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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
156/163

2-45

良翔があれこれ考えているうちに、気が付けば湖の直ぐそばまで来ていた。

いつの間にかイニジオを飛び越え、美しい水面から反射する眩しい光りに良翔はハッと我に返ったのだ。

 「すごーい!!ピカピカだ!!」

 「おっきなお魚さんが見える!!あ……、あれって大きな怪獣さん?」

未亜と奈々は上空から湖にいる不思議な生物達を見て、驚きと興奮を隠さない。

 「この世界は不思議な生き物がいっぱいいるねー?早速降りてみよー」

芽衣が子供達に促し、さっさと3人は湖のほとりに降りていく。

良翔とフィーも後を追いかける様に辺りへと降りる。


午後の風が優しく吹き、さわりと頬に触れる。

子供達と芽衣は水辺に近寄り、覗き込んだり、非常に透明度の高い水をすくって不思議そうに眺めたりしている。

良翔はそんな子供達を微笑ましく眺めつつ、先ほど手にしたフィーの力を把握する為に、1人その場を離れる事にする。

 「フィーすまないが、芽衣や子供達のことを頼んでもいいか?」

 「ええ、大丈夫よ」

 「すまない」

良翔はそう言い、1人森の中へと進んでいく。


暫く進み、森の開けた所に着くと、良翔は一度あぐらをかき、地面に腰をおろす。

そして、魔力で出来る事とフィーから得た力で出来る事の違いを考える。

魔力にも風属性の魔法があり、フィーから得た力と似た効果のものはあると想像は付く。

では、具体的な違いはなんなのか。

一つはっきりしていることは、魔力を持たない子供達も使えた事からして、フィーの力には魔力は必要としない。

試しに良翔は左手に魔力で小さな渦を起こす。

今度はもう片方の右手で、フィーの力による小さな渦を起こす。

そのままの状態で、良翔は魔力のみを色付けで視認出来る様、鑑定機能を付与させた眼鏡を物理的に具現化させる。

言うならば、魔力が色付きで見える眼鏡といったところか。

そして、その眼鏡越しに良翔の両手を見やると、見事に左手にはエメラルド色に輝く小さな渦が見える。

肩や右手の掌には渦は見えるが色が付いておらず、先程と同じ光景が目に入る。

次に、フィーの力による渦を視認出来る様にする為、マナに反応している周囲の魔素を魔力とは別の色に分けて視認出来る様に眼鏡を改変する。

試しに、もう一度眼鏡越しに両手を覗くと、左手には先程と同じエメラルド色の渦、右手には黄色い渦が確認出来る。

そこで良翔は二つの渦の違いに気付く。


出現させた小さな渦のサイズはどちらも同程度だが、左手に乗るエメラルド色の渦に対し、右手に乗る黄色い渦に集まる魔素量が、エメラルドの渦よりも倍以上集まっている。

つまり、これは同程度の規模であっても、マナで作られた技の方が遥かに強力である事を指し示しているということではないか。


良翔は近場にあった、拳大ほどの石に向かって、左手の渦を放つ。

石は渦に触れると、宙に舞い上がるが直ぐに効果を失って、また元の地面にゴトリと落ちる。

続いて、右手にある渦を同じ石に向けて再度放つ。

すると、石は先程の渦と同じように宙に舞い上がるが、なんと、その石を空中で粉々に粉砕してしまったのだ。

パラパラと地面に落ちるカケラ達を見つめながら、良翔は非常に強力で危険な力を得た事を認識する。

通常の戦闘などでは極力魔力で行い、やむを得ない場合のみ、マナの技、マナ術を使う事にしようと、良翔は心に決める。


続いて、魔法とマナ術の融合技について試す。

フィーから得た力は基本的に旋風などにしなければ目視は不可能だ。

良翔が着目したのはそこだ。

先ず筒状の小さなトルネードを魔力で作りその中を無数の小さな刃の様なマナ術の技を発生させる。

小さな刃はトルネードの中を縦横無尽に不規則に飛び回るものだ。

