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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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良翔達がギルドのロビーへ戻ると、大歓声が湧き上がる。

カシナが一歩前へ出て、声を高らかに上げる。

「諸君!大いに楽しんでいるか!今日はこの後、今後諸君と行動を共にする新たな仲間が来る!その者達とも交流をぜひ深めて欲しい!その者達は…」

カシナはハザに視線を送り、前に出る様促す。

ハザはカシナの意図してる通りに前に出て、カシナの隣に立つ。

「今回、我々と同じく、強大な敵に対し、臆する事なく戦ったアースワイバーンの諸君だ!今回の作戦の結果、我々は同じ過ちを犯してはならないとの結論に至った。その為には、双方が歪み牽制し合うのではなく、相互に歩み行く事で、このタリスに、アースワイバーン達に、共に大きな光となる未来を作り上げる事が出来ると確信している!私はそんな彼らに敬意を評してこう呼びたい!大地の守護者と!この結論に異論のある者はいるか!!異論のある者は前へ!」

カシナの言葉に会場がざわつく。


しかし、一人の男が声を高らかに上げる。

「異議なし!」

ガザルだった。

周囲の目が一斉にガザルに向く。

「我々の歴史は人種だけでは成り立たぬ!このタリスは多くの種族の者と歩んできたのだ!そこに新たなアースワイバーン…、いや、大地の守護者が仲間となる事に何の問題があろうか!!私はカシナ様のご判断に賛成で御座います!!」

そうガザルは言い、片膝をつきカシナに頭を垂れる。

すると、周りの者達も頷き

「「「異議なし!!」」」

とガザルと同じ姿勢を取っていく。

気が付けば全ての者が、片膝をつき、カシナに頭を垂れる。

それを見たカシナは、ふっと笑い

「諸君の気持ちよく分かった!そして、この判断に同意してくれた事に感謝する!皆頭を上げよ!新たに来る仲間達を出迎える準備をするのだ!!」

カシナの合図とと共に皆一斉に立ち上がり

「「「はっ!!」」」

と、一斉に動き出す。


その様子を見ていた、良翔はハザの左肩に手をぽんと置く。

「ハザ、良かったな。これでお前達はれっきとしたこの街の仲間になった。これから大変だろうけど、ここの者達を信じて、ぜひ諦めずに尽力して欲しい」

するとハザは、目を細め、慌ただしく出迎える準備を進める冒険者達を見ながら

「この街は、なんだか暖かいな…。これも良翔殿、カシナ殿のお陰だ。これで我々は再び新しい形でやり直せる」

カシナもハザの右肩に手を優しく置き

「ああ、その通りだ、ハザ。これはお前達にとっても、我々にとっても新たな一歩だ。これから宜しく頼む」

ハザはカシナを見て頷く。

そこにバンダンが後ろから、良翔とカシナの首に手を回しハザに馬鹿力でグッと寄せる。

「なに、堅苦しい話してんだ!そんなもん後の楽しみにとっておきゃあ良いんだよ!今は楽しむ準備をするぜ!?」

「ああ、そうだったな」

「まったく、この馬鹿力が!そんな事は分かっている!離さんか!」

「照れるなカシナ!がぁはっはっはっ!」

すると、ハザがくすりと笑う。

それを見たニーナとノアもニコリと後ろで微笑む。


その後、会場は登場したアースワイバーン達を迎え、大騒ぎとなった。

初めは戸惑っていたアースワイバーン達だったが、次第に打ち解けたらしく、互いに肩を組み、冒険の話や、森での話になど陽気に話し合う者も居れば、アースワイバーンから不思議な魔法を見せてもらい、教えてほしいと殺到する者、片やテーブルで今回の苦労を互いに労い合う者など、終始賑わいを見せた。

その間、良翔やノアも、すれ違う者に端から、今回の功労の労いや、共に冒険に出てみようなど、多くの者から賛辞やお礼を言われたのであった。


良翔は大盛り上がりな会場の中、少し疲れ、冒険者達の群れから外れ、壁に寄り掛かり休憩をしていると、バンダンが皿に溢れんばかりの料理とビールジョッキを2つ片手に持って良翔に近づいて来た。

ノアは、今はニーナやカシナ、ミレナ達と共にカウンターで楽しそうに話している。

良翔が一人になったタイミングを見越して、バンダンは近づいて来たのだった。

「どうだ?楽しんでいるか?」

「ああ、お陰様でね。ところでバンダン、それ一人で全部食べる気なのか?」

良翔はやや呆れ気味にバンダンに聞くと

「ああ、これか?こんなもの朝飯にもならん。ところで、良翔に一つ聞きたい」

バンダンに言われ、良翔は会場に視線を向けながら応える。

「ああ、なんだ?」

そんな良翔を見ながら、バンダンは近くのテーブルに、大皿を置き、ビールジョッキを一つ良翔に手渡す。

良翔がビールを受け取ったのを確認してから、自分のジョッキを良翔に出す。

乾杯の合図だ。

良翔もそれに気付き、バンダンとジョッキを交わす。

「ご苦労さん、相棒」

「そっちこそお疲れ、バンダン」

互いにジョッキを合わせたあと、ビールを喉に流し込む。

バンダンはよく冷えた物を持って来たようで、喉を抜けるビールが心地よい刺激を与える。

ぷはっと一気に半分程飲んだバンダンが、大皿から、骨つき肉を片手に取り、良翔と同じく壁にもたれ掛かり、肉をガブと噛みながら、良翔に話し出す。

「俺はな、こんな日が来る事をずっと思い描いていたのだ。今回はアースワイバーン達だけだが、モンスターと呼ばれる者達と、俺達が共に歩む道はないものかと悩んだものさ。それをお前は意図もアッサリこなしやがった。まったく、それには恐れ入ったぜ」

