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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
147/163

2-36

 「よし……、では始めるか………」

良翔は呟き、シッカリと地を踏みしめ立つ。

そして、始点ゲート、つまり今は玄関の扉に向かって魔力を流し込む。

初めは慎重に、だが段々と量を増やしていく。

5分程経った頃だろうか、疲労感といった異常はまだ何も感じない。

良翔はチラリとステータスウインドに目をやり、驚く。

開始時からまだ、5分程とはいえ、その間ずっと魔力を流し込み続けているのだ。

流している魔力量が少量とはいえ、この減り方はおかしい、そんな数値が目に入ってくる。

魔力の消費値は、僅かに1減っただけだった。

良翔の魔力量は、気が付けば貯めに貯め、1200万を超えている。

しかし、異世界転移へのルートは甘く無い。この5分の間にゴールに近づいた気配は全くと言っていいほど感じることが出来ない。

良翔は思い切って魔力を3分の1迄消費する事にする。

数値にして400万の魔力量だ。

それを5分で出力するには、1分間に80万を出力しなくてはならない。

とてもじゃないが、先程までの出力ペースではまかなえない。

良翔は両手を扉に向け、一気に出力を上げる。

その間もステータスウインドウの数値を常に確認する。

側から見ても、良翔の両手から尋常ならざる魔力が一直線に扉に向かって出力されているのが分かる。

普段よりも倍の強度の防御壁からも細かに振動している音がする。

今この障壁内は凄まじい魔力が溢れている。

良翔は魔力障壁が壊れないか非常に不安だったが、急ぎもう一重加えてやると小刻みな振動がピタリと止まる。


扉に向かって膨大な魔力量を放ち始めて直ぐに、良翔は変化を感じ取る。

先程よりも、明らかにハイペースでゴールの魔力に向かって、良翔が放出した魔力が近づいているのが分かる。

みるみると近づいて行き………


そして、良翔の魔力はゴールに辿り着いた。


思ってみれば案外呆気ないものだった。

良翔はステータスウインドウを確認する。

魔力の消費量はおおよそ100万程。

100分の1の消費で済んでいるのであれば、大気にある魔素から作り出した場合は、約1億もの魔力を消費した計算だ。

そう考えれば、途方もない数値となる。

やはり、異世界への転移ゲートは並みの者では到達出来ない領域であるのにも納得だった。


それにしても、この破格の効率の良さは大いに助かる。

これが無ければ、良翔の目的は達成する事は出来なかっただろう。

そして、一度たどり着いて仕舞えば、次からはゲートを生成する魔力のみで良いのだ。

ゴール座標までの経路はこの転移ゲート魔法が覚えている。

良翔は1人ニコリと笑い、ある一つの達成感を感じる。


 「良翔何してるの?」

突然背後から声がする。

良翔は急いで振り向くと、そこに芽衣が首を傾げて立っていた。

良翔はニコリと芽衣に笑いかける。

 「詳しい話は夕飯を食べながらするよ」

すると芽衣は直ぐに切り替えたらしく、ニッコリと笑い、頷く。

 「分かったわ。さぁ、お待たせ!夕飯にしましょ♪」


夕飯をせっせと用意する芽衣を待っている間、良翔は自分を鑑定した結果のステータスウインドウを眺めていた。


【 名前 : 橘 良翔

レベル : 366

HP : 78,200

魔力 : 11,426,570

スキル : イメージ創成、イメージメモリー、

: 七大属性魔法

: 神滅魔法、絶対防御、身体強化、

: 飛行、擬帯翼、異世界転移、鑑定、

: 無詠唱、魔素操作、空間操作

    :魔力干渉

    :転移魔法、複製、物質化魔法

職業 : 冒険者、創造神、サラリーマン 】


良くよく思い返せばこの一週間で良翔は格段に力を増した。

正直こんなステータスウインドウを見せられたらバグとしか思えない内容だ。

だが、実際にそれほど濃厚な冒険者生活を送ったという実感もある。