そのままトルネードを100メートル程先の大岩に向けて放つ。

するとトルネードは周囲の草や木を巻き込み、中に取り込んでは粉微塵に切り刻んで周囲に撒き散らしながら、目標の大岩まで真っ直ぐ飛んでいく。

トルネードが大岩に触れたと思った途端に、触れた端から先程の草木と同じ様に、粉々に岩を散らせながら、トルネードの形に沿った大穴を開けていく。

しかし、トルネードはそのままでは止まらなかった。

大岩にぶつかったがその威力を弱める事なく、遂には大岩を貫通し、さらにその先へ直進していこうとするのだ。

良翔は思わぬ威力に焦り、急いでトルネードの向きを真上に変更し、空高くへ送り出す。

トルネードは良翔の視界から見えなくなるまでずっとその威力を弱めずに突き進んでいく。

 「これはちょっと凶悪すぎるな……」

良翔は頭をかきながら、トルネードの行先を見つめていた。


先程から良翔が小さな旋風や、小さなトルネードなどで実験していたのは、その威力が分からなかったというのもあるが、実際マナ術を使用した際に、良翔の中のマナがどれくらい消費されてるか分からなかった為だ。

調子に乗って巨大な物を作り出し、良翔の中のマナを消費し切ってしまった場合どの様になってしまうのかも分からない。

良翔はまだ、マナの数値化が出来ていないのだ。


良翔は少し考えた結果、マナに影響を受ける周囲の魔素量を先程と同じ要領で鑑定できる様にする。

その魔素量から数値化し、それをマナ値として測定する。

良翔の前に表示された鑑定ウィンドウには、マナ値の項目が新たに追加され、そこには36550という数値が表示される。

恐らく、現在の良翔のマナ値の最大値は良翔のレベル×100倍といったところか。

先程の旋風などのマナ術で、約50程消費した計算になる。

 「コストパフォーマンスは良くも悪くもなくといったところか……」

そこで、良翔はふと思い出す。

先程のフィーとの戦闘のことだ。

実はフィーは、先程の戦闘の際には、マナ術は一切使用しなかった。

だが、これ程の威力を発生させるマナ術は、魔力で良翔に攻撃するよりも、遥かに良翔にダメージを負わせる事が容易だったのではないか。

なぜフィーはマナ術を使用しなかったのか。

確かに魔力によるダメージではなく、マナ術は、物理ダメージの様だが、その破壊力は魔力攻撃よりも遥かに高い。

あの時良翔は確かに、物理障壁や魔力障壁を展開していたが、フィーのマナ量ならその障壁を破壊する事も容易だった筈だ。

 「つまり、本気を出されずに、試されたって事か……」

良翔はフィーのあの戦闘の目的を悟り、掌の上で踊らされていた事を理解し、なんとも微妙な気分になる。

 「まあ、無事にその、試験に合格したのだから良しとするか……」

何とも腹落ち悪いが、そう自分に言い聞かせ、マナ術の事についての思考に戻る事にする。


マナ術と魔法の破壊力の違いは分かった。

またそのコスパについてもおおよそ把握した。

次は付与についてだ。

良翔は黒刀を出現し、早速マナ術による風の斬撃を付与してみる。

やはり魔力とマナの相性が良い為か、魔力から生成された黒刀に抵抗なく馴染み、刀身からはそよ風が生じている。

良翔は、先程と同じ様に100m程離れた大岩に向けて、黒刀を一振りする。

すると、目視不可能な斬撃が飛んでいったのだろう。

刀身が描いた孤に沿って、大岩をスパッと両断する。

ただの一振りで大岩を切る力。

しかも、魔力では出来ておらず、目視する事も叶わない。

刀の弱点である遠距離からの敵に対して非常に有効だろう。


正直これ程までの力を手にして、何を目指しているのかという疑問が浮かばない訳でもないが、少なくとも良翔が守りたいと思う存在をより多く守れる様になった事には変わりないという事で、浮かんでくる疑問を一蹴する。


 「さて、そろそろ戻るか……」

良翔は立ち上がり、芽衣達の元に戻る。

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