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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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「サラ、大丈夫か?」

良翔に声を掛けられ、サラは我に返る。

顔を良翔に向け、迫る。

「良翔!あれは!あれは、何なのだ!お前があれを放った途端、周囲にあったモンスターどもの気配が軒並み居なくなってしまったぞ!ひょっとして…、あれで、全て駆逐したのか…?」

良翔は笑顔で頷く。

「ああ、その通りだよ。それにしてもサラは凄いな。モンスターの気配が分かるのかい?俺にはちっともだよ。魔法を使わなきゃ何も分からないな」

サラは、良翔の話を聞いているが、どこを見ているのか分からない。

視点の定まらない目線を草原のいずこかに向けたままだった。

「そんな事が可能なのか…」

サラが口を開いても、それしか発しなかった。

良翔はサラに戻ってきてもらう為、残ったファウンドウルフの事を教える。

「既に気付いているかも知れないけど、この先にファウンドウルフ達が数匹いる。どうやらさっきの魔法で撃ち漏らしちゃったみたいなんだ。すまないが、代わりに討伐してくれないかな。俺はさっきのでスッカリ疲れてしまってさ」

良翔は疲れたフリをし、腰を地べたに下ろす。

実際は良翔は疲れてなどいなかった。

自分の魔力を消費した訳では無く、全て周囲の魔素を集めて行っているのだから、当然の事だった。

だが、今はサラに活躍の場を与えないと、また、恩返しが出来なかったと騒ぎかねない。それに、これからアースワイバーンというより強力な魔物達と戦ってもらわねばならないのだ。

是非とも、サラのアーチャーとしての腕前を見ておきたいのもある。


良翔の疲れた様子を見て、サラは意識を戻し

「分かった、安心しろ良翔!先程は油断して、近距離まで詰め寄られてしまって恥ずかしい所を見せたが、あれは本来の私の戦闘領域ではない。ここからが私の本領の見せ所だ!よく見ておいてくれ!」

そう言うと、サラは敵に向かって真っ直ぐ走り出す。

走りながら、弓を片手に握り、もう片方に矢を数本握る。

良翔も、サラの戦闘の様子を見守る為、再び宙に浮き、少しずつ前に進みながら、サラとファウンドウルフを視界に収める。

そして、油断しない様に、予めに光の矢をファウンドウルフの数だけ、周りに用意しておく。

手を出すつもりはないが、サラが危なくなったら助ける為の予防策だ。


サラはそのまま走り続け、ファウンドウルフ達の手前300メートル程で止まる。

そこで、弓を構え、ファウンドウルフ達を狙う。

良翔は、その様子を見て、そんな遠くから当たるのだろうかと、疑問に思う。

流石に遠すぎる様に見える。

だが、サラが構えると、何故か当たる気がする。

何故だろう、と思った良翔はサラを鑑定する。

すると、サラの構えた矢から、一筋の魔力線がファウンドウルフに繋がっており、矢には遠くまで飛ぶ様に風の魔力が付与されていた。

サラは矢に対して付与魔法が使える様だ。


サラは一矢目を放つと、その矢が敵に届く前に、次々と他のファウンドウルフ達に放って行く。

その動きは淀みが無く、一度も止まる事なく、流れる様に行われていく。

全部で6匹ほど居た、ファウンドウルフ達はたちまち屍と化し、地面に横たわり、やがて姿を消していく。

この世界の生き物全てがそうかは分からないが、モンスターに限っては、死ぬと自然に消滅し、大気の魔素となっている様だった。

まさにこの世界は魔素で出来ているという表れのような現象だ。

そして、ファウンドウルフの屍の場所にはドロップアイテムが出現する。


それを見て、良翔は思い出した。

ファウンドウルフの討伐の証拠として、ドロップアイテムを集めなければならないのだった。

後でそれをノアと見せ合わなければならない。

良翔は一変に大量のファウンドウルフを倒したはいいが、肝心の討伐した証拠を至る所にばら撒いてしまったのだ。

「どうやって集めるか…」

良翔は呟き、途方にくれる。


するとサラが倒したファウンドウルフの戦利品、つまりファウンドウルフの牙を、その場に立ったまま、引き寄せたのだ。

サラは、自分の前に勝手に集まった戦利品を袋に詰めていく。

良翔は、それを見て、すぐにサラのそばに降りる。

良翔に気づいたサラは、笑顔で話し掛けてくる。

「どうだ?良翔のさっきの魔法ほどではないが、矢も捨てたもんじゃないだろう?」

良翔は素直に頷き

「ああ、驚いたよ。あんな遠くから、百発百中なんて信じられないよ。サラの魔法は矢との相性が一番良いんだね」

「ああ、その通りだよ、良翔。そして、あの信じられん魔法を放つだけあるな。私の技の正体をすぐに見破ってしまうとはな」

「俺は人の魔力の流れを見る事が出来るからね。ところで、さっきやった、ファウンドウルフの牙が勝手に自分の所に飛んで来るのってどうやってやったのか、教えてくれないか?」

すると、サラはキョトンとする。

「なんだ、良翔。お前“コレクト”の魔法を知らないのか?こんな初級魔法、早ければ子供でも使えるものだぞ。あんなすごい魔法を放てるのに、これは使えないのか。つくづく面白い奴だな、良翔は」

そう言うと、ケラケラとサラは笑う。

そして、丁寧に教えてくれる。

「これは、物体に宿る魔力を自分の魔力と繋げて、其の物を自分の魔力で覆うんだ。そして物体を覆った魔力を利用して、宙に浮かせて、繋がった魔力線を導線にして、物体を運んでくる。そんな魔法だよ。理屈的には何でも運べるはずなんだが、魔力線を繋げられないと、其の物に魔力を伝えるのは難しいんだ。だから、魔力を殆ど帯びていないもの、例えば、ただの岩だったりなんかだな。やはり魔力を持った物、つまりモンスターのドロップアイテムを集めるのに多く使われる。因みに、自分よりも強力な魔力を持ったアイテムなどは動かせない。そちらの魔力の方が強いから、反発されて、言うことを聞かないんだ」

なるほどと良翔は思う。

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