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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
119/163

2-8

準備は整った。

第一陣の牙は既に良翔と魔力で繋がっている。

後は魔力を個別に適量流せば復活する筈だが、こればっかりはやってみなくてはならない。

しかし、ただ流し込み、復活させても何やら味気ない気がする。

彼等は、タリスの街とアースワイバーンとの不幸なすれ違いによる犠牲者なのだ。

ただ蘇るだけでなく、少しばかりの特別があっても良いのではないかと、良翔は思う。

良翔は少し考え、ある考えを思い付く。

良翔は思いついたままに、イメージを行い、特別な付与の力を持った魔力を、牙に向けてそれぞれ流し込む。


良翔からの魔力を受け、やがて、牙に変化が現れる。

牙は光りを放ちながら、個別に宙に浮かび上がると、一斉に眩い強烈な光を周囲に放った。

誰もが、その眩しさに一斉に目を覆う。

だが、良翔とノアだけはその光を見つめ続け、牙の変化を見届ける。

牙からは段々と薄いアースワイバーンの姿が現れ、徐々にその透明度を消していく。

最後には巨大な体をシッカリと大地で支え、完全なる勇猛なアースワイバーンの肉体が姿を現わすのだった。

ただ、その姿は以前見た時とは少し異なり、ことさら目を引くのは通常額から二本のみだった彼等のツノが、頭頂部付近から更に一本生えているのだ。

これは良翔が新たな力を与えた結果、生じた変化なのだろう。


周囲の光が収まり、目を覆っていた手をどけ、姿を現したアースワイバーン達を目にした人化したアースワイバーン達は口々に感嘆と喜びの声を上げる。

だがその喜びの中で、蘇った仲間達の異変に気付いたハザは良翔に歩み寄り、小さい声で話し掛ける。

「良翔殿、まず同胞の復活、心より感謝する。だが、彼等の様子が以前とは異なる様なのだ。それに……、魔力も桁外れに大きくなっている。これは……、良翔殿が蘇らせる際に何かされたのだろうか?それとも……、これは何かの失敗なのだろうか?」

良翔は周囲に心配を与えない為に、なんて事は無い事の様な顔をし、小さく頷き、ハザの疑問に答える。

「ああ、さすがハザだな。もう気付くなんてな。その通り、蘇りの際に、魔力を少し加工して意図的にある力を彼等に与えたんだ。そしたら、見た目や魔力も大きく変わってしまったな。とりあえずは失敗では無いから、その心配は不要だが……、やっぱりマズかったか?特に問題なければ、この後でハザ達にも同じ力の付与を行おうと思っていたんだが……」

ハザは驚きの顔をし、慌てて表情を周囲から悟られない様に正常に戻す。

「なんと…、新たな力を我等が同胞に与えて下さったのか…。して、いかような力を付与されたのだろうか」

「ああ、恐らくあって損では無いはずなんだが、与えた力は大地や自然との同化力を高める様にしたんだ。わかりやすく言えば、大地を伝って木々の成長を意図的に早めたり、自然の物を意図的に操作出来る様にしたんだ。アースワイバーンである君達ならその力の恩恵を最大限に活かせるだろうなって思ってね。どうかな?都合良くなかったか?」

それを聞き、思わずハザは声を上げてしまう。

「なんですと!?我等が命の源である母なる大地や自然との繋がりを、更に強化して頂いたと仰るのか!?」

ハザの声に、周囲がハッとハザと良翔に顔を向ける。

良翔は諦め、白状する様にハザに告げる。

「ああ、その通りだよ、ハザ。断りもなく、勝手に付与してしまってすまない。ただ、今後ハザ達はこの近隣に住む者達の守護者となるべき存在なんだ。今までと同じ様に自分達だけで生きて行くという生き方とは大きく異なる。そんな君達が大地や自然からも力を貸してもらえるなら、その目標に対してきっと大きく役立つと思うんだ」

するとハザは慌てて、両手を左右に振る。

「謝罪だなんてとんでもない!!我々はまたしても良翔殿に大きな感謝をしなくてはなりません!いくらお礼を伝えても伝えきれない程の事を良翔殿にはして頂いたのです。感謝こそすれ、嫌に思うなど、とんでもない!」

それを聞いた良翔は安堵する。

「それなら、良かった。彼等を全て蘇らせた後にハザ達にも同じ能力付与をするからな。さぁ、まずは今蘇った彼等を移動する様に指示を出してもらえるかな。次の仲間達を復活させなきゃ。ノアも彼等を分析して、同じ能力を与える様に蘇生を手伝ってくれないか?」

「了解した」

ハザは頷き、蘇った彼等を移動させていく。

ノアも良翔の応援要請に頷き、良翔の隣に立つ。

「ノアは半分をお願いできるかい?俺はもう半分を復活させる。その方が時間が幾分か早くなるはずだからさ」

『ええ、任せて』

そこに、カシナが口を挟む。

「頭では理解してるつもりだ。理解してるつもりだが……!!お前は本当に創造神の様な力を持っているのだな……。新たな能力を生み出し、それを他者に与えるなど……。どうしても現実の様に思えん……」

そこにバンダンが口を開く。

「確かにな…。分かっちゃいるが、理解しきれんといった感じだな…。だが、今は大地の守護者達の復活が優先だ。聞きたい気持ちは分かるが、俺達は静かに待つべきだな、カシナ」

バンダンにそう言われ、口を開きかけたカシナが、グッと口をつぐみ、頷く。


良翔は彼等に頷いた後、蘇生に戻る。

それからは、同じ動作を繰り返し繰り返し行う。

全ての牙から無事にアースワイバーン達が蘇り、その姿と数には圧巻の一言だった。

気が付けば湖の淵にそってアースワイバーン達がずらりと並び、大地を埋める。

そして良翔とノアを囲う様に大地の守護者達が立ち並ぶのだ。

まるで、良翔とノアの為のモンスター編成大軍団と言えるだろう。


「無事に終わったな。よし。それじゃあ次はハザ達の番だ。2人ずつ並んでくれるか?」

良翔はハザ達に顔を向け、並ぶ様に促す。

するとハザとサザが2人で前に出て、良翔に向けて跪く。

「良翔殿、ノア殿。先ずは私達で先に試して頂けるだろうか。牙から復活した彼等と、私達は少し異なる。亜種となってしまった我々は彼等とは違う体の作りと能力を持っているのです。先程の牙からの蘇生では問題なくいきましたが、我々も同じ方法でうまくいくとは必ずしも言えぬと思うのです。であれば、先ずは私共で試して頂いた上で、最良の方法を導き出して頂きたい。そして、それを後続に続く彼等に施して頂きたい。いかがだろうか」

良翔は少し考えてから、ニコリと笑い頷く。

「ああ、確かにハザの言う通りかもしれないな。では、始める前に少し2人の魔力を調べさせてくれ。それで違いがあるようであれば、必要な修正をして付与する。それでいいかい?」

ハザとサザは良翔の目を見て頷く。

良翔はハザとサザのその真っ直ぐな姿勢に尊敬を覚える。

自らの体を差し出すなんて、そう簡単に真似出来る事ではない。

彼らはやはり紛れもなく、これからアースワイバーン達の間で中心人物となっていく者なのだろう。

「だが、安心してほしい。嬉しい誤算はあるかもしれないが、絶対に失敗はしない。だから、期待して貰っていいよ。その方が俺も幾分か気が楽だしな」

そう言い、良翔はニコリとする。

するとサザがふっと笑う。

「ええ、そうさせてもらいます」

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