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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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サラは歩きながら良翔に教えてくれる。

「魔力とは、良翔が言ったのも正解だが、それが全てではない。分かりやすく表現するなら、魔力とはそのものが生きる力、つまり生命力と言った方が分かり易い。だから、魔法使い以外でも魔力はある。大なり小なりあれど、生き物なら全てにおいて魔力が存在するのだ。だが、魔力の構成比は、生き物によって違う。一番魔力という物に依存して構成されているのが、モンスターや魔族だ。だから、奴らは死ぬと消えて大気の魔素へと帰って行く。人間族や、獣人、エルフといった生き物は、肉体という物質に魔力が合わさって出来ている。だから、亡くなっても、消えたりはしない。肉体があるからな。魔力だけは抜けて大気へ還る。一番魔力との構成比が少ないのが、木や草といった生き物だ。生き物の部類に入らぬが、石や水といったものも若干だが魔力を秘めていたりもする。この構成比の関係から、魔族やモンスターは人間族やエルフ族よりも生命力、つまり魔力が高く、長命だし、魔力の扱いにも長けている。そんな奴らは、魔力をふんだんに秘めた泉によって育てられた森に好んで生息する。つまり、奴らにとっては絶好の住処だということは分かるな?そして、その森の恵みは魔族やモンスターだけでなく、人間族や獣人、エルフにとっても多くの富をもたらす。この森はどの生き物にとっても、とても大事な存在なのだ」

サラは一旦、話を切り、良翔が理解しているか確認する。

良翔はサラの話を聞き、自分が誤解していた事を知る。

魔力とは魔法の力という思い込みであったが、どうやら魔素を使った力という意味だったのだ。

この世界のあらゆる物質や生き物は魔素を皆持って生きているのだ。

それはまさに、サラの言う通り生命力とも呼べるものなのだろう。

だから、魔法使いのみに魔力があるのではなく、戦士にだってある。

きっと戦士は体内の魔力を武器や体に与え、強靭な攻撃や移動、体力といったものを得るのだろう。

魔法使いは魔力を魔法という形で、あらゆる力に変える事に特化した者を指すのだろう。

魔力についてはもっと知る事が沢山ありそうだ。


だが、今はその時ではない。

良翔はサラの目を見て、話の続きを促す。

良翔の反応にサラは話を続ける。

「つまりこの森は多くの生き物の糧となっている為、どの生き物もお互いの存在を認め合い、暗黙の不可侵がいつのまにか出来ていて、ずっとそれは守られてきた。だが、ここ最近の森の様子はそうではない。最初は少数のアースワイバーンの目撃情報だけだったのだ。アースワイバーンの様な厄介なモンスターの存在は、我々エルフや人間族の様な存在にとっては、決して安全な存在ではないが、個体数の少なさから、特に問題視されていなかった。だが、ここ一年で急激にその数を増やしたのだ。その頃から森で異変が起き始めた。アースワイバーン達は突然周囲の人間やエルフ、それだけでなく他のモンスターでさえも襲い出したのだ。そして、その頃から、あの赤目のローブの男も時折目撃される様になった。奴らはきっと森から、他のものを一層し、自分達の領域にしてしまおうとしているのだ、と当初は我々は考えていた。だから、我々はアースワイバーンを見つけたら狩るという程度だった。無理だと諦めてくれれば、それで良い。滅ぼす必要はない。考えを改め、共存してくれればそれで良いのだ。時折、そうやってこの富を独り占めしようとする輩が出ては来るのだが、大概は森の中に住む多くの者から抵抗に遭い、断念する事がほとんどだ。だが、奴らは違った。我々の村を見つけると、他の者への攻撃をやめ、我が村だけを執拗に襲う様になったのだ。そして何度返り討ちにあっても、決して諦めないのだ。何度やられても、繰り返し仕掛けてくるのだ。そんな事を繰り返していた奴らが、ここ数ヶ月ピタリと攻撃の手を止めたのだ。理由は分からないが、何か企んでいるに違いないと結論づけた我々は、その調査をする事になった。そして、村長直々に、この調査を任されたのが、私だ」

良翔は、サラの話を聞きながら考える。

「つまり、奴らの目的は、森の支配ではなく、大樹の命、もしくは目的を大樹の命に切り替えたって事だね。でも…、そうすると、奴らは何故人に化けて、タリスに侵入する必要があったんだろうか」

サラは歩みを止め、考える。

「それは分からん。私に分かっているのはアイツらが大樹の命を狙っているという事だけだ。それ以外にも何か目的があるのやもしれん」

良翔も立ち止まり、サラに応える。

「うん、その可能性は高いね。大樹の命を手に入れ、何かの力を得た後に、それを使って何かしたいという事なんだろうね。だから、その為の下準備の為に、タリスに潜入していると思う方が自然だね」

そして、良翔は気になるもう一つの疑問を口にする。

「となると、大樹の命を得ると、どんな効果が得られるのか、って事だね」

「それは…」

サラは話を途中で止めてしまった。

そのまま、真剣な眼差しで良翔を見てくる。

恐らくここから先は秘密の事なのだろう。

サラは、その事を教えるか迷っている様だった。

先程は確かに、その事については教えてくれるとは言っていないのだ。

森や村の事は教えてくれるとは言ったが、村の宝については、教えるとは言ってはいない。

無理にとは言い難いが、ここは奴らの目的を把握する為にも、是非とも知っておきたい。

「どうだろう?教えるのに判断を迷うなら、俺をサラの村まで案内してくれないかな?村長と直に話をしたい。分かっていると思うが、時間が差し迫っているのも事実なんだ」

すると、サラは頷く。

「分かった。村の宝の事は基本的に秘密になっているが、村の位置は別段秘密にはなっていない。だが、不用意にベラベラ教えるものではないが、調べればすぐに分かってしまうからな。私は良翔を多大に誤解してしまって大きな迷惑をかけた。それは良翔の強大な力が我が村に向けられれば、非常にまずいからだ。逆にその力が我が村を守る為に使われるのなら、これほど力強い事はない。村長との謁見については私から話してみよう。時は余り無いと私も感じている。直ぐにでも話をつけに行く。そこで、森で良翔が知り得た情報を私に提供してくれ。それも調査報告として村長に伝えなければならない」

サラはそう言い終え、良翔から、良翔が知り得た情報を聞く。

アースワイバーンの数を聞いた時は、驚き、小刻みに震えていたが、シッカリと意識を保ち、頷いていた。

「分かった。情報提供感謝する」

良翔は頷き応える。

「いや、大した事じゃ無い。サラにも無理を言ってすまない。だが、是非ともエルフの協力を仰ぎたい。宜しく頼む」

すると、サラはニコリと微笑み、頷く。

サラと再び会う日時を、明日の昼に決め、その時にエルフの村長への謁見の承諾の有無を確認する事になった。

サラは良翔に背を向け、森の東へ向け走り去っていく。

日が少し傾き、時刻はもうすぐ16時頃だ。

もうじきノアとも合流する。

良翔も、集合場所の方へ向き、再び空を飛び、移動を開始する。

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