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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
151/163

2-40

良翔がより一層警戒していると、声の主の辺りに、その場の大気の魔素が急激に集まる。

すると、徐々に声の主は姿を顕現させていく。

良翔の唯ならない様子に芽衣が気付き走ってくる。

 「良翔!どうしたの!?」

 「…芽衣。下がっていてくれ…」

そして、良翔達の目の前に突如として、薄く羽が透けた全身緑色で覆われた声の主が姿を現す。

良翔は目を見開き、相手を見つめる。

良翔はその姿に見覚えがあるのだ。

 「……シルフィード」

良翔の呟きに、シルフィードと呼ばれた薄緑の肌の女性が驚きの表情をする。

 「あら……、あなた私の事知ってるの?」

良翔はゲームでその姿を見た事がある。

その存在は空気を自由自在にあやつり、時にはそよ風を、時には荒ぶる凶悪な嵐をも起こす。

風属性の大精霊、シルフィードだ。

 「ああ、知識ではな。本物に会うのは初めてだが」

ふうん、とシルフィードは興味深く良翔を眺める。

 「なら、私がどういう存在かも分かって?」

シルフィードは試す様に良翔に問い掛ける。

 「……風の大精霊だ」

良翔が答えると、シルフィードは満足そうな笑顔を向けてくる。

 「へえ、あなた良く知ってるわね……。私達精霊は、貴方達人間では姿を見ることも叶わない存在だし、こうして人前に具現化するのも、もう数百年以上前の事よ。どうやって貴方が私の存在を知り得たのかとても不思議だわ」

 「……」

良翔は沈黙し、答えない。

すると、シルフィードは諦めた様に、顔を未亜と奈々に向けて微笑む。

 「ま、いいわ。でも、貴方達は何故か私が見えていたのよね。どうやら私の声も聞こえるみたいだし、不思議ね。ついつい嬉しくなって出てきちゃったわ。ねぇ、私はただこの子達とお喋りしたいだけだから、その武装を解いてくれないかしら?」

良翔は警戒は解かないが、どうやら敵意が無いことも理解して、両手に施した武装を解除する。

すると、未亜と奈々が口を開く。

 「パパー、未亜と奈々ね、ビックリさせない様に静かにしてたんだけどね、この綺麗なお姉さんがお話ししたいってー。お話ししても良い?」

 「うんうん、このお姉さん、噛み付いたり、叩いたりして来ないよー?」

良翔は仕方なく2人に了承する。

 「……ああ、良いよ」

良翔は念の為、未亜と奈々の周囲にもう一重に魔力障壁を張る。

正直これで守られるかは分からない。

魔素から作り出した体を媒介にしているとはいえ、その大元の存在は魔素などでは出来ていないのだ。

魔力で作り上げた障壁がどこまで効果が有るのかは分からない。


 「あら、やっとお許しが出たわね?良かったわ。やっと貴方達と落ち着いてお話が出来るわね」

 「うん!お姉さん良かったね!」

 「お姉さん緑なの、何でー?」

シルフィードと未亜と奈々は楽しそうに話を始める。

暫くは、3人のやり取りを眺めていた良翔だったが、どうやらシルフィードは本当にただ単純にお喋りがしたかっただけみたいだった。

 「どうやら、悪い人じゃなさそうね?最初はビックリしたけど、とても綺麗で優しそうじゃない」

 「ああ、どうやら本当に話し相手が欲しかっただけみたいだな」

芽衣はまだ負に落ちない良翔の顔を横で眺めながら、ふふ、と笑う。

 「じゃあ、私も空を飛ぶ練習しなくちゃ!!あ!そうだ!シルフィードさんは精霊さんなんだから、その辺詳しく知ってるかも!?」

そう言うと、芽衣はシルフィードに駆け寄って、話に加わる。

シルフィードは話し相手が増えた事がうれしかったらしく、芽衣に丁寧に教えている。

芽衣はシルフィードの話を素直に聞き、頷き、試し、また、アドバイスを貰っている。


一方子供達も、自分達も空を飛びたいと、シルフィードに駄々をこねている。

そこで、面白い事が起こる。


 「シルフィードのお姉さん、私達も空飛びたいよー」

 「うんうん、飛びたい!やり方教えて!」

シルフィードはニコリと笑い、

 「ええ、もちろん良い………?………あら?…………あらあらあらあら?貴方達……、何か珍しい雰囲気だと思っていたら、魔力が全く無いじゃない。魔力が全くない人間なんて初めて見たわ……。なるほど………、貴方達は異世界の人間なのね?」

それには芽衣が答える。

 「ええ、私達は地球って所から来たのよ。だから、残念ながらこの世界の人間ではないわ」

 「あら、貴方はもっと不思議な事に、魔力が無いのに、魔法が使えてるじゃない……。どうゆう事かしら……」

それには、芽衣は、ふふ、と微笑み答える。

 「まずは名前を覚えてもらった方が良いみたいね。名前を覚えないと、ちゃんとお友達になれないじゃない?私は芽衣よ。こっちの子供達が、未亜、奈々よ。そして、向こうで膨れて座ってるのが、良翔よ。私達は家族なの。それで、シルフィードさんの質問だけど、私は空気中にある魔素を操る事が出来るの。だから、魔素を操って魔法を作り上げてるわ」

すると、シルフィードは、目をキョトンとさせて、暫く芽衣を眺めている。

芽衣はその間もニコニコ顔だ。

次第に、シルフィードの表情が崩れていき、大笑いが始まる。

 「あはははは。貴方達面白いわね!魔力がなくとも、周りの魔素を操って魔法を使うし、片や、魔力が全くなくとも私の事が見えたり、声が聞けたりする子供達もいるなんて!それに!!精霊に向かって、友達になろう、だなんてそんな事一度も経験した事ないわ!!うふふふふ。もちろん、私も貴方達と是非お友達になりたいわ!」

すると、それを聞いた未亜に奈々は大喜びだ。

 「わーい!!シルフィードのお姉さんとお友達になったー!」

 「おっ友達ー!!」

 「じゃあ、名前を考えてあげなきゃ!シルフィードどさんて、名前じゃないよね?」

芽衣の問いにシルフィードは驚きながらも頷く。

 「あら、私に名前をくれるの?確かにシルフィードというのは、風の精霊の呼び名よ」

それに、真っ先に答えたのは奈々だった。

 「じゃあ、奈々は、フィーさんが良い!」

周りが一斉に、フィー、と呟くと、皆がその音の余韻に浸り、頷く。

 「良いじゃない、奈々!どう?シルフィードさん。貴方の名前はフィーちゃんなんてどうかしら?」

 「うん、未亜も賛成ー!!」

思わぬ所から突然フィーという名前の提案を受けたシルフィードは、少しの沈黙の後、笑顔で奈々に微笑む。

 「……フィー……。風に合った良い名前だわ……。ありがとう、奈々ちゃん」

シルフィードが自分の名前を認めた途端、シルフィード、いやフィーの体が突然眩く光だす。

一同は驚き、目を瞑る。

良翔だけは、とっさに立ち上がり、身構える。

この光景は前にも見た事がある。

それは、ハザ達に力を与えて進化させた時と同じだ。

フィーは今、進化を開始する。

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