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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
9/163

1-9

どうやら、先程と同じ所に来れたのだろうと良翔は確信した。

というのも、目の前の草が不自然に倒れており、思い出したのだ。

帰りたい一心でゲートを作り出した際に、驚いて尻餅を着き、辺りの草をなぎ倒してしまっていたものが、そのままとなっていたのだ。

そして、その直ぐそばには、ゲートに試しに通してみた、草が落ちている。


『どうかしら?先程の異世界に戻ってきた感想は』

「最初に来た時は、不安と驚きしかなかったのに、今じゃ感動を覚えるよ」

小さく笑いながら、良翔は答える。

『そう?なら良かったわ』

「ああ」

そう、心の中で短く会話すると、良翔は考えることを止め、周りの景色を眺め、全身で感じるように、息を大きく吸いながら、ユックリ目を閉じる。


さっきはこんな余裕はなく、景色に対し何の感想も抱かなかったが、今は違う。

草原の匂いと、澄んだ空気。

瞼越しに感じる太陽の熱。

大自然の中に身を置くと、こんなにも清々しいものなのだろうか。


暫く、異世界の空気を味わった後、満足してノアに話し掛ける。

「お待たせ、ノア」

『あら、もういいの?』

「あぁ、また味わいたくなったら、後で幾らでも出来るさ」

『ふふ、それもそうね』

ノアはしっかりと良翔に沿って考えてくれている様だ。

良翔のペースを崩さずに、決して急かしたりはしない。


「さて、そろそろ始めようか」

『ええ』

「先ずは何から始めれば良いかな?」

『そうね…。先ずは、空でも飛んでみましょうか』

「…え!?空を…飛ぶの?」

思わず、ノアの提案に驚く。

だが、ノアは何てことない、という様に答える。

『ふふ、そうよ。この世界はとても広いわ。障害物もなく、早く移動できた方が、色々と世界を見に行けるわよ?それに、この世界なら、イメージしたものを実現しやすいしね』

「それは、確かにそうだけど…。というか、この世界は現実の世界よりも、イメージしたものを実現しやすいのかい?俺には、自分が住んでいた世界と変わらない様に見受けられるけど…」

『見た目は確かに、転移前の世界とソックリね。だけど、ここには良翔が生活している世界とは、当たり前と思う定義、感覚が異なっているわ。その、当たり前が違うという事がとても大事なの。イメージしたものを作り出すには、その思い込みに似た感覚が必要なの』

「なるほど…。イメージしたものを実際に作り出すには、思い込みの様なものが必要ってのは何となく理解出来るかな」

「ただ、俺が生活している世界の当たり前と、この世界の当たり前が異なっていたとしても、イメージして作り出すのは俺だから、俺自身の当たり前と思う事が、生活している世界のままな様な気がするんだけど、その辺て問題ないのかな?」

ノアが良翔の問いに答える。

『その辺、良翔は特別なのよ?良翔には今は私という存在があり、イメージから現実に変えてしまう力を手にしているわ。良翔の世界の、他の人なら、こちらの世界でも、イメージを実現化するのは難しいかもしれないけれど、良翔に至ってはイメージするだけで良いのよ』

言葉を一度切り、間を置いてから再びノアが続ける。

もう少し、良翔に分かりやすい様に、意識しながら話そうとしている感じだった。

『問題は、良翔がいる、その世界全体の当たり前という、思い込みが深く関係しているの。世界の思い込みが、良翔がイメージしたものと大きく異なってしまうと、イメージしたものを作り出しづらくしてしまうの。多くの存在が作り出す思い込みは、とても大きな力を持っているの。それは簡単には覆せないわ。例え、良翔のその力を持ってしてもね。だから、良翔の生活している世界では、何も使わずに空を飛ぶというのは、中々に実現するのが難しいイメージになってしまうわ。』

「なるほど。世界には思い込みという大きな力があって、イメージから実際に何かを作り出したりするには、その力、つまり環境に依存するところが多いと」

『ええ、その通りよ、良翔。理解が早くて助かるわ』

良翔を褒め、ノアは続ける。

『でも、今のこの世界では、人が空を飛ぶというのは、非現実的でありえない、という事ではないの』

「…てことは、この世界では人が空を飛べるのは普通だと言う事なの!?というか、人が…、人類がいるの?」

『ええ、この世界にも人類が居るわ。何なら、他の種族も居るし、モンスターだって、魔族と呼ばれる存在だって居るわよ?』

ノアがニコニコ微笑みながら話している様に聞こえる。

『そして、共通して彼らは、良翔の居た世界とは違い、魔力っという力を使ってあらゆる事が出来るの。もちろん、空を飛ぶのもその魔力を使ってね』

「…魔力って事は、魔法があるんだ!?」

『その通りよ』

ノアは、きっと、ずっと優しく微笑みながら話し続けてくれたのだろう。

言葉からは常に優しさを感じる。


一呼吸置き、ノアが再び話し出す。

『一つ訂正しちゃうけど、正確には、この世界もまた、現実なのよ。良翔の生活している世界も、この世界も、どちらも現実に存在するものよ』


ノアにそう言われ、良翔は少し考える。

「…そうか…。…確かにそうなのかもしれない…。自分が生活している世界のみが現実だと思いガチだけど、この世界が実際には存在しないって、結論づけるだけの要素がないしね。何となくの思い込みで異世界=実際には存在しない空想の世界、って、勝手に思い込んでた節があるよ。ノアに言われてみれば、確かに存在しない世界だ、なんて言い切れないね」

『理解してくれて、何よりだわ』


ふむふむ、色々な話を聞き、一人で納得を繰り返す良翔。

そんな、良翔にノアは声を掛ける。


『さて、良翔!大まかな説明は終わり。早速、空を飛ぶ練習をしてみましょ!』

ノアに声をかけられ、自分の世界に没頭仕掛けていた良翔は、目的を思い出す。

「そうだったね、ノア」

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