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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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1-41

そこに、眼鏡の女性は、クイと眼鏡を上げ直し、ノアに言う。

「ノア様、あなたは優秀なお方ですね。良翔様の為に、1番効率よく進む道を良くお考えの様です。今回は、結果的にカシナ様のクエストにとっても都合の良い選択とはなりましたが、それは偶然ではなく、ノア様が最善の選択を選ばれているからこそ、必然的に成し得たもの、と言っても過言ではないと、私は考えます」

突然、そう言われ、ノアは驚き固まる。

全く予期していなかった言葉を、眼鏡の女性にかけられ、いつも余裕のあるノアだったが、この時ばかりは、思わず素が出る。

「あ、ありがとう…」

すこし下を向き、頬を赤らめている。

真面目に照れているのだ。


しかし、直ぐに顔を上げ、眼鏡の女性を真っ直ぐ見つめ

「あなたこそ、とても優秀な秘書ね。失礼だけど、名前を伺っても良いかしら?」

すると、眼鏡の女性は、表情を変えずに、また、クイと眼鏡をなおす。

「申し遅れまして大変失礼致しました。私はギルド連盟タリス支部のギルドマスター、カシナ様の秘書兼護衛をしております、ニーナと申します。良翔様、ノア様、改めまして、お見知り置きを。カシナ様へ何か御座いましたら、私まで遠慮なくお声がけ頂きますようお願い申し上げます」

ニーナは、そういうと、丁寧なお辞儀をする。

それはそれは、ご丁寧に、と思わず良翔もつられ、お辞儀をする。

ノアだけは、後ろで手を組んだまま、いつもとは違う優しい笑顔をニーナに向けていた。

「綺麗な名前ね、ニーナ。ぜひこちらからも、これから宜しくお願いするわ」

顔を上げたニーナに対し、ノアはそう声をかける。

すると、ニーナは先程までとは少し違い、小さく微笑み返すと、はい、と頷く。


このやり取りによって、ノアとニーナは何かの繋がりを得たようだった。


「それじゃぁ、失礼します、ニーナさん。カシナさんにも宜しくお伝え下さい」

そう言い、良翔とノアは部屋を出る。

「はい、かしこまりました。どうかお気を付けて…」

ニーナは、良翔とノアがドアを閉じ、見えなくなるまで綺麗なお辞儀をしていた。


良翔とノアは、ギルドマスターの部屋を後にし、元来た通路を戻る。

カウンターのあるホールに戻りがてら、良翔はノアに聞く。

「ノア、とりあえず、クエストの件はすごく助かったよ。ノアはやっぱりすごいな」

すると、ノアはふふ、と笑う。


さて、とノアは伸びをしながら歩く。

『それじゃぁ、良翔、初冒険に行く為の準備をしなきゃね!先ずは服と装備品ね。あ、後小銭入れもね♪その後は基地とする宿を決めなきゃね』

良翔は、ん?、と顔をする。

「待って、ノア。装備品とかは分かるけど、俺達には宿は要らないんじゃない?泊まらないしさ」

すると、ノアは人差し指を立て、チッチッチ、と左右に振る。

『良翔、毎日通勤する時に、どこから来るつもりなの?毎日、夜に門を出て、朝に帰ってきたら、日中もクエストで外に出て、夜もクエストに外に出てるみたいじゃない?だから、日中クエストをこなし、家に帰るときは、宿に戻ってきて、部屋から良翔の世界へ帰れば良いのよ。そして、朝は宿の部屋に出勤すれば良いの。そしたら、何も怪しまれずに済むわ』

「そっか、なるほど。ノアの言う通りだ。出なければ、睡眠を惜しんで、寝ずにクエストをこなす狂人冒険者になってしまうな。…となると、宿は大事だな。泊まるわけじゃ無いけど、そう頻繁に部屋に来られても困るしね。ある程度そういった融通がきくところじゃないと。そういえば…、土日はどうすれば良いかな?流石に家族もあるし、土日もこちらに来る訳にはいかないよなぁ…」

するとノアは簡単よ、と説明する。

『土日だけ、泊まり込みで毎週クエストする冒険者になれば良いのよ。毎週末は遠出のクエストをするんだとか言ってね』

良翔は頷く。

「ああ、それが良いね。それにどの冒険者がいつ出て行って、いつ帰ってきたって、細かくチェックする人も居ないだろうし、そんな感じできっと大丈夫だと思う」

ノアもうんうんと頷く。


そうこう、話しているうちに、ギルドホールへ戻ってきた。

相変わらず、カウンターは長蛇の列となっている。

ミレナがカウンターに見えたが、忙しそうに冒険者の相手をしている。

仕事の邪魔をしては悪いな、と良翔は思い、ミレナには悪いが声を掛けずにギルドを出る。

『さて、まずは買い物よ!』

ノアは張り切って、歩き出す。

良翔もそれに続き歩き出す。

離れていく建物を、一度振り返り目をやる。

新たに冒険者風の者が中に入っていくのが見える。

良翔は、向き直り、少し空いたノアとの距離を走って追いつく。

日は高く登り、昼を少し回った頃だろう。

雲はなく、空一面、気持ちの良い晴れ模様だった。

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