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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
122/163

2-11

良翔はこれで一安心する。

所詮この世界は弱肉強食の世界なのだ。

どれだけ周りから敬われようと、それに見合う力が無くては、いつかは力ある者に蹂躙されてしまう。

だから、どんな事を言ってもその強さは必須なのだと良翔は思っていた。

それが、今回の蘇りと付与で彼ら一族は格段に力を上げた。

それは即ち、守護者を名乗っても恥じない程の力があるという事だ。

そして、彼らは良翔達を信仰の対象とし、良翔の管理下で指示を出せば、行動を起こさせる事が出来る。

これは一つの新たな強大な軍隊が出来たも同然だった。

だが、良翔には彼らを管理下に置くつもりも、新たに軍隊を得たとも思っていない。

彼らは新たな目標の為に、それに似合った力を手に入れた、ただそう思うだけだった。

片や、ノアはこの現状をよく理解しており、有事の際には、彼らを良翔の為に動かす事も選択肢の一つとして念頭に置く事にした。

それが有ったからこそ、良翔が彼らに能力を付与する事にも抵抗を示さず、素直に従った。

ノアの目的はあくまでも、良翔が望む世界を、良翔が望む様に歩かせる事、ただそれに尽きる。


全てのアースワイバーンの復活、および能力の付与が終わり、良翔は満足気な顔をしている。

そんな良翔を見て、ノアはニコリと微笑む。

『お疲れ様、良翔。無事に済んで良かったわね』

「ああ、ノアが手伝ってくれたからさ。ありがとう、助かったよ」

そこに、アースワイバーンの戦士達が綺麗に整列し、良翔に頭を下げる。

代表して、マレナが丁寧な謝辞を述べ、恭しく頭を下げる。

良翔は改まって感謝されるのにはどうも慣れず、苦笑いしながら、頭を上げるようにお願いするのだった。


そのまま、蘇ったアースワイバーン達はサザ達の指示の下、散り散りになり、やがて姿が見えなくなる。

彼らが散った事を確認した後に、良翔が再び作り出したゲートを通過して、一同はタリスの東の森へ戻る。


そこでカシナが急に口を開き、何やら実験を行う旨を全員に伝える。

「良翔、ノアご苦労だったな。そして、早速で悪いが、大地の守護者達と、古の森へ散ったアースワイバーン達との連携がいかに有用であるかを確認したい」

カシナとバンダン、ニーナ以外は皆、顔を傾げ、カシナの次の言葉を待つ。

「実は、既に隠密を得意とする者達を複数名、古の森内部、森外部、草原と散らばせて潜ませている。アースワイバーン達には彼らを発見し、位置や姿を大地の守護者達を介して情報を集めてもらいたいのだ。これによって分かる事は、彼らが探知出来る範囲の確認と、その情報の正確さ、及び彼等を見つけられる力量といったものが把握出来る。どうだろうか、マレナ殿。試させてもらうようで悪いが実施させてもらっても良いか?」

すると、マレナは初めこそは驚きはしたが、したり顔でカシナに返す。

「もちろん問題ありません。これから共に活動していくのです。この関係性の有用さをぜひ実感して頂きたく存じます。それに……、良翔様とノア様から授かったこの新たな力を持ってさえすれば、造作もない事ですわ」

それを聞いたカシナも不敵に笑い

「その言葉、期待しても良いか?今回潜ませている者達は、皆Bランク以上の強者たちばかりだ。ある程度時間を要することや精度が落ちてしまう事は、ある程度致し方無いと私は思っているのだが…、まあ、やってみれば分かるさ」

「ええ、そうして頂くのが一番手取り早いかと」

マレナもニコリと笑いながら、カシナの挑戦を受ける。

静かな火花が良翔には見えた気がする。


「では、これより実験を始める!隠密達よ!これは実験という名の訓練ではあるが、各自実戦と同じつもりでのぞめ!実戦で簡単に見つかれば自分の命の危険があるという事を肝に命じるのだ!心して挑め!」

