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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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早速、受け取った硬貨の中から、金貨1枚を支払い、冒険者登録の為の費用を支払う。

お釣りの銀貨4枚を受け取り、冒険者登録の為の説明を受ける。

手渡された書類に記入をする。

名前や年齢、使える技や得意とする攻撃などだ。

良翔はスキルを使用し、日本語を書き込んでいるつもりが、この世界の言葉で記入されていく用紙を見て、なんだか不思議な感覚になる。

ノアも記入し終わり、受付嬢に提出した。

先程の件もあり、怪しまれない程度にボカシて記入した用紙を受け取り、受付嬢は真剣に読む。

ノアも良翔も、魔法使いという事で統一し、ノアに関しては、先程の男達への気配も、威圧というスキルのせいにして記載した。

受付嬢は、ノアの用紙を見て、なるほど、という顔をし、どうやら納得したらしく、用紙を持ってカウンター裏へ行く。

少しの後、戻ってきた受付嬢は冒険者制度やランクについて良翔達に説明する。

やはり、良翔の予想通り、ランクはFから始まり、Eランク、Dランクと上がっていくらしい。

そして最高ランクにはこの世界に10人といないSランクがあり、その上に現在は存在しないSSランクがある事を説明してくれた。

そして、クエストの受注についても続けて説明してくれる。

やはり、良翔の睨んだ通り、クエストには自分のランクにより、受注出来るものが決まる。

ギルドも馬鹿ではない。

望めば望んだ分だけ、やらせるなんて事はせず、危険具合や死亡率を下げて、冒険者の力量に沿ったクエストを受注させる仕組みになっていた。

さもなければランク制の意味がなくなってしまうからだ。

それに本来、クエストとなる様な事案は、極力速やかに解決せねばならないのだ。

当然クエストの成功率を高めなければ意味が無い。

そこでランク制を設け、冒険者の力量に合わせて適材適所のクエストを達成させていく。

高度な戦闘技術や力を兼ね備えた冒険者には、より高額の報酬と共に、高ランクのクエストを発行していく。

ただし、複数ランクの者で構成するパーティーなどの場合はその限りでは無いらしい。

規定の人数はあるが、高ランクでもその規定人数の該当ランク冒険者が揃えば、他の者が規定よりもランクが低くても受け付けてくれるのだ。


一通りの説明の後、説明を受けた旨、冒険者として登録した時点から、いかなる理由で死亡した場合であってもギルドは責任を負わないといった旨の書類に、同意のサインをする。

これで、書類手続きは終了だ。

続いて、このまま入会試験となる様だ。



良翔とノアは言われるがまま、建物の裏手へと抜ける通路を通される。

裏手へと抜けると、それなりに広い空き地があった。

そこには試験官らしき人物が、立っている。

試験官の前まで行き、立ち止まると、受付嬢と試験官が情報の引き継ぎを行い、引き継ぎが済むと、受付嬢はそそくさと屋内へ戻って行った。

試験官はジロリと良翔とノアを見る。

一瞬ノアの容姿に気を取られ、口が緩みそうになるのを、良翔とノアは見逃さない。


頬を赤らめ、咳払いを一つしたのちに、何事も無かったかの様に試験官は口を開く。

「冒険者になりたいと言っているのはお前らで間違いないか?」

良翔とノアは臆する事なく返事をする。

「ああ」

『ええ』

すると、試験官は自分の後ろを振り向き、さっそく最初の課題を出す。

「面倒な話は抜きだ。お前らは魔法使いと聞いている。ならば簡単だ。先ずは、どの魔法を使ってもいい、あの的に当てるんだ。だが、ただ当てても意味がない。そんなものは自分の庭でやれ。極力破壊を目指して的に当てるんだ。いいな、モンスターを倒せなければ、意味がないのだ。そして、それは即ち、お前らの死を意味する」

雑な話し方だが、適切だと、良翔は思う。

そう、冒険者は遊びではないのだ。

油断すれば大怪我もするし、下手すれば死ぬ事もある。

であれば、試験だからと言って、ただ的に当てて喜ぶわけはない。

的をモンスターと見立て、破壊せねばならない。

良翔とノアは黙って頷く。

「よし、まずは、お前からだ」

試験官は良翔を指差し、試験官の場所まで来るように促される。

そして、試験官の側に立つと、訝しげな顔をされる。

「待て。良く見れば、お前ら魔法使いの癖に、杖を持っておらんではないか。そんな事で、魔法など打てるものか。忘れたなら待っててやるから直ぐに取りに行ってこい」

良翔はきょとんとしたが、直ぐに返事をする。

「必要ない。見れば分かるはずさ」

すると試験官は、ギロリと良翔を睨み、

「自惚れるなよ?杖を使わずに魔法を放てた所で、せいぜい的に当てるのが精一杯だろうが。破壊なんて、とてもできゃしないだろうが」

と威圧してくる。

しかし、良翔も引いてはいられない。

「待ってくれ。済まないが杖なしの状態で、一度やらせてくれないか。当然それを試験の結果として判断してもらって良い。その覚悟はある」

試験官は鼻を鳴らし、腕を組み

「…いいだろう。だが、後悔するなよ。これで試験に落ちたとて、明日また杖を持って挑戦するにも、再度試験料がかかるからな」

試験官はそれ以上は言わず、勝手にやれと場所をあける。

良翔は前に進み、身構える。


良翔はまだ、この世界の常識を知らない。

恐らくノアも良翔と同じ時間しかこの世界に滞在していないのだから、同じだろう。

そして、この試験で良翔が放つ魔法が、この世界の常識ではどうなのかを知りたかった。

良翔の居た世界では、1人の人間が、あれだけの破壊を生み出すのはありえない。つまり規格外の凄まじい力、ということになる。

しかし、この世界では、既に魔法が存在している。

良翔にとっては凄まじい規格外の力だとしても、この世界では通用しない程度の弱々しい威力なのかもしれない。

それを良翔は把握したかった。

自分で勝手にチートだなんて思っていた力が、実際はショボかったなんて、笑えない。

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