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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
140/163

2-29

良翔は気を取り直し、話を続ける事にする。

 「さて、ハタットの村での用件は済んだし、ハザやエヴァにも今後の旅の仕方についても理解してもらった。後は、今後タリスの街を出て、どの都市に向かうかという事だ。意見を聞かせて欲しい」

良翔にそう言われ、3人は考える。

正確にはエヴァはタリスの西の都市の情報など持ち得ていないだろうから、どちらに行くかなどの判断はつかないだろう。

ノアとハザが考え出した事で、自分も考えるフリをしているのだった。

良翔はその事は気に留めず、ノアとハザの意見を待つ。

 『私個人としては、良翔が言っていた、東西南北を結ぶ街である、ジラトミールに行くべきかと思うわ。まぁ、もちろん非常に盛で食事も宿もある程度の水準があると期待してのものもあるけど、良翔の言う北のアトスに対してジラトミールから何かしらの手を打っているとも考えられるわ。それに北のアトスが標的になるなら、南のラクトナが新たに標的となる可能性もあるし、そういった際にジラトミールに私達の拠点を構えるのは一理あると思うの』

ノアの話に良翔は頷く。

一方のハザはノアの話に頷いている。

 「ハザはどうだ?ノアの意見は気にせず自分の思った事を好きに言ってくれ。遠慮はいらないぞ?」

良翔にそう言われ、ハザは頷き口を開く。

 「私はノア殿程明確な理由はないが、性分もあってか、先ずは事が起きていると思われる北のアトスに行くべきかと思う。そこは今、正に問題が起きている、もしくは起きようとしている場所だから、我々が追っている男の足取りも掴み易いのではないかと考えている」

それにはノアも頷く。

 『まぁ、ハザの言うのももっともだし、後は良翔の意見次第ね』

そこにエヴァが、私は?私は?と意見を聞いて欲しそうにノアの服の袖をツンツン引っ張っている。

良翔は笑い、エヴァにも意見を求める。

 「そうだな、エヴァ。お前もちゃんとした俺達の仲間だ。エヴァの意見も聞かせてくれるか?」

するとエヴァは意見を求められた事にとても嬉しそうにし、胸を張って良翔に答える。

 「私は、二人の話を聞いて、南のラクトナが怪しいと思うのだ!」

するとノアとハザは、何で?という顔をする。

それに対し、エヴァは自信満々に答える。

 「単純な事なのだ!そこが一番怪しくなさそうだからなのだ!」

その意見に良翔はエヴァに対し感心する。

実は良翔も同意見だったからだ。

だか、ノアとハザはお互いに軽く溜息を吐き、エヴァに確認する。

 『まあ、そんな意見も有るわね。だけど、肝心の理由が弱いわね。それでは行く理由に欠けるわ』

「あぁ、ノア殿の言う通りだ。そこにあの男が拠点を置くメリットは何なのだ?」

二人に問われ、エヴァは戸惑いシュンとする。

まあ、エヴァではうまく説明できないだろう。

良翔が代わりに間に入って答える。

 「実はな、俺もラクトナに行ったらどうかと思っていたんだ」

良翔にそう言われ、ノアとハザは驚く。

恐らく偶然の一致とはいえ、良翔がラクトナを選択する理由が思いつかないからだ。

当然良翔の事だから、ちゃんと理由があるのだろう。

2人は良翔の話しの続きを待つ。

 「俺の考えとしては、俺たちが追っている男はかなり頭の切れる奴だと思う。例えば、ハザの言った通り今問題が起きているアトスに行けば何かしらのヒントは得られやすいかもしれないと思い付きやすい。もちろん、上手くいけばその男に直接繋がる何かを見つけられる可能性もある。そして、ノアの言ったジラトミールからでもアトスの異変を起こすなら問題ない場所だ。更に、次へと繋げやすい。では、逆にどこが一番無縁そうに見える?どこが一番潜伏しやすく、俺達の様な追手から身を隠しやすい?」

 『一番怪しむ要素が少ないラクトナ……』

ノアの答えに良翔は頷く。

 「ああ、その通りだ。だから、エヴァが言った理由もあながち間違いだとは思えなくてな。まぁ、そこまで考えていたかは分からないがな。ただ、俺達が追っている男は、用心深い。人の街に潜伏し、自身ではなく、他者を使って何かしらを起こしている。それってなるべく正体が割れない様に動いているとも言える。つまり、自分がどこで何をしているか、何を目的としているかを周囲の者に分からせない様にする事が、男の中でも重要な位置付けににいる、つまり優先度が高いと考えていいという事なのだと思う」

良翔の話にハザとノアは頷く。

エヴァは良翔と同意見だった事が嬉しかったらしく、凄いだろ?と仕切りにハザに言っている。

だが、ハザは、ああそうだな、と軽く受け流している。

皆エヴァの取り扱いには慣れて来たらしい。


ノアは良翔の話を受け、ラクトナからアトスへの男の行動の可能性を考える。

 『………確かに、ラクトナからも誰かを仕向けるのであれば可能ね。多少時間がかかったとしても、結局は他者に向かわせるのだから、ジラトミールからの移動時間とラクトナからの移動時間の差ぐらいしかないしね。正直誤差の範囲…。そして、仮に自分に追手がついたとしても、効率を優先して潜伏しているだろうと思われやすい所をあえて外す。故に消去法で残るのはラクトナって事ね』

良翔は頷く。

続いてハザも良翔の話を受け、口を開く。

 「つまり、それは結局のところ今は問題が起きていると思われるアトスに行っても、あの男のものと言える有力な情報は集めにくいと言うことになるな。良翔殿の言う通りの男であれば、ほとんど自身へと繋がる線を消した上で他者を操るだろうしな。では、アトスへ行くのは、アトスの問題を解決する時か……。まぁ、正直な所を言えば、自らを閉ざし、他と決別していたガルトが悪いとも思えるが、どんな事を言っても同胞だからな。気にはなる」

良翔は頷き、ハザに答える。

 「俺の考えは理屈的に想像すればって話さ。だから、ハザ。先ずはハザの仲間達を助けに行こう。よって、最初の行き先はアトスだ。異論はあるかい?」

それには、ノアもエヴァも異論なく頷く。

逆にハザは戸惑っている。

 「よ、良いのか、良翔殿。良翔殿の予想はラクトナであろう?」

それには良翔は笑顔で答える。

 「ああ、問題ないよ。それにあくまで俺の意見も、皆んなの意見もただの想像に過ぎない。アトスでも何らかの手掛かりが得られる可能性もある。それに何より、困ってる者が居て、自分達が何かできる可能性があるなら、そこに行く十分な理由があると思うよ。だから、決して合理的じゃない訳じゃない。まあ、つまり気にするなって事さ」

そう言われ、ハザは少し照れた様になり

 「すまないな」

とポツリと言う。


良翔は3人を見渡し、告げる。

 「では、これからタリスに戻り、先程までの状況をカシナさんに報告する。その後、街で簡易的に食糧などの必需品を最低限揃えた後、アトスの街へ向かう。皆んな良いかな?」

3人は表情を引き締め、頷く。

良翔は頷き、タリスへのゲートを出現させる。

ノアやハザが順にゲートをくぐる。

初め、エヴァは驚くが、直ぐにゲートの意味を理解した様で、直ぐ後に続く。

エヴァは中々に順応性が高い。


 「しばらくは、ここには来る事はなくなるな…」

良翔はそう呟き、あたりの景色をぐるりと眺め、最後にゲートをくぐる。

草原の草は、良翔達に別れを告げる様に風に揺れ、たなびいている。

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