表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
78/163

1-78

二人の攻防をしばし眺めていたが、バンダンはゲラゲラ笑っているだけで、仲裁には入らないし、ノアとミレナはニコニコ顔のまま、互いに手に汗握り、時折、くっ、とか、なっ、とか言っている。

良翔は軽くため息をついて、ミレナに言う。

「ミレナさん、そろそろ、要件をお話ししても良いかな?」

すると、さっきまでの攻防が嘘の様に、ミレナはパッと良翔から手を離し

「はい!もちろんです!どうぞお座りください」

そう言って、何事もなかったかの様に、良翔は椅子に促す。

ノアはカッと目を見開き、歌舞伎役者の様な顔をする。

今まで見たことの無い、新しい表情だな、と良翔は心の中で一人感想を述べる。

しかし、ノアは何かを言いかけてぐっと堪え、良翔と同じく椅子に座る。

「えっと、報告したい事が有りまして。昨日受注したクエストの件なんですけど…」

するとミレナは目を輝かせて、

「流石良翔さん!もうクリアされたのですね!?それで、ファウンドウルフの方ですかね?それとも薬草採取でしょうか?それともひょっとして両方でしょうか!?」

良翔は苦笑いしながら、ミレナに答える。

「流石に両方は、出来ていません。クエストを行って来たのは、ファウンドウルフの討伐の方ですね」

「それは失礼しました。欲張り過ぎちゃいました。でも、それでも流石ですね!冒険者になって直ぐ、Cランククエストをこなして来るなんて。しかも討伐ですよ?大概初めての上位ランクの討伐クエストは失敗することの方が多いんです。色んな意味で良翔さん達は規格外ですね♪あ、もちろんいい意味でですよ?それで、何匹狩れました?きっと良翔さん達の事だから、10匹とは言わず、ひょっとして50匹ぐらいいってるんじゃないですか!?」

ミレナの隣にいた、他の受付嬢達も興味があるらしく、チラチラ良翔達の方を見ている。

「えっと…、その数よりは…」

そう言いかけた、良翔に対し、ミレナは

「ごめんなさい、流石に50匹は冗談ですよ。良翔さんならそれぐらい出来ちゃうかもっていう気持ちの表れです」

「え、いや…、その数よりも多いんだけど…」

そう良翔に言われ、ミレナは笑顔のまま、固まる。

「え、良翔さんその数よりも多いって、50匹の事…ですか?」

何故かノアは勝ち誇ったようにニヤニヤしている。

「ああ、そうなんだ。あまり多過ぎてもダメだったかな?きっと困ってる人が居るんだろうと思って、ノアと一緒に狩れるだけ、狩っちゃったんだけど…」

「いえ、クエストの達成報酬は同じになってしまいますが、良翔さん達が構わなければ多く倒す分には問題ないのですが…。因みに何ですが、何匹ほど狩ったのでしょうか…」

ミレナもそうだが、周りの受付嬢も、周囲の冒険者達もゴクリと唾を飲む音がする。

周囲の視線を浴びながら、良翔は気恥ずかしく思いながら

「恐らく…1000匹程かと…」

その言葉に、周囲が絶句するのがわかる。

そして、不意に大きな声が響く。

「ファウンドウルフ1000匹だと!?」

声をあげたのは、良翔達の後ろに立って様子を見ていたバンダンだった。

その内容と声の大きさに周囲の視線を盛大に集める。

勘弁してくれ…、そう思う良翔の気持ちなど知る由もなく、バンダンは大きな声で良翔に迫る。

「お前、あの念話の後に、1000匹もファウンドウルフを狩ったって言うのか!?実際たったの二、三時間でだぞ?!」

良翔は苦笑いしながら頷く。

「まあ、実際は俺が300匹ちょっとぐらいで、ノアが600匹以上狩ってるんだけどね。とりあえず、これを数えてもらえれば正確な数は分かると思うよ」

そう言って良翔は、収納からファウンドウルフの牙を全て出す。

ノアもそれに続き、収納からファウンドウルフの牙を全てカウンターの上に出す。

カウンターの上は見事に積み上げられたファウンドウルフの牙だらけになり、乗り切らず、カウンターからも溢れてしまっている。そして、カウンター向こうのミレナさんの顔が見れなくなってしまった。

「これって、大変ですけど数えて貰って、全部引き取ってもらう事って出来ますか?」

しばしの沈黙の後、ミレナさんの声がファウンドウルフの牙の向こうから聞こえる。

「ええーーーー!!??」

やっぱり多過ぎたかな?と良翔は不安になる。

しかし、思いのほか、興奮したミレナの声が聞こえる。

「良翔さん!!信じられません!!やっぱり、貴方達って絶対英雄になれると思います!!最強のパーティーですよ!!こんな事、絶対他の冒険者じゃ出来ないですもの!!」

ミレナは興奮気味に答えつつも、冷静に勘定だけは進めている様で、カチャカチャ継続的に牙を動かしている音がする。

恐らく数えながら移動させているのだろう。

「それじゃぁ、クエストは達成って事で問題ないのかな?あと、引き取りも出来そうかな?」

「ええ、もちろん!どちらも問題ありません!ただ、一括引き取りの場合ですと、量が量ですからね…。クエストクリアの報酬はすぐにお渡しできるのですが、買取金のお支払いは後日になってしまうと思います。それでも、問題有りませんか?」

「ええ、引き取っていただけるなら何ら問題ありません。お手数おかけしますが宜しくお願いします」

「かしこまりました!今急いで数えるので、少々お待ちくださーい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