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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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良翔が集合場所付近に着くと、ノアは既に地面に立って、待っていた。

良翔はノアの近くに行く。

するとノアは頬をプクと膨らませて、良翔を睨む。

『良翔、ズルーイ!!』

良翔は、ノアに突然そう言われたが、何のことか分からずにいる。

そんな様子の良翔にノアは詰め寄る

『あんな広範囲に魔力弾を放つなんて!しかもみんな追尾機能付きだし、おまけに草原を傷つけない様に、地面に着弾させないで、上に逃す始末だし!そんなの使われたら、どれだけ一生懸命、地道にモンスター倒してたって数の競争じゃ勝てっこないじゃない!不正よ不正!』

「ああ、なるほど、それで怒っているんだね?でも、ちゃんとノアの分も残しておいたでしょ?」

そう言われ、ノアは更に頬を膨らませる。

いったいこの頬はどこまで膨らむのか見てみたくなる良翔だった。

『その、セリフね、私が言いたかったセリフなの!仕方ないから良翔の分も取っといて上げたわよ?ってね!でも、良翔に逆に言われるなんてーー!!』

ノアはプンプンしている。

だが、怒った顔も可愛い。

ふいにノアがこちらに向き、ニヤリとする。

『でも、良翔。あれだけ広範囲にてんでバラバラにやっつけちゃったんだから、ファウンドウルフの牙を回収しきれてないでしょ?楽して倒すから、そうなるのよ?さぁ、勝負の結果はファウンドウルフの牙の数よ!一斉に出すわよ!せーのー…』

ノアの掛け声に合わせて、良翔も慌てて、収納からファウンドウルフの牙を取り出す。


どさどさ、と地面に置かれたファウンドウルフの牙が山積みされる。

良翔はこの勝負勝ったと思っていたが、ノアは、なんと、その倍近くの山を作っていた。

良翔は驚愕する。

「ノア、その数をどうやって…」

ノアは自慢げな顔を向けてくる。

『良翔はズルしてちゃんと探さないからそうなるのよ?私はちゃんと探して、奴らの巣を見つけたの。少し頭を使ってね♪そしたら、そこから、蟻の巣を突いたみたいにわんさか出てくるじゃない。それを片っ端から片付けてから、草原に出ている他のファウンドウルフ達を探したのよ。多分巣穴は全部潰したんじゃないかしら』