カシナは念話の指輪を介し、各冒険者に通達する。

恐らく念話の向こうから、各隠密の冒険者達より返事があったのだろう。

カシナは頷き、周囲に目配せをする。

周囲の者もカシナに頷き、実験が始まる。


カシナの開始の合図と共に、マレナも各アースワイバーン達に指示を出しているようだった。

両手を広げ、目を閉じて各自にマレナの命令を伝えている。


しばらくした後、マレナが目を開けカシナに頷く。

マレナからの合図に合わせて、カシナは懐から、一枚の古の森周辺の拡大地図を地面に広げる。

その場に居た全員が、地図を中心にカシナとマレナを囲うように座り、アースワイバーン達からの連絡を待つ。


五分程経過した頃に、大地の守護者達に連絡が入ったのだろう。

1人の者が冒険者発見の連絡をカシナに伝える。

「カシナ殿、冒険者を発見した連絡が入りました」

カシナは頷き、地図の上に見つけた場所とその冒険者達の容姿を聞く。

カシナの問いに、進言した大地の守護者の者がアースワイバーンからの送られた情報を伝える。

その情報を元に、カシナは地図にバツ印を記載し、見つかった冒険者の名前を容姿の情報から判断して記載していく。

カシナが地図に最初の1人目を書き終えたタイミングで、大地の守護者達が急に騒がしくなり、カシナに皆伝えようと、一斉に話し出す。

「カシナ殿、新たに1人発見の連絡が来ております」

「カシナ殿、こちらも新たに1人発見した連絡が入っております」

次々と大地の守護者達からの報告にカシナは焦り、急いで地図に印と名前を記載していく。

気が付けば、カシナの前に大地の守護者達の列が出来てしまい、カシナは記入に追われる。

「ばかな!何故そんなに早く見つかるのだ……」

気が付けば、最後の1人の情報を書き終えたカシナはプルプル小刻みに震え、そう呟いていた。

良翔は結果が気になり、カシナに聞く。

「カシナさん、結局何人の隠密冒険者を潜ませたんだ?」

すると、カシナはハッと我に返り、良翔に振り向き、苦虫を噛み潰したような顔をしながら、答える。

「……35人だ……」

良翔はそう言われて、地図に書き込まれたバツ印を数えて行く。

バツ印を数え終えると、見事に35箇所の印がある事が分かる。

開始から僅か15分程だ。

この探索能力の凄まじさは誰の目から見ても明らかな程、文句無い結果だったと言えるだろう。

試しに良翔は、カシナに聞いてみる。

「カシナさん、実験は大成功ってとこだろうな。ところでさ、アースワイバーン達の姿を捉えたものは35人のうち何人居るんだ?」

その質問に対し、カシナは納得行かない顔をしながらも、応える。

「残念ながら、皆無だ……。500匹を超えるアースワイバーン達を一目も見る事もできずに、35人全員が見つけられてしまうとは………全く、ここ迄とはな……。恐れ入ったよ」

するとマレナがニコリと笑い、カシナに声を掛ける。

「カシナさん。これは元々の私達だけの力じゃとても無理だったわ。良翔様とノア様から頂いた新たな能力のお陰なの」

そう言われ、カシナは疑問の顔をマレナに向ける。

「今までの私達であれば、目視や匂いに頼るしかなく、かなりの距離迄近づかないと気付くことは出来なかったわ。だけど、今回与えて頂いた自然の力を操れる能力によって、大地からの情報、大気の変化、そういったものがあらゆる自然物を介して私達に情報が入る様になったの。始めの5分はこの力を使う事に慣れずに手間取ったみたいだけど、今はみんな上手に使えてるみたい」

すると、カシナは諦めたようにフと笑い、マレナに顔を向ける。

「そうか…。是が非でも我々と共に歩んでもらいたくなったよ。お前らのその力は我々にとっても、周囲に住むもの達にとっても非常に有用な力と言えるだろう。当然、実験は申し分なく大成功だ」

カシナの言葉に頷き、マレナも優しく微笑む。

「ええ、もちろん、あなた方タリスの方達と共に歩ませて頂きますわ。その為に良翔様やノア様が私達にこの力を授けて下さったのですもの」

カシナはマレナに手を差し出し握手を求める。

「これからは遺憾無くその力を発揮し、我々と共に歩んで欲しい。宜しく頼む」

「ええ、こちらこそ宜しくお願い申し上げます」

マレナもカシナに手を差し出し、2人は固く握手する。

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