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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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すると店主はさほど残念でもなかったのか、おどけた表情を作りながら、だよな、と呟く。

「まぁ、そうだろうとは思ったぜ。とりあえず、この国には鑑定出来る者は少ないんだ。お前らの能力はかなり重宝される。そこでだ!」

店主は一呼吸置き、

「お前らを見越して頼みたい。時折、この店に顔を出してくれ。お前らに鑑定してもらいたいものが、沢山あるんだ。魔力で編み込まれた衣服だけじゃねえ、能力不明な盾やら剣やら、防具まで、ここには集まってくるんだ。だから、そいつらを鑑定して欲しい。もちろん報酬は払うぜ。それにだ、その条件を飲んでくれるなら、今回の代金を無料にしてやる。そいつらは買えばまとめて、5万ゴールドはくだらないだろう。どうだ?悪い話ではないだろう?」

良翔とノアは再び顔を見合わせる。

ノアは良翔に従う、という目をする。

良翔は頷き店主を見る。


「ああ、その条件を飲むよ」

すると、店主は再び、がはは、と笑うとバンバン良翔の肩を叩く。


「よし!物分かりが良く、かつ判断が適切だ!」

そう、言うと麻で出来た袋を用意してくれる。

良翔が元々着ていた服を入れる袋を用意してくれたのだ。

ついでに良翔はガマ口の財布を購入し、鞄に衣服と一緒に入れる。

買い物を終え、良翔が袋を肩に担ぐと同時に、店主が声を掛けてくる。

「そういやあ、自己紹介がまだだったな。俺はバンダンだ。この衣服屋の店主をしている。そして、本来なら初見の者には絶対に教えないんだが、この店の売り上げに貢献して貰う訳だし、お前達の貴重なスキルも見せて貰ったからな、俺のもう1つの仕事も教えといてやる」

そう言うと、バンダンは、手招きして、別の部屋に良翔達を通す。


その部屋へ入ると、部屋一面を大きなカーテンで真っ暗に覆い、小さなポスト受けの様な物が壁に沿って、3つ程付いている。

ポスト受けは、赤、青、緑の色に別れている。

この部屋だけは、木で出来ている為か、外の物音がよく聞こえる。

そして、丁度、誰かがこの部屋の外を通った、と思ったと同時に、緑のポスト受けから、折られた紙が落ちて来た。

バンダンは、その紙を拾い上げ、その部屋に唯一置かれたテーブルの上に広げて置く。

「東の地で異変あり」

良翔は紙を読み上げ、ハッとする。

そして、バンダンの方を見やる。

バンダンは、またか…、と呟く。

「こんな感じに情報を集めている。つまりは情報屋だ。この紙の様に、情報提供者は手にした情報を紙に書き込み、俺とだけ分かるサインを記載して、このポストへ投函する仕組みになっている。今回の場合だとSGからの情報提供だな」

そう言われ、良翔はもう一度紙に目をやる。

確かに、紙の右下にSGのサインがある。

バンダンは話を続ける。


「俺はその情報の重要度に合わせ、週に一度奴等に情報料を支払う。因みに、赤のポストがモンスターに関する情報で、その隣の青のポストが街に関する情報、最後の緑のポストが、複合的な情報だったり、曖昧な情報だったりだ。だが、今回の場合だと、実は既に同様の情報が10件以上来ているからな、あまり情報としては鮮度がない。つまり、さほど価値がないって事だ」

まぁ、そんな感じだ、と言いたげな顔をし、バンダンは付け足す。

「きっとお前達の役に立つ情報も揃えられるだろうよ。何かあれば、鑑定のついでに依頼していくと良い。次の来店までに揃えられる情報は集めておいてやる。おっと、念の為だが、俺が情報屋だって事は伏せといてくれよな」

そう言い、バンダンはニカっと笑う。


良翔は真剣な眼差しで、口を開く。

「その…、今の情報なんだけど…。東の異変の情報って他にもあるのか?」

するとバンダンは少し眉を上げ、難しい顔をする。

「今のところ、似た様な情報ばかりだが…」

そこでバンダンは口をつぐむ。

「だが?」

良翔が話を促す。

「…ああ。不確かな情報ではあるが、東の古の湖近くの森で、ローブをまとった赤い目の男の目撃情報がある」


良翔は、頭の中に今の情報を記憶させる様に呟く。

「赤い目のローブの男…」

そこで、バンダンは釘をさす。

「ああ、だが、定かではないぞ?持ってくる情報が結構ガセだったりする事が多い情報提供者からのネタだ。話半分くらいに捉えておいた方が良いだろう」

そして、バンダンは良翔の顔を見る。

「なんだお前ら、東の古の湖に何か訳でもあるのか?」

良翔はそう言われ、少し迷ったが、情報屋と自称するバンダンを信じる事にし、良翔が依頼されたクエストの話をする。


話を聞き終えたバンダンは、腕を組み少し考える。

「つまり、今の街の異変はその男と古の湖に関連があるかもしれない訳だ…。なるほどな…。よし、分かった。他にも情報があればお前達に流してやる」

バンダンは街の事や、今の状況を独自の情報で把握しているらしく、決して、スクープが手に入ったと喜んでいる様子は無かった。

むしろ、この街の危機を人一倍感じているのかもしれない。

その為か、良翔達に情報を提供する事にした様だ。

「ああ、すまない。恩にきる」

するとバンダンは、ニカと笑い

「なに、気にするな。これで大事なお得意様が、新たに出来たってもんだしな!」

するとガハハハと笑い、部屋を出て、店内へ戻っていく。

良翔とノアもそれに続き、店内へと戻る。

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