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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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「それでは今回のクエスト達成等諸々含めた報酬となります。どうかお納め下さい。クエストご苦労様でした」

良翔は笑顔で頷き

「ああ、ありがとう。確かに受け取ったよ」

ミレナはトレーを下げて、今一度改まって頭をさげる。

「良翔さん、ノアさん。今回の件は非常に助かりました。ギルドからもお礼申し上げます。ギルドとしてもあそこまで増えたファウンドウルフの討伐には手を焼いておりましたので、こんな早期解決は夢のようです。早速この朗報を明日にでも、依頼元の村や周辺の方々にお伝え致します。皆さんとても困っておいででしたから、きっと大喜びされると思います」

「ああ、それは本当に良かったと思うよ。これからも、小さなクエストでも、低ランクのクエストでも構わないから、他に受注する冒険者が居ずに困ってる際は、遠慮なく言って欲しい。俺も出来る限りのことはやるつもりだし、やはり困っている人々が救われる事が第一優先だからな」

するとミレナはニッコリ微笑み

「はい、良翔さん。良翔さんはやはりお優しいです。そして本当に人の事を思ってくれます…。助けが必要な際は、必ず良翔さんに最初に相談させて頂きますね」

良翔も優しい笑顔で、ああ、と頷く。

するとミレナは良翔の顔を見るなり顔を赤く染める。


それまで不機嫌そうにやり取りを見ていたノアが、突然口を開く。

『さあ、良翔!用件が済んだなら行くわよ!明日の作戦会議と芽衣のお土産買わなきゃならないんだからね!』

「ああ、そうだったね。それじゃあ、ミレナさん、また明日」

「はい!また明日!」

ミレナは立ち上がり、良翔にニッコリ微笑んで手を振る。

そんな様子をバンダンはクックックと笑って眺めている。

3人はギルドを出る。

日は傾き、段々と薄暗くなって来ていた。

「ほら、良翔!芽衣のお土産屋さんしまっちゃう!急いで!」

「ああ、わかったよノア。それじゃあバンダンすまないな、先に行くよ」

「ああ、気にするな。俺も明日に備えて準備を整えねばならん。明日またわかった事を説明する。今夜はユックリ休めよ?」

「ああ、そっちも久々の戦闘に興奮して眠れなかったなんて、やめてくれよな?」

「ガァーハッハッ!!それだけ減らず口が叩けるなら問題なさそうだな!では、また明日!」

良翔は頷き返事をすると、ノアの方へ駆けて行く。


ノアに追いつくと、そこはもう昨日の駄菓子屋の目の前だった。

早く早く、とノアにせがまれ、中に入る。

ノアは昨日の反省をいかし、大きい物は選ばなかった。

昨日、良翔が買ったコンペイトウの様なお菓子をノアはとても気に入り、1人でほとんど食べてしまった。

その為、今日は同じ物を、自分の分と芽衣の分用に2つ買う様だ。

良翔が支払いを終えると、ノアはニコニコ顔になり、またしても大事そうに胸の前で抱える。

大事なものは収納にはしまわず、極力自分で持っていたいらしい。


そのまま、宿に着き、カウンターで鍵を受け取り、部屋へ真っ直ぐ向かう。

部屋に入るなり、ボフンと良翔はベッドに倒れ込む。

なんだか、今日は疲れた気がする。

そして何故かノアも良翔の隣にボフンと横になる。

「ノアのベットはあっちだよ…」

良翔は力なく、ノアに言うが、ノアはニッコリ優しく微笑んだまま、良翔の頭を撫でて来る。

『心配しないで、良翔。イタズラなんてしないから。今日は疲れたんだよね。秋翔からの連絡があるまで横になっていて良いわよ』

ノアにそう言われ、良翔は瞼を閉じた。

優しく撫でられるノアの手が、年甲斐にもなく気持ちよかった。

良翔はあっという間に、眠りに落ちる。


「…しと。良翔。良翔、聞こえているか?」

良翔はハッと目を開ける。

するとノアの顔が至近距離にある。

ノアは天使の様な寝顔を良翔に向けたまま寝息を立てている。

「!!??」

良翔は焦り、ガバッと起き上がり、すぐに秋翔に応える。

「あ、ああ。すまない。疲れて寝てしまっていたよ。今何時だ?」

「ああ、良かった、良翔。テッキリ何かあったのかと思ったよ。無事なら何よりだ。すまない。今日は少し遅くなってしまって、今会社を出た所だ。時間は…19:30を過ぎたところだ」

時刻を秋翔に言われ、良翔は窓の外に目をやる。

スッカリ日は落ち、部屋の中は薄暗くなっていた。

あれから、1時間程寝てしまったらしい。

「ああ、こちらこそすまない。お前が働いているのに、うたた寝なんて申し訳ない。今度から気をつけるよ。さて、そうすると…、あの駅には20時頃に着くかな?」

「気にするな良翔。そちらも疲れるのだろう。そうだな…、ああ、それぐらいにあの駅に着く予定だ。また、個室に着いたら連絡するよ。だから、今からの夕寝はなしだぞ?俺はトイレの住人みたいになってしまうのは勘弁だからな」

秋翔は笑いながら、そう良翔に言う。

「ああ、秋翔をトイレの住人にさせない為に、ちゃんと起きてるよ。それに、こちらも準備しないと。じゃぁ、悪いが着いたら連絡を頼む」

良翔も笑いながら、秋翔に応え、通信を切る。


良翔は帰りの身支度を始める。

収納から服を着替え、朝の服装に戻る。

だが、ノアは猫みたいに丸くなり、まだ寝ている。

「ノア、ノア起きてくれ。秋翔がもうじき帰って来るよ」

『ん〜、良翔もうちょっといい事しましょ♪』

「いい事ってなんだよ…。含みを持たせる様な言い方をするなよな。ほら、帰る支度をしなきゃ芽衣を待たせちゃうぞ?」

それを聞き、ノアはガバッと起き上がり、入り際に椅子の上に置いた、お土産の菓子袋をシッカリと抱く。

『芽衣のお土産OK!さて、もう一眠…』

そう言い、ベッドに再び飛び込もうとするノアを良翔は抱き抱える。

「だから、もう秋翔が着くよ。今から寝て秋翔を待たせたら可哀想だろ?アイツも向こうでシッカリ働いてるんだから」

『ぶー、まぁ、しょうがないか。まぁ、でも、これはこれで悪くないわね♪』

そう言い、ノアを抱えているため両手の自由が効かない良翔をいい事に、両手を後ろに回して良翔に抱きついて来る。

良翔は慌ててノアを降ろそうとするが、ノアは首にシッカリ手を回しており、離れない。

そしてノアは良翔の耳元で囁く。

『この罪な浮気者。もう少し自覚しないとこうだからね』

ノアの囁きの吐息が耳にかかる。

ノアの囁きが段々と耳に近づいて来て、良翔の耳を唇で噛む。

「!!??」

良翔の耳を噛んだ瞬間、ノアは直ぐに良翔から飛び降りる。

そして、ニヤリと意地の悪い顔をする。

良翔は顔が真っ赤だった。

甘噛みされた耳を抑え、一気にボッと湯気が頭から出ているのを感じる。

動悸が激しい。

またしても、ノアにしてやられた感じだ。

良翔は顔を真っ赤にしたまま、大きなため息を吐く。

「ノア…、勘弁してくれ…」

ノアはそれを聞き、ケラケラ笑っている。

敵は身内にありだ、と良翔は気を引き締める気持ちを再度決意を新たにしたのだった。

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