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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
120/163

2-9

ハザとサザが静かに目を閉じ、頭を垂れると、良翔は彼等の頭に手を触れる。

そして、2人に対し同時に鑑定をかける。


鑑定によって彼等の能力や魔力量、魔力の質や色、癖などあらゆるものを読み取っていく。

「成る程。確かに先程の牙とは少し様子が異なるみたいだ。だが安心してくれ。それに馴染む様、同じ魔力を生成するからさ」

良翔はそう言い、両手に魔力を集中する。

もちろん周囲の魔素を利用して行っているので、良翔の魔力は全く消費しない。

だが、良翔としても彼等には思い入れがある。

自分の魔力を多少消費したところで、なんら問題もない。

それに良翔によく馴染んだ魔力だ。

この世界でいう血筋の様な関係性も悪くない。

良翔は少量の自分の魔力も混ぜ合わせ、彼等にユックリと流し込む。

すると先程と同じ様に彼等から眩い光が放たれ始めた。

だが、先程とは少し様子が違う。

光には暖かい温もりが含まれ、まるで神々しい光を纏う、神聖な存在の様にも見える。

すると、彼等の体に変化が現れ始める。

額から生えていた二本のツノの表面がパラパラと落ち、中から白い滑らかなツノが姿を現わす。

サイズも一回り小さくなり、凹凸のない、まるで鬼のツノの様な白無垢の姿に変わる。

また、皮膚も赤褐色の固そうな皮膚から、人により近い、柔らかそうな皮膚へと変わる。

見た目だけなら鬼人の様な姿へと変貌を遂げる。


「よし、終わったよ。どうだ?おかしな所はないか?」

良翔が声を掛けると、ハザとサザは薄っすらと目を開ける。

「まさか、これ程とは…。力が内からどんどん溢れてくる…」

「だが、なんて暖かいのだ…。常に優しく何かに包まれ出いる様だ」

ハザとサザは両手に目を落とし、手から何かを感じている様だった。

「大気から……、大地から……、力を感じる……。これが自然の力を感じるという事なのか……」

「何という……、素晴らしい力だ……」

ハザもサザも想い想いに感想を述べたのち、ユックリと立ち上がる。


「良翔殿、感謝をどの様に伝えたら……。この素晴らしき力を得られた喜びは、言葉では言い表せない……」

良翔はハザにそう言われ、ニコリと微笑む。

「気に入って頂けたなら何よりさ。感謝はいい。その力を使って、皆をシッカリ守って欲しい。俺の望みはただ、それだげだよ」

良翔にそう言われ、サザはかしこまり、力強く頷く。

だが、ハザは立ったまま良翔をジッと見つめている。

「ハザどうした。良翔殿に返事をしないか」

サザは、ハザの振る舞いを注意するが、ハザは反応しない。

「どうしたんだ、ハザ。何か良くなかったか?」

するとハザは首を左右に振る。

「恐れ多いのは分かっている。分かってはいるのだが……、出来る事ならば!!……良翔殿達と共に歩ませては頂けないだろうか!?」

ハザの発言に、サザが慌てる。

「な、何を言っている。ハザ!!今しがた良翔殿に皆を守る為にこの力を使って欲しいと言われたばかりではないか!?」

「もちろん!森やタリスの街との関係に尽力するのも必要だ!それも、よく分かっている!!」

「ならば……!」

サザの言葉を遮る様に、ハザが答える。

「だが……、だが、しかし……!!私もまた、あのタリスで多くを見、知り、嫌という程よく分かったのだ……。世界は……広いのだ……。私の心の中の声が良翔殿達と共に世界を周れと、そう叫ぶのだ!!」

ハザの悲痛なまでの叫びに、サザはたじろぐ。

「ハザ……、お前……」


話を聞いていた、バンダンが口を開く。

「面白い男がいる。だから、行きたい。凄く素直で分かりやすい話じゃねえか。俺がお前らの上司なら迷わず行ってこいと背中を押してやるがな。どうなんだ、マレナ嬢ちゃん?お前らはハザが居ないと立ち行かなくなるもんなのか?良翔の返事も聞くべきだが、まぁ、その辺はどうとでもなるだろうさ。なんなら、俺も行きたい所だからな!がはははははは!」

それを聞き、良翔はため息を吐く。

「バンダン、勝手に話を進めるなよ…。それに俺の返事がどうとでもなるって……、全く……」

それを聞いたバンダンがニヤリと笑う。

「逆に頑なにノーと言える、理由がお前にあるか、良翔?大の男が体を張ってこう生きていきたい、と声を高らかに上げているのに、お前はどんな理由でその意思を納得させられるんだ?それに、お前は例の奴を追うんだろう?強い仲間が増えるのには文句ない様にも思えるがな?」

「バンダン……。お前そういう所だけ、妙に確信をつくよな……」

そして、良翔はハザを見つめる。

ハザも真剣に見つめ返してくる。

「……分かったよ。ハザ。だけど、こちらも一定の条件がある。条件については後々説明するけど、その条件については必ず守ってもらう事になるが、それでも飲めるかい?」

「ああ、何の問題もない」

良翔は諦めた様に軽くため息を吐き、マレナに視線を向ける。

「という事みたいなんだが…、マレナはどうなんだ?結局のところはマレナが種族長的立場だから、マレナの返答次第だと思うけど?」

良翔の言葉により、一斉に全てのものがマレナに視線を送る。

マレナは一瞬戸惑いを見せるが、息を大きく吸い、一呼吸置くと、真っ直ぐに良翔を見つめ、答える。

「良翔さんの仰る通り、後は私どもの判断次第と心得ております。……で、あるならば、私がハザをここに留める理由は御座いません。ここにはハザだけでなく、多くの背中を預けられる頼もしい仲間がおります。もちろんハザ不在の痛手はあるかと思いますが、そこはサザに全幅の信頼を置いておりますので、何とかなるのではないかと思っております」

「姫様…」

ハザは苦虫を噛み潰した様に、グッと口を噛み締め、何かを堪えているようだった。

サザもマレナから許可が出た事により、諦めた様で、軽く溜息を付いている。


良翔はマレナからの返事を聞き、頷く。

「分かった……。じゃぁ、マレナからも同意があった事だし、ハザの身はこちらで預からせてもらう。ノアも文句ないね?」

ノアは少し頬を膨らませて、明らかに不服そうにしてはいるが、渋々了承する。

『良翔が言うのなら仕方ないわね……』

良翔はノアに優しく微笑み、お礼を伝える。

「ありがとう、ノア」

良翔のその表情に、ノアはウットリとし、ニコリと微笑み返す。

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