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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
149/163

2-38

翌朝、良翔が目を覚ますと、既に芽衣も子供達も起きていた。

時計を確認すると、7時を回っていた。

決して遅いわけでは無いが、ここ最近の起床時間に比べれば、長く寝ていた方だ。

 「昨日は確かに疲れたからな…」

良翔はポツリと呟き、暫くそのまま窓の外に目をやる。

天気は良い様だ。

流れる雲を暫く眺めていたが、やがて体を起こしベッドから滑り抜ける。


リビングへ向かうとコーヒーとトーストの焼ける良い匂いがしてくる。

リビングへ入ると、子供達が駆け寄って来る。

 「パパおはよー!」

 「パパお寝坊さん?」

良翔は笑顔で子供達に挨拶する。

 「未亜、奈々おはよう」

すると、キッチンからも芽衣が声を掛けてくる。

何やら嬉しそうだ。

 「おはよー良翔!今日はいい天気だよ!絶好のピクニック日和だー!!」

ん?

ピクニック?

そんな話、昨日してたか?

 「パパー、ピクニックー!」

 「パパの世界ー!!」

いや…、ちょっと待て…

まさか、ピクニックって…

 「め、芽衣さん?まさかピクニックって……」

 「ん?良翔やノアちゃんの行ってる世界にみんなで行くんだよ?あれ?昨日言わなかったっけ?」

良翔は盛大に焦る。

良翔がこんなに慌てるのは、中々見れないものだ。

 「待て待て待て待て…。芽衣そんな話ちっとも昨日してないぞ?それに異世界はここよりも圧倒的に危ないって芽衣に言ったよね?」

芽衣は首を傾げ

 「ん?だから、良翔が守ってくれるんでしょ?」

 「……」

 「……」

 「……いや、確かにそうだけど……、で、でもさ……」

良翔が何とか芽衣が考えを変えないかと頭の中をフルスピードで回転させているが、芽衣はそんな事はお構い無しに、一言で良翔の努力を終わらせる。

 「今日はみんなでパパの世界にピクニックしに行こー!!」

 「イェーイ!」

 「お弁当!お弁当!」

未亜と奈々も巻き込み、今更、行かないとは言えない空気を作り出す。

良翔は頭を項垂れる。

 「……分かったよ……」

芽衣は当然良翔がOKするものとして、既にお弁当を作っていた。

良翔の気持ちが切り替わるよりも早くせっせと子供達に出かける支度をさせている。

 「……芽衣には敵わないな…」

良翔の小さな呟きは、芽衣達に届くはずもなく、芽衣の掛け声で消される。

 「さあ、次はパパの番だー!!」

 「お着替え!!」

 「パパ早くー!」

芽衣達に一斉に背中を押され、良翔はまだ寝巻きだった服を半ば強制的に着替えさせられる。

残念ながら?良翔も準備を終える。


良翔は諦め、気持ちを切り替える事にする。

 「今日は特別だよ?良いかい、未亜、奈々。パパ達とこれから行くところは特別な場所なんだ。だから、知らない生き物や人が居ても声を上げたり、急に近づいたりしちゃいけないよ?彼等もビックリして、未亜や奈々の事を噛んだり叩いたりして来ちゃうかもしれないからね?だからそれはしないってパパと約束出来るかな?」

 「うん!出来るよー!!」

 「ビックリさせないように、そーっと、そーっと、ね!!」

良翔は笑顔で頷く。

念の為芽衣に視線をやり、良翔はぎょっとする。

この中で、何を言おう一番楽しみにしているのは芽衣だと言う事はその表情からもハッキリ分かる。

 「……芽衣も頼むよ?」

 「うん!任せてちょーだい!私はオ・ト・ナだならね♪」

良翔は盛大に溜息を吐く。

 「……不安しかない…」

良翔がそう溢すも、それを無視した芽衣はさっさと玄関に良翔をグイグイ押して行く。

 「さあ、良翔!レッツゴー!!頑張って良翔の世界への扉を開けましょー!!」

 「パパ、ゴーゴー!」

 「パパ頑張れー!」

良翔はなんだが段々可笑しくなってきた。

こんなにはしゃぐみんなを見るのはなんだが久々な気がしたのだ。

この際だ、目一杯楽しむ事にしようと思うのだった。

良翔は微笑みながら、扉に向けて右手をかざす。

すると、扉に昨晩作った異世界転移ゲートが扉一杯に出現する。

たちまち芽衣達から歓声が湧く。

 「良翔、凄い!!」

 「パパ魔法使いだ!!」

 「明るーい!!」

良翔は一旦、前に出て、芽衣達に振り返る。

 「これは、昨日初めて作った物なんだ。だから、ちゃんと成功してるか分からないから、最初にパパが少し中を見てみるから、少し待っててね」

3人は素直に頷く。

良翔は3人に微笑み、ゲートに向き合う。

良翔はそうっと異世界転移ゲートに手を通す。

特にいつものゲートと変わらぬ同じ感じであった事から、そっと顔を近づけ、中を覗き込む様にゲートに潜り込ませる。

良翔は眩しさから閉じた目をそっと開ける。

するとそこにはいつも通勤時に最初に出る草原が目に飛び込んで来る。

 「どうやらうまく行った様だな」

良翔はそう呟き、また顔をゲートから引き戻そうとした時、突然後ろから押される。

良翔は驚きながらも勢いに合わせて、体を全てゲートに通してしまう。

そして、続け様に未亜、奈々、芽衣と一斉に出て来る。

どうやら我慢しきれなかったらしい。

良翔は頭を少し掻き、呆れて3人を眺めている。

既にゲートは全員が通った事で、姿を消していた。

芽衣達は、わー、とか、えー、とか思い思いの感嘆の言葉を口にし、草原を眺めている。

 「まぁ、無事に通れたからいいか……」

良翔はさっさと割り切る事にした。

きっと今日1日はこんな事の繰り返しなのだ。

今からいちいち気を揉んでいたら、帰る頃には灰になってしまいそうだからだ。

ぼうっと景色を眺めている一同に対し、良翔は声を掛ける。

 「さぁ、行こっか」

3人は一斉に良翔に振り向き、満面の笑みで答える。

 「「「うん!!」」」


良翔達4人は元気よく、草原の中を歩き出す。

こちらの世界も快晴で、白い大きな入道雲が良翔達を出迎える様に佇んでいる。

良翔の休日出勤、6日目が始まった。

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