「それは、済まなかったな」

良翔は笑いながら、バンダンに返す。

バンダンもニヤリと笑い、再び肉にかぶりつく。

「だがな、そのサラッとやってのける姿を見ていてな、一つの疑問が浮かんだのだ。お前は突拍子も無い事を突然言い出すし、そして、それを実際にやっちまう力と行動力を持っている。俺には、お前がまるでこの世界に生きて来た者ではなく、異世界からの転生者、もしくはそれに類する者ではないかと思えるのだ。……どうだ、違うか?」

良翔は会場を見たまま、バンダンに応える。

「………もし、そうだとしたら、どうする?」

するとバンダンは笑う。

笑いながら、良翔に視線を向けず、バンダンも前を見ている。

「どうもしないさ。お前が四島の様に悪さをするってなら全力で阻止する。だが、良翔はそんな事にはならないって分かっているからな。不思議と何も警戒はしないな。ただ、何となく、俺とお前の付き合いはたった数日だが、それを言えない関係というものではないと、俺には思えてな」


良翔はクスリと笑い、バンダンに顔を向ける。

「要するに、俺が正体を明かさない事が寂しいって事だな、バンダン?」

するとバンダンは口に入った物が飛ぶのも気にせず、盛大にむせる。

「ば、馬鹿野郎!そんな訳あるか!た、ただ俺は単純に秘密を背負って生きるのも辛いだろうから、打ち明けても良いぞ、と言っているだけだ!誰が寂しいんだ、全く!」

良翔はクスクス笑い

「ああ、分かっているさ。ありがとう、バンダン。その一言で救われるよ」

「ふん。分かっているならいいさ」

バンダンは照れているのか、それを隠すように肉を一気に食べ尽くし、ビールも飲み干す。

追加のビールを頼もうと、バンダンが腰を壁から離したタイミングで良翔が思い出し、バンダンに問う。

「そういえばさ、森からここに来るまでの途中、すれ違う冒険者達に、こんなポーズをされたんだが、これはどんな意味合いがあるか知ってるか?俺は冒険者になって日が浅いから、その辺の情報に疎くてね」

そう言い、良翔は右手を左胸に当てて、直立する、真似をする。

すると、それを見たバンダンがまたしても盛大に笑い出す。

「がははははは!!良翔!そりゃ、冒険者達で言う敬礼みたいなもんだよ!!お前はあらゆる冒険者から尊敬の眼差しで、敬意を表されてたんだよ!!そうか!それが分からんあたり、良翔らしいな!!がはははは!!」

そう、バンダンは高笑いしながらその場を去っていく。


その時、ギルドのドアがバン!と勢い良く開く。

何と入って来たのはサラだった。

良翔はサラを見て思い出す。

「そうだ…、サラと正午に会う約束をしていたんだった…。スッカリ忘れていたな…」

良翔は思わずそう呟いているうちに、サラは騒がしい周りをキョロキョロ見回し、良翔を探し当てると、凄い剣幕で良翔に迫ってくる。

「良翔!いったいどういう事だ!!私はあの場所で一時間も待ったのだぞ!!一向に良翔がくる気配が無いから、何かあったのかと思い、急いで街に来てみれば、なんなんだ、この馬鹿騒ぎは!!」

良翔は焦り、しどろもどろになりながら、サラに応対する。

「い、いや、サラ済まない。覚えていたのだけれど、状況が状況なだけに、伝えに行けなくてね…。非常に申し上げにくいんだけど、アースワイバーン問題は無事解決しちゃったんだよね…」

するとサラはみるみる顔を赤くし、大きな声で叫ぶ。

「解決しちゃったんだよね、じゃない!!」

すると、その大声に周囲が会話をピタリと止め、視線を向ける。

だが、聞こえて来た内容に、途端に大笑いが巻き起こる。

「な、なんなんだ!何が可笑しいのだ!?」

サラは、笑われた事に顔を真っ赤にして、周囲に抗議する。

そこにバンダンがビールジョッキを片手に現れ、サラの頭をワシっと掴む。

「お前こそ、この状況下で何をチンタラやってたんだよ?あ?だから、ガセの情報も遅くなってから寄越すんだよ、お前は」

「ひっ!?バンダン!?」

「あ?バンダンんん??」

バンダンはジロリとサラを睨む。

「ば、バンダンさん!」

と、サラは焦り、直ぐに言い直す。

その様子を見ていた周囲が、またも笑い出す。

良翔も堪え切れず、笑い出す。

「な、何が可笑しいのだー!!」

サラの叫びだけが、虚しくホールにこだまするのだった。

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