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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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「では、話を戻すけど、四島はこれから起こして、話を聞くって事で良いかな?」

全員が頷く。

「分かった。誰か意識を戻す様な魔法って知らないかい?あいにく俺は知らないんだ…。あと、四島を起こす時は、魔法を使わせたくないから、周囲から魔力の源を消してしまうから、その間は魔力の回復は出来ないなから、それだけ注意しておいてくれ」

そう、良翔が言うと、ニーナがその類の魔法を使えると手を上げてくれた。

その間、ノアが何か思いついた様に、カシナに声をかける。

『カシナさん、不要そうな安いモノでいいから、首輪とか腕輪とか無いかしら?』

「あ、ああ。……こんなもので良いか?」

カシナはノアに言われ、机の引き出しから、茶色い銅製らしき首輪を出す。

ノアは頷き、それを受け取り、良翔に手渡す。

『良翔。これにある一定以上の魔力を持たせない様に加工して、四島の首に付けて仕舞えば良いのよ。そうすれば、コイツが起きている間、いちいち魔素を分解し続ける必要が無くなるわ』

ノアに言われ、良翔は成る程と思う。


早速、ノアから受け取った首輪に良翔は周囲から魔素を流し込み、結合させる。

まずは握力や腕力では絶対に壊せない強度を与える。

次にイメージを集中し、四島の魔力と首輪の魔力とを連結させ、ある一定以上の四島の魔力に対しては、吸収し、大気へ魔素を放出する、いわゆる分解の能力を持たせる。

すると、首輪は茶色い銅色から、黒へと姿を変える。

良翔は四島を、円卓のそばに引きずり近付けると、それを四島の首に付け、ニーナに合図をする。

ニーナは良翔に頷き、詠唱を始める。


すると、ニーナの手元が光り、四島の顔に向かって光の膜が伸びていき、四島の顔が覆われていく。


やがて、四島が意識を戻したらしく、苦しそうな顔をし、薄っすら瞼を開ける。

そういえば、四島は骨を数本折られた状態のままだった事を良翔は思い出す。


「う……、あ…あ、あ?」

四島は意識が戻り、周囲の様子を眺め、状況が理解出来ないらしい。

「あ、ぐっ!?」

体を動かそうとして、痛みを覚えたらしく、ノアに折られた腕を抑え、うずくまる。


そこにノアが声をかける。

『おはよう、モヤシ運動音痴君。よく眠れたかしら?』

ノアがニコリと笑いながら、四島の顔を覗き込む。

四島はん?と顔を目の前のノアに向けると、みるみると青ざめていく。

どうやら、ノアの事を思い出したらしい。

そのまま、痛みを堪えながら、体を引き摺り、後ろに下がる。

そして周囲にいる者全員から視線を浴びている事に気付き、驚き戸惑う。

その中に良翔がいるのに気付いた四島は、驚愕し、ガクガク震え出す。

良翔はそんな四島に静かに声をかける。

「起きた様だな。さて、早速だが、お前の目的と能力を話してくれ」

「な、なんなんだ、お前達は!………!!そこに居るのはアースワイバーンの仲間だった奴じゃないか!?お前なんで人間と一緒にいるんだよ!!早く僕の傷を治して助けろ!!命令だ!早くしろ!!」

良翔は呆れて、四島に話しかけようとした途端、ハザが良翔を手で制する。

「御方よ、私が何故ここに居るかお分かりになられませんか?あなたはここに居る良翔殿に敗れたのです。そして、貴方が人質とした姫様も救出されました。ですから、私どもが貴方の言いなりになる理由はありません。むしろ、我々から、永遠の苦痛を与えられるべき存在なのです。ですが、ここに居る皆様方の慈悲で生きておられるのです。その状況をいち早く理解頂く事を強く望みます」

そう言うと、ハザはみるみる四島に対し、強烈な殺気を放ち出す。

周囲の温度が急激に下がり、先程までとは全く違う空気が部屋を満たす。

それでも、四島は強気に出る。

恐らくこの男は全くと言っていい程に、空気を読む事が苦手らしい。

「何言ってやがる!アースワイバーンの癖に生意気だぞ!姫を助けられたからって調子に乗るなよ!?僕がまたすぐにお前らなんか全滅させてやる!ほら!そうされたくなかったらすぐにでも僕を助けるんだ!!」

話を聞いていた、ノアが一歩踏み出す。

『つくづくムシズが走る、クズだわ。お前にはもう少し痛みを覚えてもらう必要がある様ね』

そんなノアの様子に気付いた、四島は必死になる。

「ほ、ほら!アースワイバーン助けろ!早く!!そうだ!お前を幹部にしてやる!だから、早く!!」

途端にノアがハザよりも強烈な殺気を放ち出す。

二人の強烈な殺気が室内の空気をあっという間に零下にまで押し下げたのだろう。

皆が吐く息が白くなり、四島が喚き散らして飛ばした唾が凍る。

良翔は、このままでは拉致があかないと判断し、四島に声を再びかける。

「四島。いいから少し黙れ。今ならまだ、生かしてやる。これ以上喚くなら究極の苦しみを与えた上で、殺す。いいか、一度だけしか言わないからよく聞け。ハザたちアースワイバーンは我々と共に歩む事を決めた。だから、もう、お前の指図には一切従わない。本来ならお前がアースワイバーン達に味合わせた苦痛をそのまま返してやってもいいし、貢物として、お前の手足を彼らに差し出したってこちらは構わないんだ。それをちゃんと理解しろ。そうなりたくなかったら、俺達の質問に答え、言う事を聞け。さもなければ……」

