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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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そんなバンダンとのやりとりが終わった頃、城壁の入り口が見えてくる。

門番は行きと同じく、良翔達を見ると、敬礼をし、良翔達を素通りさせてくれる。

良翔とノアは、一礼をして、走り抜ける。


良翔とノアはそのまま街の街道を走り抜ける。

街はいつもの様子と何ら変わらない。

皆穏やかに、各自の生活を営み、商売をする者、それを真剣に悩み商品を選んでいる者、楽しそうな親子。

そんな様子を横目で見ながら、良翔はこの生活が壊れなくて本当に良かったと心から思う。

一つ変わった事と言えば、すれ違う冒険者達は皆、良翔達を見つけると、左胸に右手を当て、真剣な眼差しで見つめてくるのだ。

良翔はその合図の意味が分からず、視線は合うが何もせずに通り過ぎる。

「一体なんの合図なんだろうな。恐らく今回作戦に参加している冒険者達だと思うんだけど、まだ、何か事件でも起きてるのかな」

良翔は念話でノアに話し掛ける。

『さぁ?私にもよくわからないわね。早くバンダンの所に行って状況を確認した方が良さそうね』

ノアの念話に良翔は頷いて応えると、ギルドへの足を早める。


やがて、ギルド前に着く。

良翔とノアは勢いよく、扉を開け中に入る。

だが、何故かいつもは冒険者が沢山いるギルドに誰も居なかった。

ミレナ達すらカウンターに居ないのだ。

ギルドはもぬけの殻となっていた。

良翔とノアは不振に思い、慎重に中に踏み入れると、2階から声が掛かる。

「おう、きたな!こっちだ!」

バンタンは良翔達にそう言うと、サッサとカシナの執務室の方へ姿を消す。

ノアと良翔も、直ぐに執務室へと向かい、ホールの階段を駆け上がる。

そして、執務室の前に着くと、呼吸を整え、ノックする。

すると中から声がする。

「入れ」

カシナの声だ。

ニーナは出てこない。

この事態だ、どこかに出ているのかも知れない。

良翔とノアは顔を見合わせ、ユックリ扉を開ける。


すると、そこには大勢の姿があった。

良翔とノアが室内に入った途端、割れんばかりの拍手が沸き起こる。

カシナもその輪の中の中心に立ち、拍手をしている。

良翔とノアが、突然の事に呆然としていると、バンダンがニヤニヤしながら声を掛けてくる。

「英雄様のお帰りだ!もっと嬉しそうにしろよ、お前ら。皆お前らがこの難しい問題を解決し、無事に生還した事を祝ってるんだからよ」

バンダンに言われ、良翔はやっと状況を理解する。

ノアも同じくだったようだが、次第に笑顔を見せる。

すると、一部の者からは

「おぉ…、なんて美しいのだ…。まるで、女神の様だ」

といった声が聞こえて来る。

良翔も思わず照れる。


そして、頃合いを見計らって、カシナが前に一歩出る。

良翔とノアもカシナに向けて、前に出る。

すると、さっきまで割れんばかりに鳴っていた拍手がピタリと止まる。

カシナと良翔の会話を邪魔しない為だろう。


カシナは微笑み、良翔とノアに声を掛ける。

「ご苦労だったな、良翔、ノア。ギルドを代表して、お礼を言わせて欲しい。ありがとう」

すると、周りは一斉に、うぉぉぉ、と騒ぎ出す。

だが、カシナが手を挙げ、静まるように促す。

またしてもピタリと止まる。

まるで犬のしつけの様だな、と良翔は思わず思ってしまう。

「今回のお前達の働きによって、街には被害者が一人も出ず、大勢の者が救われた。街は何事もなく無事に住み、古の森を見張っていた者からは、森もほとんど被害が出ていないと聞く。全く…、お前らには驚かされてばかりだ。さて、これで一旦は無事に本作戦は終了だな。続きはその男から後ほど、聞き出し、全容を掴むとしよう」

カシナはそう言い、一旦言葉を切る。

皆カシナに注目し、なぜか少しそわそわしている様に見える。

良翔はそんな様子を不思議に見ていると、カシナがよく通る声で大きく発声する。

「良翔達が無事に戻り、今回の全ての原因となる男を捕まえた!これによって本作戦は終わりを迎える!そして、これだけの大規模でかつ、危険な任務であったにも関わらず、街では誰一人として犠牲者を出していない!更に!アースワイバーン達との無意味な争いを回避する事も出来た!つまり!これはお前達の、大切な者達を守りたいという、強い気持ちがあるからこそ、ここまでの輝かしい成果をもたらしたと言っても過言ではない!諸君!胸を張って誇れ!我々は自身の手で大切な者を守り、タリスの平和を守ったのだ!皆、今がその時である!!勝どきの声を上げよ!!」

そうカシナの声が響き渡った途端、その部屋に居た全ての者が、一斉に叫ぶ。

「「「おおぉぉぉぉ!!!!」」」

あまりの声量に部屋の空気が揺れるのが分かる。

皆、この勝どきの声を上げたくてそわそわしていた様だ。


各自が思い思いに喜び、互いに分かちあい、部屋がタダのざわつきに戻った頃、ニーナが前に出る。

「冒険者諸君!ご苦労であった!本作戦に参加して頂き感謝する!これより、僅かではあるが、当ギルドより感謝の意を込めて、本作戦への参加報酬として、一人当たり5万ゴールドを支給する。各自カウンターで受け取って欲しい!また、本作戦の成功を祝うと同時に諸君らの労いの意味も込めて、食事や酒をホールに用意させている!各々、今日だけはタリスに平和が戻った事を感謝し、自由に飲み食いして大いに盛り上がり、日頃の疲れを癒して欲しい!!」

それを聞いた冒険者達は大いに盛り上がる。

「皆ご苦労であった!では、解散!!」

そうカシナの掛け声が飛ぶと、皆ゾロゾロと一斉に執務室を出て行く。

よくもまあ、広いとは言え、この執務室にこれだけの人数が入ったものだ、と良翔は、中々終わらない冒険者の列を眺めながら、思う。

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