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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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すると、すぐそばに何かの気配がした。

振り向くと、少し離れた所にノアがいた。

『さすが、うまいものね』

ノアが褒める。

「ノアの教え方が上手いのと、サポートがあるからだよ」

『ふふ、お世辞でも嬉しいわね』

くす、と笑ってノアが応える。

流石はノアだ。

イメージ創成ナビゲーターであるのだから、空を飛ぶのなんて造作もない事なのだろう。

意思との時差もなく、思い描いた通りに空中を移動しながら、良翔に近づいてくる。


『空も飛べた事だし、今度は、そのままさっき作り出した様に火を出してみて』

こんな風にね、とノアが人差し指を立て、ポッと火を出して見せる。

「OK、ノア」

良翔も同じ様に先程作り出した火を、指の周りにある魔素にイメージを伝えて、作り出す。

無事に火が灯る。

だが、今度は指先にほんのり熱を感じた。

タバコに火をつけるためではなく、ただ周りに熱をもたらす、火をイメージしたからだ。

やはり、イメージを具現化する際には、目的が大事らしい。

一度出した火を消し、再度ライターの様な火だけをイメージする。

すると良翔が思うと同時に先程と同じ火が灯る。

メモリー機能のお陰だ。

実は、この間にも、一度空を飛ぶイメージを断ち、直ぐに意思の通りに空を飛べるイメージをし直す。

一瞬、浮力を失い落下しそうになる体に、直ぐに浮力が戻る。

これもメモリー機能だ。

なんて優秀な機能だろう。


そんな様子を見ていたノアが言う。

『バッチリね、良翔。メモリー機能も上手に使えてる。その機能を上手く使えれば、同時に一つのイメージしか具現化できなかった事が、いくつも同時に出来るようになるわ。例えば今の様に、空を飛びながら、火をつけるなんて事もね』

「うん、すごい機能だね」

良翔は素直にそう応える。

『それで、どうかな?魔素を使って空を飛ぶのと、さっきみたいに何も利用せず、空を飛ぶのと、どっちが楽だった?』

良翔は思い返す。

「あぁ、確かに圧倒的に飛べる様になるまでの時間が短かったよ。恐らく最初のやり方だと、飛べる様になるまで数分はかかっていたのに、今回の方法だと、数秒で出来たからね。断然の違いだね」

