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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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「では、質問を変える。この街から出て行く冒険者達に何をした?」

カシナの問いに対し、四島は、ん?、と顔をする。

「なんの事だ?僕は冒険者なんて知らないよ」

「とぼけるな!!お前が冒険者達をこの街から出て行く様に何か催眠でもかけているのだろう!?」

ばん!っとテーブルを叩き威嚇してバンダンが四島に問い詰める。

「ほ、本当だよ!信じておくれよ!それはなんの事だか僕には分からないよ!!」

四島は慌てて答えるが、それでも答えを変えない。

「このやろう。この後に及んでまだシラを切るつもりか…」

バンダンが牙をワザと覗かせ、四島に迫る。


その間良翔は四島の反応を伺い、考える。

そして、口を開き四島に聞く。

「バンダン、待ってくれ。コイツは本当にそれについては知らないのかもしれない」

バンダンは良翔からそう言われクッと堪え、身を引くが良翔に向き直る。

「良翔、では誰がそんな事をするんだ?」

「それは分からない。だが、四島が何か知っている可能性がある。四島。思い出すんだ。お前はこの世界に来てから、色んな者に会っている筈だ。その中にお前に何か助言をした者がいるんじゃないか?」

四島はバンダンに怯えていたが、良翔にそう言われ、視線を空中に向け、暫し記憶を辿る。

すると、アッと声を漏らす。

「思い出した様だな。そいつはどんな奴なんだ?」

四島は思い出しながら話す。

「正直、もう殆ど覚えていないけど…、確か、そいつと出会ったのはこちらに来て3ヶ月ぐらい経った頃だったと思う。今だともう一年以上前だね。この世界に慣れ始めて、自分が特異な能力の持ち主なんだって実感し始めた頃だったんだけど、その男と酒場で出会ってね。僕はお酒は飲めないけど、酒場は情報収集の定石だろ?そこに時折通って他の冒険者達に話を聞いて、冒険に役立ちそうな情報を集めていたんだ。そこで、その男に会ったんだ。そいつが言うには、ギルドには出ていない、アースワイバーン討伐の裏クエストみたいなのをやらないかって言われてね。報酬が異常でさ。そりゃ、怪しんだよ?何でそんなクエストをギルドに出さないんだ?ってね。そしたら、何でもギルドに出すには、手続きに時間が掛かるとかで、急いでるって、言われてさ。確かに期日は翌日の朝迄にアースワイバーンの牙を3個持ってこいって、内容だったしギルドに出してたらとてもじゃないけど間に合わないなって思ってさ」

「それで、受けたのか?」

四島は頷き

「うん、結局迷ったけど受けたよ。そいつはアースワイバーンの位置も正確に知っていたし、クエスト自体は僕にとってはちょろかったからさ。結局さっさとやっつけて、依頼の結果を渡して、報酬を受け取ったよ」

「それで?その後もそいつとやり取りを続けたんだろう?」

「うん、その通りさ。毎回は居ないけど、週に一度は酒場にいてさ。そいつの短納期クエストをいくつかやったんだ。報酬も良いし、何より面白いクエストばかりだったんだ。今思えば、そいつに僕の実力を計られてたんだと思うよ。そしたらある日、そいつがアースワイバーンの首領を倒さないかって言ってきてね。毎度結構無茶な事を言ってくるからさ、特段驚きもしなかったよ。だけど、その時は少しいつもと内容が違ったんだ。これはクエストでは無いってね。アースワイバーンの首領を倒して、アースワイバーン達を意のままに操るのはどうかって、言われてさ。当然そんなのに大したメリットを感じなかったんだけど、アースワイバーン達を意のままに動かした結果、エルフの里の大樹の命で永遠の命を手に入れ、タリスの街に隠されてる破邪の宝珠で無敵になれるって言われてさ。そしたらタリスの街は思い通りだ、ってね。最初は、そんな事、って思ったんだけど、僕に勝てる奴は居なかったし、なのに依頼を受けて生活をするなんて、少し面倒だなとも思ってた頃合いだったから、結局惹かれちゃってね。気が付けば今に至る、って感じさ」

