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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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「色々とすまない」

良翔は荷物を肩にかけ直し、バンダンに声をかける。

「ああ、こちらこそな。…っと、おっと。大事な事を聞き忘れちまったな。お前達の名前をまだ聞いてなかったな」

そう言われ、良翔はそうだった、と思い出す。

「ああ、そうだった。名乗りもせず申し訳ない。俺は良翔だ。こっちはノアだ。以後宜しく頼む、バンダンさん」

すると、バンダンは鼻頭を少しかき、口を開く。

「おう、良翔とノアだな。宜しく頼むぜ?それと、バンダンさんは、よしてくれ。俺は堅苦しいのは嫌いでな。バンダンで構わん。俺の事を呼ぶ時はバンダンだ。さん、は不要だぞ?いいな?」

良翔はクスリと笑い

「ああ、こちらもその方が助かるよ、バンダン」

うむ、とバンダンは腕を組みながら頷く。


「じゃぁ、そろそろ行くよ、バンダン。次に恐らく来れるのは、今受けているクエストが終わってからだな。鑑定はその時になるが、それまで待てるか?」

すると、頷こうとしたバンダンが、突然、お?っと何かを思い出した顔をする。


すると、ちょっと待て、と奥に走って行き、同じく何かを持って走って戻ってくる。

「別れがけに悪いが、コイツを2つ鑑定してくれ」

そう言われ、良翔はバンダンの大きな掌に乗った2つのリングを見る。

恐らく指輪だろう。


良翔の代わりに、ノアが前に出て、指輪に意識を集中させて、見つめる、

少しして、ノアが鑑定結果を口にする。

『意思を繋げる指輪の様ね。この2つは、互いに魔力を繋げあっているわ。それのおかげて、恐らく念話の様なものが可能になる筈よ』

するとバンダンは、やはりな、と呟き、2つのうちの1つを右手に持ち、説明をする。

「今、ノアが鑑定した様に、これは思念の指輪で間違い無さそうだ。この間、偶然引退するというBランク冒険者から、ひょんな流れで一式買い取ってな。その中に紛れ込んでいたものだ。Bランク冒険者が持っていたくらいだ、ひょっとして、そうじゃないかと思っていたが確証が持てなかったのだ」

言葉を一度切り、その指輪を1つ良翔に渡す。

良翔は指輪を受け取り、?、と顔をバンダンに向ける。

「これを1つお前に預ける。肌身離さずつけとけよ?これがあれば、俺が古の湖に関する情報を手に入れたら、お前に直ぐに連絡してやる。指輪は暫く預けておくから、良翔も何か必要になった情報や道具があれば連絡して来い。それと、鑑定は今回の騒動が解決してからで良い。先ずはお前らにちゃんと原因を突き止めてもらって、ギルドにさっさと解決してもらわんと、こちらも商売あがったりだからな。うちは冒険者があって成り立つ商売だからな。こちらも他人事ではないのだ」

バンダンが協力的でとても助かると、良翔は心底思うのだった。

この指輪があれば、情報を得る為に足繁く通わなくても、得たい情報が手に入るのだ。

まさに、願ってもないアイテムだった。

「分かった。こちらとしてもとても助かる話だ。有り難く使わせてもらうよ」

すると、バンダンはドヤ顔をし、良翔に応じる。

「ああ、任せておけ。それにお前らは、あの戦姫と言われるカシナ嬢が認めた人材だ。余程優秀なのだろう。そんなお前らと繋がっておく事はウチにとっても、きっと大きなメリットになる筈だ。期待を裏切るなよ、良翔?」

そう言い、ニヤリとバンダンは笑う。

「ああ、努力するよ」

良翔もニッと笑い返す。


そのまま、良翔とノアはカウンター越しのバンダンに見送られながら、店を出る。


店を出て、大通りを元来た方へ戻る様に歩く。

良翔は歩きがてら、バンダンに渡された指輪を見る。

バンダンの掌に乗っていた時はえらく小さな指輪に見えたが、こうしてちゃんと見ると、指輪の穴のサイズは大きく、人差し指指を通しても、あまりにもぶかぶかだった。


所が、人差し指の根元辺りまで指輪を通した時、良翔の人差し指のサイズにぴったり合う様に、指輪は勝手に小さくなった。

まるで、初めから良翔が身につけていたかの様に、全く違和感がなく、指に収まる。

逆に、指輪を外そうと、片側の手で指輪を摘むと、また、指輪は勝手に大きくなり、なんの抵抗もなく外せる。

これも魔力を宿した指輪だからこそ、出来る事なのだろう。

良翔はそう思いながら、指輪を見つめる。


とりあえずは、指輪をそのままつけておく事にした。

直ぐにでも、情報が入るかもしれないし、付けていても特に支障が無いからだ。


良翔の指輪を羨ましそうに見ていたノアが、突然ハッと、気付き、口を開く。

『良翔とペアリングなんて…。やるわね、バンダン。男だからと油断したわ…。そうね…、そういう場合もありえるのね』

いやいや、なんの話だ、という、誰とは言えぬ空気が流れるのを良翔は感じる。


「ペアリングはさておき、これで、外に居ても、街の中の様子が分かるわけだ。外で活動している間に、街で異変があれば、バンダンがこれを通して教えてくれるだろう。いい、知り合いを作れたようだね。買い物に来て正解だったな」

ノアは頷き

『ペアリングについては後で追求する事にして、とにかく情報源を手に入れたのは大きいはね。今はこの街と、この街周辺の情報に限られるけど、それでも、この付近で何かを行おうとする際には、とても役立つ筈よ』


ノアの話を聞き、まずは、ペアリングの事を追求するんだ、と良翔は感想を持つ。

いやいや、それはどうでも良い、と直ぐに考え直す。

良翔とノアは、非常に有用なものを手に入れた、と共通の認識を持っているらしい。

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