『良かったわ、実感できて』

ノアが笑う。


少し間を置き、ノアが提案してくる。

『さて…、魔素を利用したイメージにも成功した事だし、新しい事を覚えて貰いたいのだけれど、良いかしら?』

「あぁ、もちろんさ。早く新しい事を覚えたくてウズウズするよ」

クスリと笑いノアが続ける。


『そうしたら…、少し高度を下げて、あの大きな岩のそばに行きましょう』

ノアは周りを見渡し、ふと目を止めると、少し離れた山の頂上に、明らかに他とは大きさが異なる、巨大な岩を指差しながら言う。


ノアの指示に従い、巨大な岩のそばまで飛行する。

それは眼前に迫ると凄まじい迫力のある岩だった。

周りの石や、山肌から見える大きめの石とは構造自体が異なっている様にも思える。

「なんだか、その辺の他の石とは違ってる様に見えるな…」

良翔は岩を眺めながら、呟く。

『ええ…、その通り、よっ!』

良翔に答えながら、その辺に何かを探していたノアが、おもむろに、ノアの二倍はありそうな岩をヒョイと両手で持ち上げ、先程の巨大な岩めがけ、投げつけたのだ。

「え…?」

良翔がそう呟く間に、ノアの手から、信じられないスピードで投げ出された岩が、轟音を立てながら、巨大な岩に向かって飛んでいく。

そして、巨大な岩と物凄い音を立てて、ぶつかる。

ドゴォァァァァン。

その瞬間、ノアが投げた岩は粉々に砕けたのだが、不自然に散らばる事なく、真下へと落下した。

「嘘だろ…」

ノアの突然の行動に開いた口が塞がらない良翔。


ノアがニコリと笑って良翔に体を向ける。

『魔素を使って、体に本来の何倍もの力を与えれば、こんな事も出来るわ。私が投げつけた岩にも魔素を与えて、飛び散らないようにも出来るしね』

ノアの説明は理解出来る。

理解は出来るが、ノアの見た目と、今の起きた光景とが不釣り合いすぎて、頭に正しく落ちてこない。

「あ、あぁ。」

反射的に返事をする良翔だが、ほぼ上の空だ。

『でもね…』

ノアはそう言いながら、巨大な岩のそばに近づいて行く。

岩のそばに立ち、良翔を手招きする。

手招きされて、ハッと我に返る良翔。

急いで、手招きされた所にかけて行く。


すると、先程ノアが投げつけた岩がぶつかった辺りを指差し、見てみてと促してくる。

「ん?」

とそこに目をやるが特段変わった様には見えない。

「ノアは何が言いたいんだ?」

と心の中で呟き、もう一度、指差された辺りを見る。

やはり何もなさそうに見える。


「…ん?まてよ?」

良翔は先程の光景を思い出す。

女の子がしたこととは言え、かなりの大きさの岩をとてつもないスピードでぶつけたにも関わらず、この巨大な岩には、ヒビどころか、欠けたようにも見受けられないのだ。

「嘘だろ…。あれだけの物が、あれだけのスピードでぶつかったんだぞ?欠けもしないなんて、あり得ないだろ…」

『そのとーり♪』

ノアは何故か嬉しそうだ。

「ノア、これはいったい…」


『これはね、アダマンストーンといって、結構レアな鉱石の大きな塊なのよ。中々見つからない物だし、その硬度から、需要はかなりあるわ。な、の、で、私みたいなか弱い女の子が少し強めに石を投げて当てた所で、ヒビどころか欠けることすらしないわ』

ふふん、と何故か自慢げに説明するノア。

いや、あれはか弱いなんて表現が絶対に許されない死の匂いをまとった投石だった、と思ったが、良翔は口にはしなかった。


「そうなんだ…。それで、コイツをどうにかするのかい?」

良翔は、ノアに誤魔化しながら相槌をうち、ここに来た理由を確認する。


ノアはニコッと含みのある笑顔を良翔に向け、言い放つ。

『良翔には、この岩を壊してもらおうと思います!』

またしても、ノアから無理難題が出た。

「それは流石に無理なんじゃ…」

良翔は、思わず本音をこぼす。


するとノアは少し顔を膨らませながら言う。

『良翔なら出来ます〜。これが、新しく覚えて貰うことなんだから、そんな簡単に無理なんて諦めちゃダメだよ?今度はイメージした力で他の物体に影響を与える練習なんだからね!』

「な、なるほど。頑張る…よ。」

ノアのテンションについて行けない良翔。


そんな良翔を見かねて、ノアが少し落ち着いた様子で話す。

『これを習得しないと、良翔が、この世界で、いざって時にきっと困ると思う。だから、ちゃんと覚えてね?』

急なノアの変化に、良翔は焦り、ちゃんと話を聞く。

「分かった、ノア。ちゃんと習得して見せるさ」

『うん、なら宜しい〜』

また、笑顔に戻るノア。

良翔の事を思って、大事な事を最初に教えてくれるノアの優しさを感じ取り、良翔は心の中で帯を締め直すのだった。


『この岩を砕くには、どんなイメージが必要だと思う?』

「そうだな、さっきノアが投げた岩が与えた力よりも、何倍も強い力で衝撃を与える、とかかな?」

『うん、それも正解』

「それも?なら、他には…、岩の硬さを柔らかくするイメージを浮かべる、とか?」

『そう、それも正解!』

「え?まだあるの?そうだな………」

「…」

「ダメだ他に、良いアイデアが思いつかないや」

『そうねー、他には岩自身が自爆して粉々になるとか、良翔が手で触れると、原子レベルで分解しちゃって砂のようになる、とか、他にもきっと沢山あるわ』

なるほど、と良翔は思う。

単純に巨大な力で破壊する以外にも、考えてみれば色々な方法がありえるのだ。

『じゃぁ、良翔は今挙げた方法全部が出来る様になりましょうね♪』

「え…、…頑張るよ…」

苦笑いを浮かべて返事をする良翔。

ノアが段々に厳しくなってる気がするのは、良翔だけだろうか。

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