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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第2章
116/163

2-5

やがて城門に着き、カシナが視線を送ると、門番は姿勢を正し、硬い敬礼を向ける。

カシナもフワリと手慣れた様子で、敬礼をしながら、城門を通り過ぎていく。

一同はそのまま進み、アースワイバーン達を200匹程葬った森へ着く。

周囲の人々を驚かしても手間なので、一同はそのまま森の奥に進んでいく。


森の中を進み、街道からはこちらの様子が伺えない地点で開けた所へ出る。

良翔はそのまま全員に向き、説明を開始する。

「先ずここで行うのは、この地にねむる彼等の魂である、アースワイバーンの牙を集める。蘇生にはこのアイテムが必要となる為だ。ただしここでは復活は行わない。200匹ものアースワイバーン達を蘇生させて仕舞えば、こんな小さな広場では収まらないからな。一度牙を集めた後は、古の森近くに移動してもらう。蘇生はそこで行う」

するとカシナが、片眉を吊り上げ、良翔に聞く。

「待ってくれ、良翔。二つ程疑問がある。一つは、アースワイバーン達の牙をどうやって集めるかだ。この人数がいれば、この森なら何とかなるかも知れんが、古の森となると、範囲が広過ぎて、とてもじゃないが集めきれんぞ。そして、二つ目に、今から古の森の近くに移動するには、かなりの時間を要する。しかもこれだけの大人数だ。通常よりも時間がかかる。まさか、余りにも目立ち過ぎるが大地の守護者達の翼で向かうと言う訳じゃあるまいな?」

カシナの疑問に対し、皆が同様の事を思ったらしく、一斉に良翔に視線が集まる。

良翔は軽く笑い

「いや、どちらも他の方法を取るつもりだ。まぁ、見ててくれ」

そう言い、周囲よりも一歩前に出て右手を前にかざす。

良翔が、右手に収集魔法を発動すると、森のあちらこちらから、カサコソ音が聞こえ、ブン!と一斉に牙が集まって来る。

見る間にアースワイバーンの牙が目の前で山積みになる。

カシナとバンダンが、目を丸くし、その光景を見ている。

ニーナも眼鏡を光らせその光景を見つめている。

「な……、どうやったのだ!?」

やっとカシナが口を開くと、良翔にすごい剣幕で迫って来た。

「な、何って、アースワイバーンの牙を魔力で繋いでこちらに飛ばせただけだよ…。これって初級魔法の応用だとサラからは聞いていたんだけど…、違うのか?」

するとバンダンが、成る程と呟き

「いいか、良翔。コレクトの魔法は確かに初級魔法だ。だが、それは目に見える物に大して行うものだ。目に見える物体に、自分の魔力を繋ぎ、浮かせたり、移動させたりすんだ。だが、お前のは目に見えていない物の場所を正確に特定し、そこに魔力を繋いでいる。そして、その量だ。普通は精々出来て10から20が限界だろうよ。カシナや俺でさえ、精々出来て100程度だろうよ。一体お前の魔力量はどうなってやがるんだ。恐らく前者についてはお前の鑑定のスキルが関係してると想像出来るが、後者についてはお前のその魔力量の根源が不明だ。だが、お前のその様子からして大した消費では無いんだろう。普通ならこの時点で魔力欠乏だぞ」

良翔は思いもしない所で、指摘を受け戸惑う。

だが、出来てしまうものはしょうがない。

今更隠す事も叶わないのは事実だ。

「ま、まぁ、その辺はちょっと特殊なんだとは自覚してるよ。さ、さぁ、回収も終えたし、次に移動しよう」

カシナは良翔の回答に明らかに納得していない顔をしている。

良翔は話題を逸らす為、移動を促すが、結局これもハマってしまう。

「まさか、良翔様は…、転移魔法の様な物を作り出せるのでしょうか…」

黙っていたニーナが口を開き、そう言うと、皆が一斉に驚きの顔を良翔に向ける。

「え、……そのつもりだったけど…、ひょっとしてそれも……、かなり異色だったりするのか?」

するとカシナがまたしてもすごい剣幕で良翔に迫る。

「当たり前だ!!そんなもの王宮大神官ですら出来やしない!お前は、いったい…」

良翔は更に焦り、助け船をノアに求める。

その間ノアはニヤリとだけしており、何も発しない。

良翔からの助け舟の要請を汲み取り、ノアがようやく口を開く。

『まぁ、驚くのも無理ないわよ、良翔。私達は正直特別だもの。だから、あなたの職業をみんなに教えてあげたらいいんじゃない?そしたらきっと皆、納得するわ』

ノアに言われ、良翔は疑問に思う。

「職業って…、冒険者以外のだと、創造神、ってやつのことか?」

良翔がポツリと呟いた言葉を聞いて、一斉に周囲が凍りつく。

ハザやサザはアースワイバーンの静かな表情を大きく崩し、盛大に口を開けている。

マレナに至っては気を失いかけ、倒れそうになっているのを周囲の者に支えられ、何とか地面に伏せずに済んでいる状態だ。

あの陽気なバンダンですら、ワナワナ震えている。

カシナは下を向いてしまい、小刻みに震えている。


「え?…え?これってかなり不味かったやつ…?」

良翔が焦りノアに視線を送ると、ノアは、ふん、と鼻を鳴らしドヤ顔をしながら一同を見回している。

すると1匹のアースワイバーンの戦士が驚きの表情のまま、地に伏せ、祈りのように四つん這いになって良翔に頭を下げる。

次第にそれは伝染し、気が付けばハザやサザ、マレナを含め全てのアースワイバーン達が同じ姿勢になってしまう。


「ま、待ってくれ。その職業は……、確かに特殊な響きはするが、俺は皆と同じだろう?だから、そこまでの問題では…」

「大問題だ」

良翔があたふたと言いかけた言葉をカシナがピシャリと遮る。

「…と、仰いますと……?」

ポタリと良翔の額から冷や汗が垂れる。


「はぁぁ………、全くお前って奴は…」

良翔の疑問な顔つきにカシナは溜息を大きく付き、良翔に向き直り、話し出す。

アースワイバーン達は相変わらずの姿勢のままだ。

「いいか、良翔。これでお前の尋常ならざる能力を持ち得ている理由が分かった。そして………、それは遥かに我々の想像を上回っているものだ」

良翔はとりあえず相槌を打つ。

カシナは、本当に分かっているのか?という疑問符を良翔に向けたまま、話を続ける。

「良翔。いくらタリスの外から来たとは言え、この世界で誰もが知っていると言っても過言ではない、ある有名なおとぎ話を知らんのか?」

良翔は、首を左右に振る。

カシナは呆れるが、仕方無しに話を続ける。

「本当にどう生きて来たらそうなるのだ…。いいか、良翔。今から簡単に話してやるからよく聞け」

良翔は黙って頷く。

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