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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
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2-50

自宅に戻ってきた良翔は、ゲートをくぐってもなお、落ち込む雰囲気の芽衣や子供達に明るく声を掛ける。

 「無事に帰って来れて良かった!さぁ、未亜、奈々、着替えておいで!パパはお風呂沸かすよ!ママは今日みんなで取ったお魚を焼いてくれるからね」

良翔の掛け声に、皆気持ちを切り替えようと各々に散っていく。

 「芽衣、夕飯の準備宜しくね」

そう言い、良翔も風呂場へ向かう。

風呂を掃除し、湯を張る。

湯を張っている間、リビングの方から子供達の騒がしい声が聞こえる。


もちろん良翔は皆がなんとかいつもの生活に戻ろうと意識し、努力しているのを感じている。

 「……芽衣達には悪いことしたな……」

そう呟く良翔の独り言が、小さく浴室でこだまする。


風呂が沸き、子供達に声を掛けると、子供達はテレビに見入っていた。

そこで、良翔も子供達と一緒になって暫く無心でテレビを眺める。

暫く共に見ていたが、子供達は一向に風呂に入る気配がない。

仕方なく、良翔は子供達に声をかけてから、一番風呂をもらう事にする。


浴室に入ると頭や体をいつもより念入りに洗う。

今日のあの嫌な感覚を洗い流す様に身体中を擦る。

満足いくまで体を洗った良翔は、やっとのことで浴槽に浸かる。


お湯に体が浸かると、不思議と今日1日の疲れが、お湯に溶け出していく様に感じる。

体が今日初めての休息を迎えたかの様に、脱力されていく感じだ。


 「流石に疲れたな……」

良翔はそう呟きつつも、自分だけがリラックスしている事に少し罪悪感を感じる。

 「ノアや秋翔達は無事にあの街から脱出出来ただろうか……」

良翔はノア達の事が気になる。


そこに秋翔から通信が入る。

 「良翔、聞こえるか」

なんてタイムリーなんだ、と良翔は心の中で思う。

 「ああ、聞こえる。そっちは無事にジラトミールを抜け出せたかい?」

しかし、秋翔から沈黙が続く。

 「……どうした秋翔。何かあったのか?」

秋翔のただならぬ気配に、脱力した身体を力ませ、良翔が聞く。

暫くの沈黙の後、秋翔が重々しく口を開く。

 「実はな、あの後街に散ったエヴァ達を探したんだが……」

言葉を切った秋翔の続きを良翔は黙って待つ。

 「……ハザがあの男に襲われた」

良翔はザバァと勢い良く浴槽内で立ち上がる。

 「……まさか、ハザは!?」

 「いや、安心してくれ。酷い怪我を負わされてはいたが何とか無事だ。ギリギリ間に合ったよ」

 「……そうか……」

良翔はそう答え、再び浴槽に浸かる。

 「ああ、良翔がいない間にこんな事になってしまい、すまない。そこで、悪いんだが、後でハザの様子でも見に来てやってくれないか」

 「もちろん、そのつもりだ。こちらこそ非常時にその場に居れず、自分だけ家族と過ごしてしまってすまなかった」

すると、ふと小さく秋翔が笑う。

 「気にするな。もしも、俺が良翔と同じ立場なら、家族を優先させただろう。そこは俺も良翔も家族の安全が第一だと思っている事は分かっているさ」

 「そう言って貰えると助かる。結局今はジラトミールは出たのか?」

 「ああ、ハザの意識はまだ戻らないが、今は今夜に控え、アトスに戻って来ている」

 「そうか……。今夜のアースワイバーンの救出だが、俺とノアで行こうと思う。秋翔はフィーとエヴァと共にハザを守ってやってくれないか」

 「了解だ。良翔の方こそ、芽衣達は大丈夫なのか?酷く怯えていた様だったが、ケアは問題ないのか」

 「ああ、それについては皆意思を強く持っていてくれて助かってるよ。各々いつもの生活に戻ろうと努力してくれている」

 「そうか……、なら大丈夫そうだな。そうしたら、それまでは皆を休ませていて良いか?ハザも酷い被害にあってしまったが、皆もかなり疲れを感じている様だからな」

 「ああ、それはもちろんだ。因みに今夜だが、子供達が寝静まった後にそちらに向かおうと思う。そうだな、11時頃でどうかな」

 「分かった。その旨、ノアにも話しておく。じゃあ、また後でな」

 「ああ、よろしく頼むよ秋翔」

そう言い互いに通信を切る。

良翔は極力平静を意識して保っていたが、ハザが攻撃を受けたと聞き、腹わたは凄まじく煮えたぎっていた。

 「あいつだけは、許さない……」

良翔はそう心の奥底で誓い、風呂から上がる。


良翔が風呂から上がり、子供達が入れ違いで風呂に入っていく。

芽衣はキッチンで凄い量の夕飯を作っている。

良翔は驚き、芽衣に声をかける。

 「芽衣、そんなに作ってどうしたんだ。いくら未亜や奈々の気持ちが沈んでしまったからと言って……」

すると芽衣はニッコリ笑い、答える。

 「んーん、違うよ!これは私達だけじゃなく、今日会ったみんなの分!良翔、私ね……勘違いしてたの。私ね、てっきり良翔達は冒険者ごっこみたいな事をしてると思ったの。そりゃあ、戦うんだもの、多少の危険はあると思ってはいたわ。でもきっとすごく楽しい事をしてるんだって。だけど、今日実際に向こうに行って感じたわ。とても、“ごっこ”なんて空気じゃなかった。本当に命が掛かってるんだって……。私…、今まで良翔達のことをそう思っていた自分が恥ずかしくなっちゃって……。だから、こうやってみんなでお家でご飯食べて、ちゃんとみんなの仲間になりたい!!って思ったの!!だから、良翔、いいかな?みんなでご飯をここで食べても…?」

良翔は素直に感心して、芽衣をじっと見る。普通ならあんなに怖い思いをしたのなら、暫くは触れたくないと思えても致し方ない状況下で、ちゃんと良翔達のことを理解したいと言い出した芽衣に、良翔は素直にありがたいと思うのだった。

少しの間をおき、良翔は頷く。

 「ああ、もちろん構わないよ。なら、今からみんなの所に行ってきいて来るよ。みんなもつかれてるからね。一度意思を確認してくる」

するとノアの顔がパッと花咲く。

 「うん!もちろんいいよ!あ、でも無理強いはしないで大丈夫だからね!みんなが疲れてるのはよく理解出来るからね!」

 「分かった」

良翔は笑顔で答え、そのまま直ぐにリビングを後にする。

玄関に向かい、とびらに異世界転移ゲートを出現させて、くぐる。

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