたしは、天蓋を薄目で眺めながら、みんなが出て行くのを待っていた。
しん、とした後が一番危ない。みんな聞き耳立てているから、もう少し、このまま大人しくしてないといけない……。
さて、そろそろいいかな?
体を起こしてもドアの向こうに変化が無い事を確認したあたしは、思い切り胸に息を吸い込む。
―――祝! 二周目以降確定!!
静かに激しく、両手を高く伸ばしてポーズをとる。無音だけどあたしの中ではクラッカーもファンファーレも鳴り響いている。
そりゃもう鳴り響くわよ!
『どきスク』の世界に転生してから、どうなんだろう、大丈夫かなって毎日不安に思いながら頑張って勉強してきて、それがやっと報われるんだから!
十七歳で八歳児に転生してからもう五年。長かったけど振り返るとあっと言う間だった五年。そういう意味では、あたしも精神年齢的には二十二歳になったって事でいいのかしら?
二周目以降だと思ったのはまず、”おぎゅう”が出てきた事。そう、オーギュスト・ド・タランス。あの魔法バカ一代。はっきり言ってあたしの好みじゃなかったけど、おぎゅうは二周目以降に開放される隠し攻略対象で、初回プレイじゃ登場しないキャラだから。
確かムックに載っていた設定では、王立アカデミーでも有望視されている天才なんだけど、魔法バカ一代が周囲に迷惑かけ過ぎて追い出され、一年くらいする事が無い期間があった。でもその期間は実は、王族の依頼でシャルル・アンリ殿下達を陰ながら警護してたってのが載ってた。だから、おぎゅうが登場している時点で二周目以降のはずなんだけど、あんな真っ黒なイイ笑顔のスチル見た事無いから、同姓同名の別人かと思ったりもしていた。
それが二周目以降で間違いないと確信したのは、昨日のアリシアを招いた昼食会で知った、うぃるたんとヒルダ姐様の登場確定情報。
キャラデザ発表時にビジュアル一本で俺様枠って言われてたウィルヘルム・フォン・ヴェルデンシュタインこと、うぃるたん。キャラデザを見た一部のプレイヤー達が雄叫びを上げて待ち構えたのに、初回プレイじゃ留学してくるってテキストが流れた直後の画面で、スタンバってたプレイヤー達を奈落の底に叩き落とした。それと言うのも画面が切り替わって出てきたのが、青空を背景に半透明で浮かびながら手を振って微笑んでいるスチルのみの登場で、準備の熱量をスカされたプレイヤー達が「登場前に死んでる!?」とか「何この遺影!?」と、一部のソーシャルメディアを騒がせた。
そんなうぃるたんが確定で来る時点で、二周目以降ですわ。間違いない。
ってことは、あたしはプレイヤーキャラクターって事でいいんだよね?
でも不安は消えない。
おぎゅうとアリシアに接点があったなんて設定は無いのに、家庭教師をしていたってどういう事?
うぃるたん達が解放されて登場するのは入学式なのに、なんでひと月遅れで登場するんだろう……。
色んな所が結構違ってるのが怖い……。
例えば入学式で見たアリシアは、間違いなくアリシアだった。あのピンク混じりの金髪も大きな茶色の瞳も、『どきスク』のメインヒロインのアリシアだった。制服とか細かい所はちょっと違っているように見えたけど、そこは二次元と三次元の違いだと思う。
でもプレイ中に表示されるスチルとはまるで別人だった。
だってあたしが知ってるのは、とても貴族令嬢に見えない、天真爛漫でいかにもヒロインですっていうような、オープニングのあの姿なのに! 貴族令嬢として申し分ない楚楚とした振舞いをする姿は、パッと見終盤間近のスチルみたいなのがおかしい!
でももっとおかしいのは、入学してから二週間経つのに、誰一人出会いイベントをやっていないみたいだって事。
入学式の後に、シャルル・アンリなら学院中庭で、ジャン・ポールなら図書館で、ミシェルは植物園だしアレキサンドルはカフェで、出会いイベントをやっているはずなのに……。
実際に入学式の後、みんな理由を付けてバラけるから、これは出会いイベントだなって思っていたのに……。
最初のルート選別で絶対見るから、誰ルートなのかそこで分かると思ってたのに!
二日経っても三日経っても、誰も何も言わないから、思い余って「小さな白い鳥を見なかったか?」って四人に聞いたら、誰も見なかったと揃って返事してきた。
一体どういう事? リリは何をしてるの? アレキサンドルのカフェイベント以外は全部、白くてぽわぽわのシマエナガの姿になったリリが飛び込んで来て、それを追っかけてたアリシアに目を奪われる所から始まるのに……。
ホントどういう事!? 光の妖精リリコットはどこにいるの!?
