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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
22/163

1-22

良翔はなるべく分かりやすく、先程の考えを芽衣に説明する。

いかに素晴らしい力であり、そして同時にとても危険な力である事を、なるべく芽衣が不安にならない様に気を使いながら説明する。


説明を聞き終わり、芽衣は真剣な表情をする。

良翔の話は理解できた。

だが、その力がそんなに危険な力を秘めているとは思えない様子だった。

そこで、良翔はある実験をする。

「口で説明するよりも、目で見た方が分かりやすいと思うよ」

ノアに、自分が言われた時と同じ様に、実際に見た方が早い、と促す。

芽衣は素直に従い、良翔に言われた通り、汚れたら捨てても構わなそうな、陶器の平皿を用意し、その中心に、丸めたティッシュを置く。

準備が出来たのを確認した良翔は、芽衣に実験の手順を伝える。

「その、ティッシュを先ずは、真上に浮かせてみて」

芽衣は頷き、ティッシュをフワリと、平皿から30センチ程離れた空中に浮かせる。

これは先程まで芽衣が今日一日やってきた事なので驚く事はない。

「次に、それが燃える様にイメージしてみて。ティッシュが燃えて、灰になるイメージだね」

芽衣は、少し悩んだが、良翔に言われた通りにイメージする。

ボッ

っと、突然ティッシュが燃え、灰に姿を変え、ヒラヒラと形を崩しながら平皿の上に落ちていく。

「えっ!!」

芽衣は驚いた顔をする。

そして、良翔の顔を見る。

「ね?言った通りになったでしょ?芽衣は、その力は物を動かすだけって思い込んでたかもしれないけど、実際には、その物自体に、自分で動けと指示を出したんだよ。つまり、芽衣の力は、その物に、どんな力を働かせろ、って指示を出して、そしてその通りにさせる事が出来る力なんだ。だから、今のティッシュみたいに、灰になるまで燃えろって指示を伝えれば、ティッシュはその身を炎で燃やして灰にしてしまうんだよ。当然ティッシュはその力には抗えない」

芽衣は真剣に聞いている。

「だからね、もし、その力を人間に使ったら…。ね?素敵な力だけど、その分とても危険な力でもあるんだよ」

芽衣は暫く真剣な顔で黙っていたが、おずおずと口を開く。

「良翔…。どうしよう…。私、この力がとても怖くなっちゃった…。この力って、消せるの…かな?」

それを、聞き良翔は、少し考える。

早く芽衣を安心させてやりたい。

焦る気持ちを、抑え、冷静に考える。

そして、一つの結論に思い至った。


「本当は順を追って、色々と説明すべきなんだけど、先ずはその力をどうにかしたいよね?」

「…うん」

芽衣はなんだか泣き出してしまいそうだ。

良翔は芽衣を慰める様に、優しい声色で話を続ける。

「先ずは、さっき芽衣が食事にかけてた、あの粉なんだけどね、あれが全ての始まりなんだ。あの粉を食べるとね、芽衣の様な不思議な力を身に付ける事が出来るんだ。実は俺も、芽衣とは違う、不思議な力を手にしているんだ。これについては、また、後で説明するね」

一旦話を切る。

「そうなんだ、あの粉が原因なんだ…。そして、やっぱり良翔も不思議な力を手にしたんだね…」

芽衣は真剣な顔つきで良翔を見ながら話す。

「あぁ、そうなんだ。だから、芽衣が不安な気持ちも良く分かるよ。それで、思い当たるのが、この不思議な力をチャンと制御出来ない可能性があるから、不安にさせるんだと思うんだ。凄い力だからね。不安になって当然だと思うよ。なら、答えは簡単で、制御できる様になれば良いんだ。つまり、その制御する力も作り出してしまえば良いんだ。もちろん、その力で、他へ害をもたらす可能性があるものなら、そんな力持たないって選択肢もある。だけど。反面、使い方によっては、とても役に立つ、素晴らしい力でもあるんだ。なら、正しく制御できるなら前者を取りたい。つまり、その力を残す方が得だと言うことさ」