良翔はそう言い、四島を気絶させた際に見せた日本刀を四島の顔の前に出し、刃先を鼻先に向ける。

四島はようやく状況を理解し、自分の立場が分かったらしく、良翔の刀を見た途端、唇が震え、歯をカチカチ鳴らしながら、何度も何度も必死に頷く。

良翔は四島に刃先を向けたまま、周りに振り返る。

「四島はこの通りだ。各自聞きたい事を聞き出してくれ」

全員が頷き、四島に向き、端から一人ずつ質問をしていく。


まず最初に口を開いたのはカシナだった。

「先ずは、何故、今回この様な回りくどい事をしてまで、タリスを窮地に陥れようとした?目的はこの世界の蹂躙か?」

「そ、そうだ。人間共の勇者になったところで、面倒な退治やら何やらやらされるだけだからな…。だったら、自分の思い通りになる様にしてしまった方が都合が良いに決まっている…。手間をかけてタリスを落とすのは、滅ぼしてしまっては、従わせる奴が居なくなるからな…」

カシナはため息を吐き、ギロ、と四島を睨む。

四島はカシナに睨まれ、体をビクッと震わせる。

続いて口を開いたのは、ニーナだった。

「では、伺いますが貴方が転生者というのは本当ですか?」

「そうだ!こんな…、こんな意味分からない所の出身なわけないだろう!!」

「では、貴方のその力は、転生時に手に入れたものという認識で間違いないでしょうか?」

「そ、そうだよ!今は何でだか使えないけどね!この世界に来る際に、神の様な力を手に入れたんだ!あの力さえ使えれば、本当なら…、お前らなんか…、お前らなんか…」

そう答えた四島に、良翔が口を挟む。

「四島。聞かれた事だけ答えろ。余計な事は挟まなくていい」

カチャと再び刃先を四島の眉間の間に合わせ、良翔は四島に注意する。

「は、は、はいぃぃ!!」

途端、四島は再び大人しくなる。

「では、聞くが、お前のこちらで得られた能力とはなんだ?」

今度は良翔が続けて質問する。

「えっと…。僕が得た力は、知り得た魔法を極限まで威力を高める事が出来る能力です」

「では、お前が知っている魔法を全て言え」

「は、はい。身体強化と浮遊、魔力付与とファイヤーボールです」

「…………」

「ん?…他のも言え。隠しても痛い思いをするだけだぞ?」

カシナが四島に先を促す。

「…え?…い、いや。これで全部だ…、です」

「な、なんだと!?たった、それだけの魔法しか覚えていないと言うのか!?それだけで、アースワイバーンの群を倒したと言うのか!?しかも、全て初級魔法ではないか!?」

突然声を荒げたカシナに、四島は驚き、萎縮する。

「は、はい!その通りですぅ…」

「まさか…、転生者というのは、それだけの魔法で、これ程までの力を持つものなのか…」

「うむ、正直これは脅威だな…」

カシナの話にバンダンも同意する。

良翔も四島の力の脅威は身をもって味わったから、カシナ達の驚きは理解出来る。

四島は大した技を知ってはいなかったのだ。

これで、四島が更に多くの技を知り得ていたなら、良翔はきっと勝てなかった可能性がある。

「お前の基地にしていた所にいた、あの強力なアースワイバーンはどうやって呼び出したんだ?ただのアースワイバーンでは無かったが?他にも召喚魔法なども使えるんではないのか?」

「い、いえ!あれはアースワイバーン共の親玉がドロップしたアイテムに、僕の魔力を付与しただけです!」

『…成る程ね。これで、ドロップ品からモンスターを蘇らせる事が可能だって証明されたわね。私が想像した通り、ドロップ品に含まれるそのモンスターの魔力を元に戻してやれば、復活出来る。あの強さは首領だったからって事なら納得だわ』

良翔とノアは四島の話に素直に納得したが、他の者は一様に驚いている。

「なんだと!?復活まで出来るだと!?魔力を戦利品に付与するとは思い付きもしなかったが、魔力を付与さえすれば復活出来るのか!?お前はそれをやったって言うのか?」

バンダンの迫力に、四島がビクつく。

「は、はい!出来ます!たまたま、近場にいたファウンドウルフを討伐した際に試したら、復活したので、アースワイバーンでも同じ様にして復活させました!ただ、元々のモンスタの持っている魔力量よりも倍くらいの魔力を与えなければ復活しません!そして、更に多くの魔力を与えれば、より強力な力を得て復活しますぅ!」

一同が沈黙する。

暫くして、カシナが口を開く。

「この件に関しては、良く考えねばならないな…」

一同がカシナの言葉に頷く。

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