ふと、良翔はステータスウインドウを眺めながら、一つの疑問を抱く。

この情報を見れるのは良翔だけでなく、ノアも見る事が可能だ。

つまり、それは他の者も、鑑定魔法が使えれば、簡単に良翔の全ステータスを確認可能なのではないかという事だ。

この情報は戦闘で不利に働く要因にもなるかもしれないが、どちらかというと、良翔が気にするのは、パーティーメンバー以外の人間に知られてしまうという事だった。

今までの経緯から見ても、職業や能力を知られた事で皆が驚くばかりであった。

仕舞いには神様扱いされそうにすらなったのだ。

出来る事ならそういうのは今後も勘弁してもらいたい。

良翔はステータスウインドウを覆う用に、魔力を流してみる。

すると、なんとステータスウインドウに薄膜が張ったかのようになり、やや霞んでステータスウインドウの文字が滲む。

薄く張った魔力の膜の表面の流れが、波のようなブレて、文字を滲ませているように見えるのだ。

試しに良翔はもう少し濃い目に魔力をステータスウインドウの表面に張る。

みるみるステータスウインドウの文字は霞んで行き、最後は文字が何も見えなくなってしまった。

良翔は思わぬ結果に、内心喜ぶ。

 「後はここに、それっぽい数字を書き込もう。後は魔力遮断を薄めに作って体を覆えば、偽装[フェイク]の完成だな」

良翔は内心呟き、作業を行なっていく。


少しの時間の後、それは出来上がった。

今一度自分自身を鑑定してみる。


【 名前 : 橘 良翔

レベル : 46

HP : 4,600

魔力 : 9,200

スキル:五大属性魔法、

    :障壁魔法、身体強化、鑑定

: 無詠唱、空間操作

職業 : 冒険者 】

どうやら、無事にうまくいったようだ。

向こうに居る間は、この偽装を常に発動し、魔力遮断膜を体に薄く張れば、いわゆる普通の転生冒険者の出来上がりだ。

魔力を倍にしておいたのは、戦闘時に良翔の強さに疑問を抱かれても、転生者っぽい数値に見せておけば、大概の者は納得するだろう。

ただ、魔力を消費したり、ダメージを受けたとしても数値に変動が無いのが難点だが、それはおいおい考える事にする。


 「へい、お待ちー!」

芽衣が戯けて、笑顔を振りまきながら屋台風に料理を提供してくる。

 「ああ、ありがとう」

良翔も笑顔で答え、受け取る。


 「明日はどうしよっか?因みに今日はノアちゃんや秋翔さんはいないの?」

芽衣は食事しながら良翔に聞く。

良翔は一旦、食事を止め、芽衣に答える。

 「ああ、ノアと秋翔は今週末は向こうの予定だよ。ただ、さっき俺が玄関でやってた事と繋がるんだけど、ノアと秋翔も週末に休めるように、異世界へ行く為の直通ゲートを、ウチの玄関に作ったんだ。だから、合間を見て、ノアや秋翔を明日にでも迎えに行ってくるよ。それにこれのお陰で、俺は秋翔と入れ替わりする事なく、家からあちらに直接行けるしね。辻褄合わせに大分気を使わなくて済むんだ」

すると、芽衣は目を輝かせ、良翔を覗き込んで来る。

 「それって!!ウチから良翔の行ってる異世界に行けるって事だよね!?つまり、私達も行けるんじゃない!?」

しまった、と良翔は思ったが後の祭りだった。

確かに、芽衣達を連れていく事は可能だ。

だが、今いる良翔達の世界よりも遥かに危険に遭遇する可能性が高いのだ。

魔物はその辺の至る所に居る。

良翔がそこに不安を抱かない筈がなかった。


 「で、でもさ、芽衣。あっちは危険がいっぱいだ。子供達や芽衣にもしもの事があるかも知れないからね、だから……」

 「でも、良翔が守ってくれるんでしょ?」

良翔の言い分を、芽衣が遮る。

 「あ……、うん。ちゃんと守ります」

良翔は苦笑いを芽衣に向ける。

すると芽衣は満足そうに頷く。

 「なら、何にも問題ないわね♪明日早速行きたいなー♪」

芽衣には敵わない。

 「ああ、楽しみだね……」

良翔の顔には一筋の汗が流れる。

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