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良翔は四島の横柄な振る舞いをグッと堪え、口を開く。
「そうか、それは悪かったな。だが、これでアースワイバーン達は用済みだろう?俺たちの目的はアースワイバーン達の姫様を返してもらう事だ。仲間になる、ならないは別にしても、俺もこの生活を、俺なりに楽しんでいる所だ。今回のクエスト達成の為に、返して欲しいんだが、いいか?」
すると、四島はまたも大笑いする。
「あはははは!おじさん馬鹿なの!?これは俺からの慈悲であって、おじさん達に交渉なんかする権利なんか無いんだよ。この世界のルールは明確なんだ。強い者が弱い者を支配するんだよ。確かにアースワイバーン共は使えないどころか、この場所までベラベラおじさん達に喋っちゃってさ、もはや、用済みもいい所だよ。だけどね、はいそうですか、って返す訳ないじゃん。アイツらの前で裏切ったみせしめにお姫様をバラバラに切り裂いてやろうかと思っていた所さ。そしたら、あまりの恐怖に平伏すかもね?あはははは!」
「つまり、交渉は決裂って事か」
すると、四島は怒りを露わにして
「あ?だから、交渉なんてできる立場じゃないんだよ!何回言えば分かるんだよ、このカス!返して欲しけりゃ、泣いて仲間にしてくださいって土下座しろよ?タダでさえ僕の邪魔をしてるんだ!こうやって話してやってるのだって、ただのお遊びさ!お前達の命なんて俺の気分1つなんだ!さぁ、詫びて跪けよ!」
途端にノアが凄まじい殺気を放ち、動こうとする。
だが、良翔がそれを手で制する。
良翔はフッと笑い、四島を見る。
そして、再び刀を作り出し、右手に握る。
「お前はやっぱり、最初の印象通り、頭がちょっと弱いみたいだな」
良翔はそう言い、刀を四島に向ける。
四島はカッと目を見開き、顔を赤くする。
ノアは、ハッと良翔を見る。
さっきまで危険だったら逃げる話までしていた程の相手に対して、ジッと我慢していた良翔が、今度は明らかに相手を挑発しているのだ。
不安を覚えるノアだが、良翔が考えなしに感情に任せて、このような事をする筈がないと、信じ、周囲に気を配る。
地表、空、空間とノアは目を走らせるが、変化を見付けられない。
ノアは良翔の行おうとしている行動を先読みして、理解する必要がある。
でなければ自分が足手まといになってしまう。
それだけは耐え難かった。
私は良翔のナビゲーター、その思いの方が遥かに強い。
ノアは必死に考え、更に視覚以外にも良翔の魔力がどこかに潜伏しているのではないかと、鑑定を行う。
そこで、ノアは異変に気付く。
鑑定が発動しないのだ。
いや、正確には、魔素が集められないのだ。
それに気づいたノアは良翔のやろうとしている事に思い至る。
『なんて人なの、全く…』
四島はみるみる顔を激昂させ、遂に怒鳴り散らす。
「この、雑魚のカスが!!テメエみたいな転生したての奴が、ろくな能力もなく、ましてや俺よりも遥かに弱いお前が、人の事言ってんじゃねーよ!!この力差を全く理解もせず、仲間を危険に晒してる、お前が馬鹿すぎるんだろうが!!決めた!お前は簡単には殺さねーよ?コッチが優しく出てりゃ付け上がりやがって。その頭には良く理解してもらう必要があるからな!頭以外、腕一本、足一本とジワジワ痛みを与えて、最後はダルマみたいにしてやるよ!かはははは!」
良翔は、四島の言葉には全く動じず、またしても、嘲笑する。
「全く、頭が悪く、語彙力も低い。そしてまだ、俺を倒せると思っている、お前は残念な奴だな。そういえば、さっき俺の刀の事を言ってたっけ?じゃあ、ご要望に沿うように、存分に味合わせてやるよ」
「このクソヤローが!!」
遂に我慢しきれず、四島は良翔に飛び掛かる。