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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
15/163

1-15

ノアが先にお手本を見せる。

ノアが掌を広げ、岩に触れると、そこを中心に30センチ程の半円をくりぬいた様に、全てが砂と化し、地面へサラサラ落ちていく。

ノアは手を離し、さぁどうぞ、と良翔に場所を譲る。


良翔は、先ずは、物に触れて、何らかの作用をもたらす練習を始める。

どの様にイメージしたら良いか、しばし考える。

ノアに聞くのは、先ずは自分で考え、辿り着いた答えが失敗してからだ。

一つの結論を導き出し、早速良翔は試す。

すると、数秒程して、良翔の掌の周り30センチ程が円を描く様に砂と化し、良翔の足元へサラサラと落ちていく。

どうやら成功の様だ。

良翔が描いたイメージはこうだ。


岩に触れると、魔素を介入させ、良翔のイメージを伝わりやすくする。

魔素が岩の部分にシッカリと浸透していく。

良翔の掌が触れているところを中心に、半径30センチ程の円の範囲に魔素が行き渡るのを感じる。

そして、良翔の手に近いところから、徐々に円の外側へ向けて良翔の意思を魔素を介して伝えていく。

イメージする目的は、分解だ。

正確には、一つ一つの物質が強固に繋がっている、その接続面を断つイメージだ。

非常に細かな、小さい単位の物へとそれを働きかける事で、接続面から切り離された物質は、力を無くした様に、重力に従い下へ崩れていく。


真剣に様子を見ていたノアが、手を叩く。

『正解よ、良翔!』

「イメージが上手くいって良かったよ」

喜ぶのもつかの間、さぁ次行きましょ、とノアに促され、別の方法を試す。


続いては、内部からの破壊だ。

ノアは先程と同じ様に岩に近づくと、掌を前に掲げる。

だが岩には触れていない。

岩から少し離れた所で掌を向けているのだ。

その途端、良翔の視界の右端で岩が弾け飛ぶ。

弾けた箇所を見やると、先程と同じように、半径30センチ程の半円をくり抜いたように岩が無くなり、ぽっかりと穴が開いていた。

辺りには、大小様々だが、砕けたアダマンストーンの破片が転がっている。


なるほど、と良翔は思う。

するとノアが、やはり先程と同じ様に場所を空け、良翔の番よ、と促す。


良翔は岩の前に少し距離を空けて立つ。

ノアは爆発と言っていたが、爆発させる必要はきっと無いのだろう。

恐らく、爆発したかの様に、岩が飛び散れば良いのだろう。

良翔は先程の砂化のイメージから、岩を構成してる物質へ働きかける事で、岩に変化をもたらすというヒントを得ていた。

つまりはこれを応用すれば良いのだろう。

今度のイメージは暴走だ。


良翔は掌をかざし、掌の中心から魔素が一直線に伸び、岩のある一点に到達するイメージを行う。

線の様に細くなった魔素が岩に触れた所から、網の目を縫う様に、岩の中を潜っていき、目的の場所へ到達させる。

そこで後から、続けて魔素を流し込み続ける。

やがて、膨らんだ魔素が周囲の岩を飲み込み始め、一箇所に止まり切れなくなった魔素が急激に膨張する。

途端に魔素がランダムに弾け、強固な岩のつながりを割き、そのまま岩の外壁に向かって一気に吹き出す。

その吹き出しに沿って、繋がりを断たれた岩はランダムな大きさにバラけ、外壁の外に飛び出していく。

ガラガラガラガラ

と派手な音を立てながら、良翔のイメージした魔素を滞留させた辺りから、アダマンストーンが吹き出す。

どうやら、これも成功した様だ。


様子を見ていたノアも、納得した様に笑顔で頷く。

『優秀ね、良翔』

「お陰様で、上手くいったよ」

お礼を述べる良翔に対し、ノアは次の課題を出す。


続いては、軟化の練習だ。

先程、部分的に吹き飛ばした場所へ、ノアは歩いて近づき、おもむろに突出したアダマンストーンを、親指と人差し指で挟むと、ポキリと折った。

それはまるで乾いた小枝を折るかのごとく、軽く折れてしまう。

ノアは折れた突出物の折れた面を良翔に見せる。

少し、茶色く変色していた。

このアダマンストーンは漆黒のごとく黒色だが、その面は他とは色が異なっている。

ノアなりのヒントなんだろう。


するとノアは、良翔はその出てるヤツね、と別の突出物を指さす。


良翔は少し考える。

先程の砂化とは違う。

どうすれば良いのかイメージ構想を練る。

ノアが見せてきた、あの折れた根元の色は何だったのか…。

まるで別の物の様に見えた…。

そこまで考え、良翔は思いつく。

早速、ノアが指差した突出物を、親指と人差し指で摘まむ。


良翔は、ここから折れる、と突出物が折れることになる場所を決める。

そこに魔素を集める。

集まった魔素によって、特定の部位に良翔の意思が働く様になると、その部位へ魔素を混ぜていく。

イメージに求める目的は、変化だ。


魔素とアダマンストーンが混ざると、魔素をアダマンストーンとは異なる、その辺の岩に変化する様イメージする。

細かい粒子の単位で混ざり合う魔素とアダマンストーンは、やがて突出物の根元に茶色い線を作る。

良翔が先程、ここで折ろうと決めた部位だ。

線に力が伝わる様に、突出物を摘んだ指に力を入れる。

すると、先程のノアの時と同じ様に、ポキリと折れる。

その折れた箇所だけ、やはり他と違い、茶色くなっていた。


『成功ね。それにしても、大したものね。やはり良翔には、他とは違う才能があるわ』

良翔はノアに褒められ、少し照れる仕草をする。


『さて、次が最後ね。これはこの世界で生きて行く上で非常に大事な力よ。今度は見本は見せないわ。ううん。正確には見本を見せてしまうと、良翔がそのイメージに染まりやすくなってしまうの。今回の力は、良翔にとって一番自然な形で実現してもらう必要があるわ』

「分かったよ、ノア。最後の力の習得は、確か巨大な力で、このアダマンストーンを破壊する、だったね」

『その通りよ。そして…』

よっ、とノアは少し跳ね、アダマンストーンから5メートル程距離を取る。

ポンと跳ねたはずが、軽く数メートル跳躍するのだ。

身体の強化をイメージしたのだろう。

やはりノアは優秀だ。

そう思っていると

『良翔は私の後ろに下がってくれる?』

とノアに促される。

ノアに言われた通り、良翔もその場から軽くジャンプして、ノアの後ろに跳ねる。

魔素を脚部に集め、力の伝わりを飛躍的に高めたのだ。


ノアは後ろに良翔が来たことを確認すると、おもむろに拳を握る。

と、突然、ほっ、とノアが勢い良く拳を地面に叩きつける。

突然の事に良翔は驚く。


ゴガァァァァァン!!


ノアが拳が地面に触れた途端、凄まじい音と共に爆風が起こり、それと同時に地面が激しく揺れる。

大地を粉々に砕き、辺りに撒き散らし、巨大な噴煙を起こす。

呆気に取られる良翔をよそに、ノアは前を向いて立っている。

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