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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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昼食を食べ終え、良翔とノアは次のクエストであるファウンドウルフの討伐に向かう。

クエストへ向かう道中、クエストの詳細をノアに確認したところ、森の南にある、村からタリスへ向かう街道に、頻繁にファウンドウルフが出没する様になった為、数を減らして欲しいとのこと、だった。

とりあえずは10匹以上狩れば、クエストはクリアとなるが、実際はどれほどの数なのか。

良翔には、10匹程度でこのクエストが無くなるとは思えない。

恐らくいっぺんに、ファウンドウルフを冒険者に狩ってもらい、タリスまでの道の安全を確保してもらいたいのだろうが、いっぺんに討伐されても、支払える報酬を用意するのが村にとっては出来ないという事なのだろう。

だから、10匹ずつという、設定なのだ。

そう思いつく、良翔はノアに相談する。

「ノア、あのさ…。今回のこのクエストなんだけど、俺としては少なくとも50匹以上狩りたいんだ…。いや、たくさん倒して早く経験値を稼ぎたいとかそういう事ではないんだけど、村の人の事を思うとさ。なるべく多く狩ってあげた方がいいと思うんだ。報酬は当初の10匹狩った報酬のままでね。せっかくノアが俺の為に取ってくれたクエストだけど、そうしてもいいかな?」

すると、ノアは意外な顔をする。

『あれ?私は100匹以上狩るつもりだったけど、良翔が50匹って言うならそれでも良いけど…』

少しの沈黙が流れ、良翔は確認する。

「100匹以上…?」

ノアはなんの不思議でもない、と言いたげな顔で、良翔に応える。

『ええ、良翔が村の為に10匹より多く狩ろうって言うのは想像してたから、私的には100匹ぐらい倒せば、結構減るんじゃないかなって思っただけよ?私的には別に50匹でも、数が減る分には全然問題ないわ。それに探す手間も半分で済むし』

ノアの意外な答えに、良翔は一瞬黙るが、さすがはノアだな、と思い直す。

「いや、ノアの言う通り、100匹以上狩ろう。村の人の安全と安心を得るのが、このクエストの目的だからね。ノア、そうしたら競争でどうだい?どちらが多く倒せるかを競うんだ」

すると、ノアはニヤリと笑い

『あら、良翔、私が誰かお忘れ?私はあなたのナビゲーターであり、イメージ創成スキルの使用者でもあるのよ?あなたよりもずっと効率よく、たくさん倒す方法を私は良翔よりも知っているわ。それでも勝負するのかしら?』

良翔もニヤリと笑い

「ああ、もちろんやるとも。勝負はしてみなきゃ分からないからね。結果は2時間後にこの辺りに集合で、互いに倒したファウンドウルフの戦利品を数えて、どちらが多く倒したか確認しよう」

『ええ、それでいいわ!』

そして、2人で、頷きあうと

『ヨーイ…、どん!!』

ノアは大きな声でそう言うと、凄まじいスピードで飛んでいき、あっという間に姿が見えなくなった。

良翔と今まで飛んでいた時よりも、倍くらい早い。

ノアの底力は知れないな…、と素直に感嘆する良翔だった。

そして、良翔も続いて、その場を飛び去る。


まずはファウンドウルフを見つけなければならない。

周囲に魔力の鑑定を行う。

すると、早速反応がある。

さほど遠くない。

複数の反応が一箇所に密集している。

良翔はその集団がファウンドウルフかを確認する為に、そちらへ向かう。


やがて集団の上に来ると、そこにはファウンドウルフが、1人の冒険者を囲み、テンポよく攻撃を繰り出していた。

冒険者は多勢に無勢だが、決して臆する事なく、また、ひるむ事なく、攻撃を晒しては、一太刀を浴びせていく。

だが、浅い。

恐らく弓使いなのだろう。

背中に背負った白金の弓が、攻撃をかわす度に陽の光を反射するのが見える。

そして、近接戦の武器が小型のナイフしか無いらしく、致命的なダメージを与えられずにいた。

あの冒険者が同じクエストを受けているのかもしれない為、良翔は迂闊に手を出せない。

だが、徐々に追い込まれていく、その冒険者を放って、どこかに行く事は良翔には出来なかった。

良翔は、いつでも攻撃出来るよう、右手をその戦闘へ向け、ジッと成り行きを見守る。


やがて、勝敗が決した。

冒険者が足を取られ、膝をついてしまったのだ。

ファウンドウルフはここぞとばかりに、牙を剥き出しにし、動作の大きい隙だらけの格好で一斉に冒険者に向かって駆け出す。

良翔はそのタイミングを見逃さず、ファウンドウルフに向けた掌を光らせる。

良翔の手から一瞬の閃光が放たれたと思うと同時に、光の雨がファウンドウルフ目掛け放たれのだ。

次の瞬間、ファウンドウルフ達はほぼ同時に後ろに吹き飛び、その身を焼かれ、崩れ落ちていった。

光の雨はファウンドウルフに直撃すると、そのまま貫通し、大地には着弾せず、大地スレスレを飛行し、また、上空へと消えていった。

良翔は、ファウンドウルフに当たった後に、地面に着弾して、冒険者が爆発の巻き添えを食わない様に、光線を良翔の意のままに動く様に加工しておいたのだった。


冒険者は、観念し、覚悟を決めたのだろう。

膝をついた直後に、顔を両腕で守る様に、構えていたが、一向に届かないファウンドウルフの牙に、不思議に思い、恐る恐る顔を上げた。

しかし、目の前には、先程まで自分目掛けて走って来ていたファウンドウルフ達が居ない。

冒険者は目を疑うかの様に、急いで辺りを見回す。

すると上から声がする。

「大丈夫だったか?余計なお世話かもしれなかったが、危険だと思ったので手を出してしまった。すまない」


冒険者は、ハッと顔を上げ、空から徐々に降りてくる良翔を驚きの目で見つめる。


だが、すぐに我に返り、警戒した眼差しで良翔を睨みつける。

そして、黙ったまま、良翔が着地するまで言葉を何も発しない。


「怪我などはしなかったか?一応、貴方には当たらない様に工夫したつもりだったんだが…、火傷とかしていないか?」

やがて、冒険者は口を開く。

「お前が…、私を助けてくれたのか…?」

良翔は、ん?と顔を返し、冒険者の顔をちゃんと見る。

そこで、良翔は目を見張る。

冒険者は黄金色の髪を編み込み、後ろで一つにまとめ、髪と同じ黄金色の目をした、整った顔立ちをした女性だった。

そして、一際目を引くのは、天に向かってピンと尖った耳が髪の間から出ているのだ。

そこにはエルフが立っていた。

良翔はつい見入ってしまった事に気付き、慌てて返事をする。

「ああ、たまたま上を通ったら、ここでの戦闘を見つけたものだったからね。それより、火傷などはしていないか?正直、先程の魔法は、初めての試みだったから、怪我をさせて無いか心配なんだが…」

すると、エルフは警戒していた視線を緩め、軽くふぅ、と息を吐き、安心したのか、崩れる様に腰を下ろして、座ってしまった。

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