良翔は少し考え

「成る程ね。で、今そいつはどこにいるんだ?最近は会ったのか?」

「いや、そいつはその話を最後に街を離れるって言ってた。このアースワイバーンの話はクエストを良くこなしてくれた御礼みたいなもんだって言ってた。だから、もうこの街には居ないと思うよ。それに僕もそのアースワイバーンのクエストに入ってからは、全然街に来てないしね」

「どこに行くとか言っていなかったか?」

四島は少し考えてから

「確か…、西の方に行くって言ってた様な気がするよ」

「そうか、最後にそいつの容姿や名前なんかを教えてくれ」

四島は思い出す様に考えてから、口を開く。

「黒のローブをまとっていて、いつもフードを被ってるんだ。それで、目の横から頬にかけて切り傷がある。特徴はそれぐらいだよ。名前は残念ながら聞いてないよ」

四島の回答を最後に、皆が黙り、沈黙が流れる。

今回のこの四島の話で、黒幕は他にいる事が分かった。

その男はいったい何の目的があって四島にあんな話を持ちかけたのか。

そして、冒険者達は何故出て行ってしまったのか。

あの男が関与しているのは間違いなさそうだ。

だが、その男の正体はおろか目的も分からず、結局分かったのは愚かな四島はその話に乗り、多くの者に迷惑を掛けただけという事だった。


沈黙に耐えかねた四島が、恐る恐る口を開く。

「あのー…、それで、僕はどうなっちゃうんでしょうか…?質問には全部答えたし、無事釈放って事で良いのかな?」

四島の問いに、ハザが口を開く。

「カシナ殿、もし宜しければ、この街の冒険者の方々と、我々アースワイバーン勢の初共同作業に、荒れ果ててしまった古の森の北にある、四島が根城にしていた村の復興などはいかがでしょうか。そこにはモチロン、この四島を労働力として連れて行きます」

カシナは頷き、良翔を見る。

「私は最初から、その男についてはお前達に一任するつもりだったが、構わないな、良翔?」

良翔も頷き

「ええ、構いませんよ、カシナさん。ハザもそいつの処遇を任せても良いかな?」

「もちろんです。良翔殿」

ハザがやっと笑顔を見せ、頷く。

良翔も笑顔でハザに応えた後、四島に向き直る。

「四島。お前の処遇が決まった。お前はハザ達アースワイバーン達とこの街の冒険者と共にお前が壊した村の復興をするんだ。折れてしまった骨は治してやるから、シッカリ働いて来いよ。一つ付け加えておくと、お前のあの力は完全に封じた。お前にあの力が戻る事はない。だから、再びやましい考えを起こせば、その場にいる者から凄惨な仕打ちを受けるだろうな。その事をよく覚えておけ」

「そ、そんな…。釈放してくれないのかよ…。ずるいぞ!…………、いえ、何でもありません」

四島の戯言は、良翔の刀がピタリと喉元に添えられて、呆気なく沈黙する。


四島は、その後カシナの呼び出した衛兵達に連れられて、退出していく。

退室前に、ノアからは顔を足で踏みつけられたまま折れた骨を治療された事には、触れないでおく。


四島の退室を皆で見送った後、バンダンが口を開く。

「まぁ、なにはともあれ、無事とりあえずは今回の件は一旦終了だな!さぁ!俺らも下で飲もうぜ!」

「ああ、そうだな」

カシナが同意し、ハザを見やる。

「私も参加して良いのだろうか…」

ハザが困惑気味に聞いてきたので、バンダンがハザの肩を掴み

「当たり前だ!ハザだけでなく、他の者も全員呼べ!こういう祝い事は皆でやるもんだ!」

カシナもバンダンに同調する。

「そうだ、ハザ。お前は何も気兼ねすることなど無い。それに、ここでお前達と我等冒険者が交流を取ればよりこれからの展望が明るくなるというものだ。それに、お前達の姫もここに連れて来れるか。こちらで治療した方が早く回復すると思うのだが、森の仲間と連絡は取れるか?」

「そうか…、カシナ殿、重ね重ね礼を言う。早速姫様をこちらに連れてくる様伝える」


各々に今回の件で思う所はあるのだろうが、口にはしない。

どの様な未来であっても、これからやって来るであろう先に、一途の期待を持って共に進んで行けば良い。

そんな想いが皆の目から感じられた。

「さぁ、行こう、ノア」

『ええ!』

部屋を後にし、皆でロビーへと向かう。

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