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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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結局、サラに事の顛末を説明し、何とかこれ以上の追求を免れた良翔は、ホールの端のソファーでくつろぐ。

そのまま、良翔は騒がしい音と、程よい疲れからか、段々と眠気に誘われていく。

意識が遠のく中、誰かの優しい声が響く。

「おやすみ、良翔…」

声が段々と遠ざかっていく。

誰かが優しく髪を撫で、柔らかな枕を良翔の頭の下に敷いてくれる。

いつのまにか良翔は眠りに落ちていた。


ふと、遠くから騒がしい声が聞こえる。

段々と意識を戻しながら、良翔は自分が不覚にもこの騒がしいパーティーの中、眠ってしまった事に気付く。

良翔は、枕に顔を置いたまま、ホールの様子を眺める。

このままではあまりよろしくないと、ユックリ顔を上げようとすると、すぐに枕とは反対側に柔らかさを頬に感じる。

良翔は視線だけを上に向けると、すぐ側にノアの顔があった。

『おはよう、良翔。よく眠れた?』

優しく微笑むノアに、良翔の胸は激しい脈を打つ。

先程良翔の頬に当たったのは、ノアのふくよかな胸だったのだ。

防具は外され、服の上からも分かるノアの立派な胸が、良翔が顔を上げようとした際に妨げとなったのだった。

すると、これは枕じゃなくて、ノアの太ももじゃないのか!?と、状況に気付き良翔が焦り、すぐさま起き上がろうとすると、ノアはニコリとしたまま凄まじい力で良翔を押さえ付ける。

「!!?!」

良翔は焦るが、ノアに押さえつけられ、身動きが取れない。

そんな良翔に構わず、ノアは胸を良翔の頬に押し付けてくる。

『良翔は少し頑張りすぎなのよ。もう少しここでユックリしなさい』

ノアにそう言われ、良翔はどうにか脱出しようと試みていたが、断念する。

そして、仰向けになり、ノアに応える。

「ああ。分かったよ、ノア。ノアには敵わないな。今だけはノアの言葉に甘えるようにするよ」

するとノアは再びニコリとすると、良翔の頭を優しく撫でる。

良翔の目には、下から見るノアの仕草や表情が、息を飲むほどの美しい光景の様に思え、思わず口をついて出てしまう。

「ノア………、ノアはまるで女神みたいだな……」

マジマジと、良翔に見つめられながらそんなセリフを言われたノアは、思わぬ言葉に驚きの表情をする。

そして、みるみる内に顔を真っ赤に染め、耳まで真っ赤になっていく。

途端にノアは勢い良く立ち上がり、顔を両手で覆いながら、駆けて行ってしまう。

ノアが立ち上がった拍子に、床に落ちてしまった良翔は、突然の事に唖然として、床に尻を付いたまま、ノアの立ち去った方を見ている。

そこにミレナがニヤニヤしながら、やって来る。

「あらあら、良翔さん。私は見てましたよ〜?ノアさんたら酷いですね〜。良翔さんを床に放りだすなんて。さぁ、立ち上がって下さいな」

「ああ、すまない。ミレナさん」

良翔はミレナの手を借り、立ち上がる。

そしてそのまま、ミレナに促されて、何故か二人隣同士でソファーに座る。

座った途端、ミレナは良翔の肩にもたれ掛かり、囁くように良翔に言う。

「良翔さん、今回のクエストはお疲れ様でした。私は心配で心配で……、ご無事で本当に嬉しく思います」

良翔はミレナの突然の行動に、固まり、姿勢正しく座ったまま、ミレナを見れずにいる。

「み、ミレナさんにはご心配をお掛けしました。無事にクエストを完了して、俺も一安心で……、!!??」

良翔がそう返している最中に、突然ミレナは

良翔の首に両腕を回し、頬に何度もキスをして来たのだった。

良翔は驚き、ミレナの肩を掴んで離し、ミレナの様子を伺う。

「あ、あの……、ミレナさん?」

するとミレナからはボワっと酒の匂いがする。

かなり酔っているらしく、まだ、良翔から離された事に気付かずにエアーキスをしている。

ミレナはどうやら酒乱らしい。

良翔は周囲を見回し、近くを通ったバンダンに声をかける。

「バンダン!バンダン!こっちに来てくれ!」

「おう、どうした良翔、随分と楽しそうじゃねえか」

バンダンは相変わらず、酔っているのか、シラフなのか分からない様子だが、意識だけはハッキリしているようだった。

「ミレナさんが、こんな感じで酔ってしまっていて、ちゃんと座れないんだ。俺もトイレに行きたいから、その間この場所を変わって、ミレナさんが倒れないようにしてくれないか?」

するとバンダンはニヤリと笑い

「なんだ、良翔、そんなもんシッカリ楽しめば良いだろう。ははぁん、さてはお前、意外にウブなんだな。がははははは!良いだろう。倒れないようにする為だ、いた仕方なく変わってやる」

バンダンの救いの声に良翔は、せーので入れ替わる。

ミレナは相変わらず気付いていない。

良翔は上手く入れ替わったかを確認すると、ミレナが既にバンダンの首に手を回し、頬にキスをしている。

「ん〜、良翔さんの毛ってなんだかフワフワして気持ちいいですぅ〜」

「がはははは、そうだろう?俺様の自慢のチャームポイントだからな!」

「それに良翔さん、なんだが男の臭いって感じがしますね〜。まるで狼さんみたい…」

「がははははは!そりゃあそうだわな!」

良翔は哀れな思いを抱きながら、その場を退散する。

後ほど、正気に戻ったミレナの絶叫がホール中にこだまし、気を失った事は言うまでもない。


良翔は、逃げ出した足でハザを探す。

姫の様子が気になったからだ。

すると、間も無く一人壁にもたれ掛かり、ちびりちびりと酒を飲んでいるハザを見つける。

良翔はそのままハザに近寄り、声をかける。

「ハザ。酒は口にあったか?ところで、お姫様の様子はどうなんだ?」

ハザは良翔に顔を向け、応じる。

「中々この酒というのは面白い味のするものだな。あまり美味い様には感じないのだが、皆何故かとても楽しそうだな。この酒が影響しているのか?姫様は、今はカシナ殿の執務室で休まれている。ニーナ殿が治療を施してくれたお陰で、安らかに眠っておられる」

「そうか、ならよかった。酒は気分が高揚し、気を大きくしてくれる飲み物だよ。だから、こんな交流会などでは打ち解ける良いきっかけになるだろうね。ただ、あまり飲み過ぎると痛い失敗をする飲み物でもあるがな」

良翔はふと笑い、ハザを見る。

すると、ハザは頷き

「では、私も少し気を大きくして、皆と交流しなくてはならないな」

そう言い、一息に手にしていた飲み物を飲み干す。

「ああ、その粋だ」

良翔は頷き、ハザを見送る。


そして良翔はそのまま、カシナの執務室に向かう。

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