「凄いな、ノア。流石だよ、どう見ても俺の完敗だな」

ノアは、良翔にそう言われ、照れる。

そしてニンマリ笑い

『じゃぁ、勝った人には、当然負けた人からのご褒美だね〜』

「・・・・」

良翔は嫌な予感がする。

『うふふ、それじゃあ…』

「仕方ない。芽衣のお土産に昨日以外の美味しそうなのを一個買ってあげるよ」

『はぅ!芽衣へのお土産…。で、でも、良翔に…』

「しょうがないなぁ、じゃあ特別に芽衣へ2個お土産にしても良いよ?」

『それで、お願いします!!』

「りょーかい♪」

ノアは、ハッと我に返った顔をする。

恨めしそうに、良翔の顔を見る。

良翔も、何かな?、と笑顔を返す。

『く、今日の所はこれで勘弁してあげる…』

ノアの苦しい口惜しみが漏れるが、良翔は意に返さない。

「それで、勘弁してくれるなんて、ノアはやっぱり優しいな。流石だね!」

ノアはグウの音も出ない。

頭を項垂れて、何やらブツブツ言っている。

良翔はその様子をクスリと笑い、気を取り直して、ノアに声をかける。

「よし、とりあえず、ファウンドウルフの討伐は完了したし、森の様子も何となく掴んだ。ギルドに帰って報告しよう!」

ノアも仕方なく顔を上げ

『おー…』

声にハリがないが、良翔は気にせず、ゲートを開く。

ノアを促し、先にゲートを通す。

良翔はゲートを通る前に、森の方を見やる。

さっきまで晴れていたが、森の上には、薄暗い雲が徐々に掛かっているのが、見える。

「雨が降りそうだな…」

良翔はそう、呟き、ゲートをくぐる。


ゲートをくぐり、街近くの森の中に戻ってきた。

時刻は16時を回った頃だが、まだ、日はあと2、3時間はあるのだろう。

森の中でも、まだ明るい。

良翔達は、何気ない顔で、近くの森から抜け、街道へと合流する。

タリスへ向かう人々の様子は、朝とそう変わらない。

ただ、この時刻ということもあって、タリスから出てくる人は、夜クエストをこなすのであろう冒険者達としかすれ違わない。

やはり、夜の野宿は危険が伴うのだろう。

冒険者と違い、戦闘に秀でていない旅の行商などは、なるべくそれを避けるのだろう。

その方が、護衛に支払う経費も削減出来るというものだ。

故に、人通りが多少多くても、日中の移動を選ぶのだろう。

そんな事を考えながら、良翔はタリスへ向け、街道を歩く。


まもなく、城門が見えてくる。

朝の門番の姿が見えた。

門番は街へ入る者達を検問している為、なかなか良翔達に気付かない。

次が良翔達の番になって、ようやく気付く。

「おう、無事に帰ったみたいだな。それに、お前達を見る限り、特に苦労も無かったようだな」

門番は良翔達の服装が、朝と同じ状態で汚れなどほとんど付いていない様子を見て、そう思ったのだろう。

「ええ、そうですね。今回はラッキーでした」

「ああ、だが、油断はするなよ?毎回そんなラッキーな訳ではないからな」

良翔は頷く。

そこで、ノアがニコリと笑い、何か差し出す。

『おじさま、良かったら、これ差し上げます。沢山手に入ったので、いつものお礼に、どうか受け取って下さいまし』

いや、どこの令嬢だよ、と内心ぼやく良翔だが、顔には出さない。

『あ、ああ、気遣いすまない。ありがたく頂戴するよ…』

そう言いかけ、受け取った物を見て、目をギョッとする。

「お前ら…、昨日冒険者になったばかりだったよな…。これが、沢山手に入ったって…」

『ええ、ですからラッキーでしたわ。沢山出会えたので、沢山狩る事が出来ましたわ』

ノアがニコリと手渡したのはファウンドウルフの牙だった。

良翔も、ノアが渡した物を見て、ギョッとする。

慌てて、ノアを抱え

「じ、冗談ですよ。それはたまたま拾っただけです。ラッキーだったのはモンスターにほとんど出合わず、薬草集めが出来たって意味ですよ!さ、さあ、ノア、急いでギルドに行かなきゃだよね?それでは失礼します!」

門番が、まだ、固まっていたが良翔はノアを引きずりながら、門番を後にする。


門番から離れ、ノアを掴んでいた手を良翔は話すと問いただす。

「ノア、何であんな事したんだい?」

すると、ノアは唇を尖らせ

『だって、あの人いっつも偉そうなんだもん。絶対私達の方が強いし、冒険者としても良翔の方が明らかに上よ?だから、余計なお世話よ!って思って、ついよ、つい』

良翔は軽くため息をついて

「ノアの言いたい事は分かるよ。でも俺達の事はあの門番さんは知らないんだよ。それに、門番さんは俺達の事を気遣って言ってくれてるだけだよ。だから、ありがと、って言えば終わりだよ」

『それが余計なお世話なのよ。少しやり過ぎた気もするけどね。でも、この世界は強い者が上に立つ世界だわ。だから、それはもう少し尊重されるべきよ。良翔も謙遜し過ぎなのよ。もう少し自分の実力に見合った態度をしてもいいんじゃない?でないと、それはそれで不要な面倒ごとを背負いかねないわ。まぁ、次からはさっきの様な事はやらない様にするけどね』

「うん。そう言ってもらえると安心するよ。ノアの気持ちも分かるけど、それで上手くいくともあるからさ。それに、ノアが俺の事を思ってくれての行動だったのが分かったよ。ありがとう」

すると、ノアは笑顔になり

『分かれば宜しい。じゃあ、じゃあ、お礼にご褒美のチューを…』

「さあ、ギルドに急ごう。ミレナさんに報告しなきゃね。きっと驚くぞ?」

ノアの言いかけた、危ないお願いを、上書きしながら、良翔はギルドへ向けて走り出す。

ノアはぶーと口を尖らせながら、良翔の後を追いかけてくる。

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