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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
33/163

1-33

ガザルは一瞬固まる。

しかし、思い出した様に、すぐに同じ言葉を唱える。

しかし、変化は無い。

ガザルは焦り出し、何度も何度も同じ言葉を発し、右手をケルベロスに向けるが、何も起きない。

「………まさか…」


ガザルはようやく気付いたらしい。

このモンスター、ケルベロスは、良翔が想像した通り、とうに、ガザル達の制御下から離れていた。


一方ケルベロスは、周囲の魔法陣が消え、元々ほとんど影響はなかったが、嫌な感じのものが自分の周りから消えた事で、体が完全に自由になった事を把握した様子だった。


首と連動して体をブルルと震わせ、フーっと荒い鼻息を吐く。

その間、ガザルは右手を上げたまま、固まっている。

額には大量の汗をかいている。


そんな様子を見ていた良翔は、小さくため息を吐き、ガザルに声をかける。

「試験は継続で良いよな?」

ガザルは視線だけ良翔に向けるが、同じ姿勢のまま、また、すぐにケルベロスへ視線を戻す。

良翔に構っていられないらしい。

良翔は、ガザルから返事が返ってこない事を予想しながらも続ける。

「試験もそうだが、コイツをこのまま街中に野放しにする訳にもいかない。今からコイツを倒すが問題ないな?」

「…」

ガザルはもはや、視線すら寄越さない。

良翔は、ガザルからの了承などどうでも良くなり、目の前のケルベロスを片づける事にした。


ケルベロスは、改めて良翔を鋭い視線で見つめ、荒い鼻息を吐いている。

どうやらケルベロスも臨戦態勢に入った様だ。

両者はしばしお互いを睨み合っていたが、ガザルが何か言葉を発しようとした瞬間に、互いに駆け出す。

ケルベロスは、地面に亀裂を作る程の強い力で大地を踏みしめ、良翔に向かって凄まじい速さで掛けてくる。

良翔も同時に、魔素を利用し、肉体強化した脚で地面を蹴り、ケルベロスへ凄まじい速さで近づく。

互いの速さが相まって、一瞬でお互いが目の前に来る。

すかさず、ケルベロスは風を切りながら、鋭い前脚を良翔に繰り出す。

良翔がそれを身をかがめて軽くかわすと、今度は三首の一つの頭が間髪入れず、噛み付こうとして来る。

良翔はその噛み付こうとしている頭を、顎下から拳で上に向けて叩き込む。


パァァァンンン!


良翔の拳か、ケルベロスの頭の一つに当たると、その頭は風船が割れるかの如く、弾け飛ぶ。

細かい肉塊を辺りに飛び散らせるが、良翔は気にせず、そのままの勢いで、くるりと回りながらしゃがみ込み、その勢いのまま、ケルベロスの腹下から上に向けて、拳を一気に振り上げる。


ドゥォゴッ!


大きく鈍い音が響き、良翔の拳が当たった所を基点に、くの字にケルベロスが体を折り曲げ、そのまま上空へ凄まじいスピードで吹き飛ばされる。

ガハァッ

ケルベロスの頭の一つが血を吐く。

血を吐きながら、上へ飛んでいく。


良翔は上を見上げながら、上空から散った血が頬に落ちるのも気にせず、右手の掌を上に向け、魔素を収縮させていく。

良翔の掌に光の玉が出来ると、直ぐに大きな湾曲したレンズの様な姿に変わり、途端に、そのレンズから、光の柱が、ケルベロスに向けて放たれる。


ッボン!


上空の方でケルベロスが消滅する音がする。

光の柱は一瞬でケルベロスを完全に消し去ったのだ。

そして、今の一撃で、周囲の微弱な結界はもちろんのこと、良翔が作り出した結界をも突き破っていた。


暫く沈黙が訪れる。

ノアと良翔を除く誰もが、その光景に固まっていた。

ノアは良翔の後ろの方で

『良翔、カッコイイー!』

などと全く空気を読まずにそんな事を言っている。


良翔は、ケルベロスが消滅した事を確認すると、ガザルの方を向く。

だが、ガザルは、一向に良翔の方を向かず、ただ上を見上げたまま固まっている。

良く見れば小さく震えている様だった。

しかしそれはガザルだけではない。

他の術者達も同様に、上空を見上げたまま動かない。


良翔は暫く様子を見て待っていたが、いい加減痺れを切らし、声をかける。

「あのさ…、試験てどうなったのかな?」

すると、良翔の声に気付き、ガザルと術者達の視線が一斉に集まる。


ガザルは唾をゴクリと飲み、やっとの思いで口を動かす。

「…お前は…、いったい何者なんだ…」

どうやら、試験の合否を直ぐには言ってはくれないらしい。

良翔はため息を吐いた。


良翔が呆れていると、突然、闘技場の観客席らしきところの上の方から声がする。

「当然、合格だ!」


その場に居た全員が、声の方を向く。

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