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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
46/163

1-46

そして、良翔は宿泊場所を聞き忘れた事を思い出す。

ついでなので、思念の指輪の試す事にした。


良翔は、心の中で、

「バンダン。バンダン聞こえるか?」

すると、少ししたのち、先程の声が聞こえる。

「おう、良翔。もうお困りか?それともウチで働く気になったか?」

良翔は、ふっ、と笑う。

となりにいるノアは良翔とバンダンが何を話しているか非常に気になるらしく、聞こえるはずもない、聞き耳を一生懸命立てている。

そのせいか、非常にノアの顔が近い。

もう少しでノアの吐息がかかるぐらいの距離だ。

そんなノアの様子を見て、良翔は苦笑いするが、バンダンとの会話に意識を戻す。

「いや、問題は何もないが、この思念の指輪の動作確認と、ついでなので、どこか宿を知らないかと思ってね。宿については、多少値が張っても良いから、シッカリとした宿が良いんだ。壁が薄くて、隣の音がダダ漏れだとか、宿の者が頻繁に訪ねて来るなどは避けたい。そんな宿をどこか知らないか?」

少し、沈黙があり、バンダンが答える。

「そうだな、それなら、『柳亭[ヤナギテイ]』なんかはどうだ?あそこは、その辺の宿よりは圧倒的に高いが、その分上客だけ集まるからな。必然的に馬鹿騒ぎする様な輩は集まりずらい。それに、その宿は客の要望を第一に考えているらしくてな、例えば、1日に10回食事をするから、個室に持って来いとか、中に籠りたいから、1週間絶対に訪ねて来るなとか、無茶苦茶だと思われがちな要望であっても極力守る。当然、出来ないことは除いてな。それから、一回の予約で宿泊出来るのは最大1週間までだ。延長して宿泊する場合は、一度受付へ行き、延長の手続きをしなくてはならない。まぁ、こんな感じだ」


さすがバンダンだと良翔は思う。

きっと今の口ぶりからすると、バンダン自身が宿泊した事は無いのだろう。

まぁ、同じ待ち内に住んでいるのだから、当たり前な気もするが、泊まったことのない宿の事を良く知っているのは、純粋に凄い。

つまり、それはバンダンが優秀な情報屋だという事でもある。

「良く知っているな、バンダン。さすが情報屋だな。話を聞く限り、その宿が俺たちの要望に合ってそうだな。すまないが場所を教えてくれるか?」

「ああ、良いだろう。その前に、1つ言い忘れたが、俺は情報屋だ。情報を売って生計をを立てている。この意味わかるな?今回は特別サービスにしといてやる。だが、次からは情報の価値相応の費用がかかるが構わないな?」

「ああ、分かっている。都度情報を聞く前に、費用を教えてくれると助かる」

案外あっさり良翔が、飲み込んだ為か、少し沈黙が流れる。

「お前はやはり、良い判断をしているな、良翔。話が早くて助かる」

「そうかな、普通だと思うんだがな?今回はお言葉に甘えて情報料タダで宿の場所を教えてもらう事にするよ」

すると、顔は見えないが、バンダンが笑っているのが分かる。

「ああ、タダで教えてやるとも!ウチの店を出たら、真っ直ぐ城が見える方へ向かえ。噴水のある広場に出たら、左に曲がって真っ直ぐ歩いて行くと、右側に柳亭が見えるはずだ。木製の吊るし看板が見えるから、直ぐ分かるだろう。いいか?無料の情報はここまでだぞ?ここから、先は俺の独り言だ。お前は聞くなよ?」

良翔は思わず笑う。

「宿で俺に紹介されたって言うと良い事があるんだよなぁ。まぁ、誰も聞いてないし、どうでも良い独り言だかな!」

そう言い終えると、バンダンは思念の指輪の通信を切った。

本当にいい奴だな、と良翔は思う。


ノアは相変わらず、聞き耳を立てている。

バンダンとの会話を終えた事はノアには分からない。

しばらく、良翔はノアを見つめる。

ノアは真剣に聞き耳をまだ立てている。

すると良翔と目が合う。

ノアは小声で、

『どう?宿の場所分かった?』

と聞いて来る。

良翔はニコリと笑い、ノアを見つめる。

ノアは良翔にしばし、見つめられ、次第に顔を赤らめていく。

そのうち、真っ赤な顔をしながら、ハッと気付いた顔をする。

『良翔、ひょっとして、バンダンとの会話終わってない!?』

すると、良翔は堪えきれず、くすくす笑い出す。

ノアは、良翔ひどーいー!っと顔を真っ赤にしたまま、両手で顔を覆う。

『もう!なんの話をしてるのか分からないし、そりゃぁ、気になるわよ!なのに良翔ったら…!!』

と、突然ノアが、ん?と何かに気づく。

すると

『うふふ。でもね…、そんな良翔には、こーやって…、仕返し、しちゃんうんだからね!』

ノアはニヤリと笑うと、相変わらず顔が近かったのを利用して、突然、更にそのまま顔を近づけて来て、良翔の首の後ろに両手を回す。

良翔は突然の事に、驚き、固まる。

ノアの鼻が、良翔の鼻にくっつきそうな程近い。

ノアは笑顔を良翔に向けたまま、良翔の目を見つめる。

更にノアの両手が良翔の頭を少し下に下げさせると、ノアは突然良翔の頬にキスをする。


ノアのほんのり赤く艶のある唇が、良翔の頬に優しく触れ、ノアの息遣いや、唇の柔らかさをシッカリと伝える。

その瞬間良翔は鳥肌が立つのを感じる。

やがてノアの柔らかい唇が、離れて行き、良翔の顔の前まで戻って来ると、

「うふふ。良翔。私をいじめると、こんな仕返しが返ってくるのよ?お気をつけあそばせ♪」

ノアは意地悪な笑顔をする。

だが、良翔は完全に思考がショートし、ノアに対し反応出来ない。

立ちすくんだまま、呆然としている。

そして、恐る恐る、キスをされた頬に手を触れる。

ノアは、それを見て満足気な顔をし、両手を良翔から離す。

そして、クルリと後ろを向き、両手を後ろで組み、顔だけこちらに向ける。

「さあ、良翔行くわよ?こっちで良いのかしら?」

良翔はそう言われ、やっと思考を開始する。

途端に、自分の体がとても熱くなっているのを感じる。

良翔は顔を真っ赤にしていたのだ。

ノアは、そんな良翔を見て、クスクス笑いながら、歩き出す。

ノアに完全にしてやられた形だ。


良翔は、恥ずかしさを誤魔化す為に、頬をぽりぽりかき、直ぐ、ノアの後を追って歩き出す。

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