良翔はまず結論を芽衣に伝える。

そこで、芽衣が疑問を口にする。

「でもさ、今問題になってるのって、その制御をどうしようかって事じゃない?」

「うん。その通りだよ。だから、制御する力を作り出してやれば良いんだよ」

「それは、分かるけど、どうやって…?」

芽衣は少し焦れったいのか、良翔に早く答えをと言いたげに聞き返してくる。


すると、良翔はニコリと笑う。

「芽衣のその力はどうやって手にしたんだっけ?そして、さっき俺たちが食べた夕飯には何が入ってた?」

「私のこの力は…、あの美味しい粉が作り出したって良翔は言ってた…。そして…、今日の夕飯は…!さっき食べた夕飯にも使ってた!…つまり…」

芽衣の目が見開く。

良翔は再び微笑む。

「そう、正解だよ、芽衣。あの粉をまた摂取してるんだ。つまり、それは新たな力を得る為の準備は出来てるって事さ」

それを聞いた途端、そうか、と勢い良く立ち上がる。

そして、一つ間を置いて、何事も無かったの様に座り直す。


しばしの間を置き、咳払いを一つした芽衣が聞いてくる。

「それって…、どうやってやるの?」

良翔は少し間を置き、心の中でノアに話し掛ける。

「ノア、聞いていた思うけど、芽衣の力を制御する力、ってどんなイメージをすれば良いのかなぁ。イメージするにも、シチュエーションやパターンが多過ぎてね。一番の目的は芽衣が後悔しないようになる事なんだけどさ」

『そうねぇ。まぁ、目的がはっきりしてればそんなにシチュエーションを思い浮かべる必要はないわ。いくつかのシチュエーションイメージから、どんな事で後悔するのか、おおよそのパターンが見えるもの。でも、そんな面倒な事をしないで、私みたいなナビゲーターを作り出せばいいんじゃないかな?』

なるほど、と良翔は思う。

ナビゲーターさえいれば、その辺のコントロールを自動でやってもらえる。

芽衣が何をしたら後悔するかは日々のコミュニケーションだけでなく、常時感情の動向をリンク、つまり監視してもらえれば多くのパターンが手に入るだろう。

意識せずとも、コントロールしてくれる。

まさにナビゲーターはうってつけだった。

その結論に辿り着いた良翔は、芽衣にその旨を伝える。

芽衣は初めは戸惑っていたが、意を決して、あらゆる力を自動で制御してくれる、ナビゲーターをイメージする。

目的は、芽衣が後悔しない事、ただそれをゴールにイメージをするのだ。

もちろん、芽衣が都度指示を出さなくても、事象として実現させるもの、させないものなどの判断の殆どが自動で行われる様にする。

ただ、稀に判断が迷われる場合には、必要に応じて芽衣に確認が入る様にする。

良翔は、そんなナビゲーター像を、芽衣にイメージさせる。


良翔は暫く芽衣の様子を伺っていた。

目を閉じて、真剣にイメージしている様だった。


そんな芽衣がふと目を開ける。

イメージが終わったらしい。

これの創成は、時間がかかる事を良翔は、実体験で知っていた。

なので、今すぐに何かの変化は芽衣は感じる事はないだろう。

と思ったら、

「頭の中で声がした!」

と芽衣が突然言い出した。

「え?もう?」

思わず良翔は聞き返してしまう。


するとノアは周囲を確認して、やはり声が頭の中から聞こえてきたのだと確認する様に、頭の中に意識を働かせている顔をする。

「うん、間違い無いと思う。確か…物体操作イメージナビゲーターです、って言ってたと思う」

そうか、と良翔は思う。


良翔のナビゲーターは、良翔がイメージするあらゆる能力や事象に対して働くナビゲーターであるのに対し、芽衣のナビゲーターは、今現在、芽衣が取得している能力、すなわち物体操作の能力に対してのみ働くナビゲーターなのだ。

いわゆる良翔のナビゲーターの機能限定版だ。

その為、そのスキルの創成にあまり時間を必要としなかったのだろう、と良翔は思い当たったのだ。

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