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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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すると、先程とは明らかに雰囲気の異なる事が分かる、衣服が陳列されていた。


良翔はその中の一着を手に取り、実際に感触を確かめる。

先程と明らかに肌触りが異なる。

そしてなによりも、表の衣服と同じ様な繊維に見えるのだが、持った瞬間の衣服の重さを感じさせない。

しかし、確かな強度を持っていると感じさせる程の力強さを感じるのだ。

そのくせ、肌触りは一般的な感覚とよく似ていて、ゴワツキや硬さはなく、着ていても違和感を感じないであろう、滑らかさだった。


「…凄いな」

思わず良翔は呟く。

すると店主は、そうだろ?、と得意げな表情をする。

ノアも、良翔の隣に来て、良翔が触っている服に触れる。

『そうそう、こんな感じ。悪くなさそうね』

またしても、店主が、だろ?といった顔をする。

ノアも気に入ったらしく、他の服を物色する。

良翔も何となく見ていたが、正直どれが良いかなんて分からなかった。

すると、物色を終えたノアが、何着かの上着とズボンを手に掛け、おまけに片側の手には靴まで何足か持って良翔の元に戻ってくる。

『はい、良翔。これを着てみて』

と選んだ衣服や靴を渡し、試着室らしき小部屋を指差す。

「あ、ああ」

良翔は戸惑いつつも、ノアに言われた通り、渡された服と靴を持ち、試着室へと向かう。

試着室の中に入り、ノアに渡された、ズボンと上着に着替える。

頃合いを見計らってノアが声を掛けてくる。

『どう、良翔?サイズや着心地は問題なさそう?』

「…ああ、丁度いい感じだ」

そう言いながら、良翔は試着室の扉を開ける。

するとノアは、良翔を頭から足先まで眺め、ふんふん、と納得した様に見ている。

すると、何故か店主も覗き込んできた。

「お!兄ちゃん案外似合ってるじゃねえか。さっきより、よっぽど強そうな冒険者に見えるぜ?」

そう言われ、良翔は鏡に向き直って確認してみる。

白をベースにした、少し丈が長めの、緩いVの字の形で開いた襟元のシャツと、無地の黒い細めのズボン。

シャツの上は、同じく丈が長めの、しっかりとした厚みのある、黒い上着だった。

上着には赤いステッチが縫い目に施され、黒の中にちょっとした印象を与えていた。

モノトーンの組み合わせだが、ノアが持って来た、こちらもやはり黒を貴重とした、シッカリとした靴と良くバランスが取れていた。

そして、首から下げた冒険者証が映え、よく合う。

申し分ない、と良翔は思う。

それに、何よりも良翔が驚くのは、その見た目に対し、全くと言っていいほど重さを感じず、試着しながら鑑定していくと、どれにも何かしらの効果が付与されているのだ。


「これで全く問題ないよ、ノア。デザインも落ち着くし、気に入ったよ。それにしても、この服はすごいね。全く重さを感じないし、防寒、防熱、ダメージ軽減は全てに付与されてるしね。靴に至ってはスピード上昇まで付いてる。なるほどね、衣服もこうやって魔力を与えた繊維で作り上げれば、色んな効果を付けれるんだね」

すると、ノアはにっこり微笑み、頷く。

『ええ、ちゃんとそれも確認しながら集めたからね♪機能としては、まぁまぁ、問題ないはずよ』


話を聞いていた店主は、最初は笑顔のまま、うんうんと腕を組みながら良翔の話を聞いて頷いていたが、付与されている内容について話出したあたりから、急に真剣な眼差しを良翔へ向けだした。


良翔の感想が終わった所で、店主が口を開く。

「お前達…。ただ者じゃないとは思ったが、まさか…、この衣類達に何の効果が付与されているのか、俺の説明が無くても分かるのか?」

良翔は、店主の問い掛けに対し、笑顔で答える。

「ああ、俺とノアは鑑定するスキルを持っているからな。触らなくても調べられるよ」


すると、店主は顔に片手をやり、天を向いて、大笑いを始めた。

「ぐわはははは!コイツはいい!では、コイツはどうだ?!」

店主は良翔に向き直ると、店主が腰に下げていた、ゴツい装飾が施されている、大きめのナイフを取り出し、良翔に渡す。

鑑定しろ、との事らしい。


持った時には、その大きさに似合わない軽さに驚きはしたが、迷わず良翔は、店主に言われた通りに、ナイフを鑑定する。


鑑定が終わり、良翔はナイフを店主へ返す。

「これはアダマンタイトで出来たナイフだな。見た目とは違い、ただのナイフだけで無く、魔力を帯びてるし、切れ味が増す効果も付与されてる」

うんうんと店主は頷く。

そこに付け足す様に、ノアが口を挟む。

『ついでに、炎の属性もあるわね。恐らくこの魔力量なら火炎球、つまりファイヤーボール10発ぐらいなら打てるかしらね。恐らく一定の量までは魔素を貯める事が出来るのね。使えばまた、段々とたまる仕組みかしら』


店主はニッコリとする。

笑った顔から犬歯が剥き出しになる。

愛嬌は良いのだが、やはり、笑わない方が接客に向いてる、と良翔は心の中で思う。


「完璧に正解だ。お前らの鑑定は衣服だけでなく、武器や防具にも出来るみたいだな。恐らくアイテムもいけるのだろう。ただの冒険者にしておくにはもったいないな。どうだ、冒険者なんて危険な仕事辞めて、ここで働かないか?給料も弾むぜ?」

店主はニヤリと顔を良翔達に向ける。


良翔とノアは顔を見合わせて、思わずクスリとお互いに笑う。

『そうね、冒険者に飽きたら考える事にするわ』

ノアが笑顔で答える。

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