そう思っていた日々も昨日で終わった。
リリはいた。居る事は居たけど、あたしの知っているリリじゃなかった。
昨日の昼食会で、アリシアが「リリ」と呼び掛けたのを聞き漏らさなかったあたしは、その視線の先を見た。そこにはプラチナブロンドをひっつめ髪にして、側仕えのお仕着せに身を包み、理知的な眼鏡をかけた超美人が会釈で答えていた。
ゲームのリリコットと全然違う成人女性の姿だった。髪の色も瞳の色も違っていた。
てゆーか、ゲームのリリは殆どのプレイヤーから「何需要対応だ!?」と突っ込まれてたロリだ。人の姿で登場する時も側仕えのお仕着せなんかじゃなくて、セーラーっぽい意匠のワンピースにエプロンドレスを合わせた姿のロリだ。淡いクリーム色の髪にレースのついた大き目のカチューシャを乗せて、幼女っぽい笑顔を見せるスチルは何度も見た事ある。見る度に「ほんと何需要なんだろ?」と思ったけど。
これだけ違うと別人かと思ったけど、リリと呼ばれた側仕えは、他の側仕えと雰囲気が全然違っていた。ちょっと神々しいというか、凛とした気配を纏っている。だから、きっとあれがこの周回のリリコットだと思う。
そう思わないと、不安がどんどん膨らんでいく。
とにかくアリシアが絡むと、色々とおかしくなってる……。
ライバルヒロイン達もおかしい。
マリー・シャルロットは王道ルートと言えるシャルたんルートのライバルヒロインで、ゲーム中に登場する悪役令嬢の一人だ。他のゲームと一緒でシャルたんルートに入ったヒロインに嫌がらせもするけど、基本的にヒロインのステータスに合わせてキツい台詞をぶつけて、プレイヤーのヘイトを稼ぐだけのキャラ。でもそのキツい台詞は、ルート進行でどのステータスが足りないかが分かるってからくりで、残念悪役令嬢って言われてたなぁ……。最後にアレで断罪されるのも、残念すぎる演出なのよね……。
それがウジェニー・フィリスに色々吹き込まれたのか、初対面の叱責イベントも発生しなかった。今の時期のアリシアはまだ公式チートのブーストもかかりきっていない低ステータスだから、突っ込みドコしか無いはずなのに……。
発生しなかったどころか、名前で呼び合いたいって言うなんて思いもしなかった。マリー・シャルロットの後にいたあたしもびっくりして硬直していると、アリシアは困った顔をして一度断ったのに、食い下がった事にさらにびっくりした。
魔法の授業を一緒に受ける事になったアリシアを見てると、確かに女子にも人気のある女子って雰囲気がある。だけど、こんなにライバルヒロインと仲良くなるシナリオなんてあったんだろうか……あたしが未プレイなだけ? それともあたしが転生した後に追加シナリオでも出た?
今日、BクラスとCクラス合同のお茶会を終えたマルティーナがあたしの部屋に来てくれて、お茶会の様子を教えてくれた。
マルティーナにアリシアの好きな花や好きな色、そういう設定資料に載っていた事を確認したくて、情報収集をお願いした。それと……誰ルートにいるのか聞き出して貰いたかったから。
昨日の昼食会では聞き出せなかったのは、マリー・シャルロットやウジェニー・フィリスがいたからもと思って、今日のお茶会に参加するマルティーナにお願いした。
そして結果を聞いて驚いた。
アリシアの好みは設定通りだった。イチゴのショートケーキが好きとか赤が好きとか、完全に設定通りだった。そして、本当に誰のルートにも入っていなさそうだと分かった。
それなら、アリシアはあたしのような転生者じゃなくて、ノンプレイヤーキャラクターなのかも知れない。だとしたら、シン・悪役令嬢と言われたチート性能も少しは抑えられているはず……。
「……ご報告は以上となります」
「そう。とても大変だったでしょう? ありがとうぞんじます。マルティーナ」
マルティーナに今日のお礼を告げて、いつも通り楽しくお喋りをしてから彼女を見送った。感謝の言葉が意外だったのか、終始顔を赤くして照れながら、自室に戻って行った。
ホントにマルティーナは可愛い!
この『どきスク』世界でたった一人、心を許せるお友達のマルティーナが、ゲームの会話パートでインサートされるモブの一人だと気付いたのは、入学式だった。
あたしとクラスが別々になるって分かったマルティーナは、泣くのを我慢できなくて俯いていた。明るいピンクの前髪が目元を隠しているのに、悲しい雫がぽたぽたと落ちていくを見て、あたしも悲しくなった。だからなんて慰めたらいいのか考えていて、何気なく辺りを見回したらちょうどその時、明るい鳶色の髪でショートボブの女の子がアリシアの側にいるのが目に入った。二人で楽しそうな顔をしていたのが印象的だった。
その瞬間、背筋にピシャーンと雷のような電気が走った。
八歳で出会って、ちゃんと名前があって、楽しい時は笑って悲しい時は泣いて、何かあるとすぐ顔を真っ赤にするマルティーナが、ゲームでは会話パートに出てくるだけのモブだなんて思いもしなかった。アリシアの側で笑う明るい鳶色の髪でショートボブの子も、マルティーナと同じモブ。マルティーナと違うのは、勉強が出来る事を鼻にかけている台詞が多めのモブってくらい。名前なんだったっけ……ベルヌール男爵令嬢だったっけ?
どっちもゲームでは名前なんて無くて、目元はあやふやなモブ顔だった。
ただのゲーム世界だと思っていたあたしの計画が変わった瞬間だった。
元の世界じゃ自分から小市民的なポジションに入って行ったあたしは、異世界転生してもはっちゃける事が出来なかった。ただ推しカプ成立の為にあれこれやってきたけど、マルティーナを踏み台にするような事は考えられなかった。
だって、生きてるんだもん。一緒に過ごしてきた時間があるんだもん。
少なくとも、マルティーナに嫌な思いをさせるような事はしたくない。
モブが絡むようなイベントは無いけど、あたしがした事の結果に、絶対に巻き込みたくない。
なのにゲームの設定から微妙にずれてるアリシアのせいで、何をしていいのか分からなくなってきた……。
―――はぁ……やっぱりアリシアって、本当にシン・悪役令嬢だわ。
現実を付けつけられたあたしは二周目以降だと分かった嬉しさよりも、考えれば考える程膨らむ不安を誤魔化すように、ベッドの上でごろごろと転がり続けた。
貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。
「?」区分、気にかけて頂いていたでしょうか?
引っ張るつもりはないので、引き続きお読み頂けると嬉しいです。
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