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サラリーマン、異世界へチート通勤する  作者: 縞熊模様
第1章
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気を取り直して、空を飛ぶ練習を開始する。

…と、ここでどの様にすれば良いのか、よく分からない事に気付く。

「空を飛ぶってどんなイメージが良いんだろう。翼でもイメージして飛ぶのかな…」

結局迷って、あれこれイメージしたが、うまくいかない。

空を飛ぶどころか、地面から浮かび上がることすら、出来ない。

四苦八苦していたが、ノアは声をかけて来なかった。

暫く試みた良翔は、観念してノアに助けを求める。

「ノア、空を飛ぶって難しいね…。何がいけないのか、アドバイスをくれると嬉しいんだけど…」

『ふふ、そう来なくっちゃね!なんでもかんでも、私無しで出来てしまったら、私が居る意味が無くなってしまうもの』

ノアは嬉しそうに返してくる。

良翔は、そんなノアの様子を感じ取り、フと微笑む。

『そうしたら…。良翔にお願いがあるの』

「ノアからのお願いなんて、なんだろうな」

誰だって、頼られるのは嬉しいものだ。


『お願いっていうのはね…、私に姿を与えて欲しいの!出来れば、良翔と同じ様に、人の姿でね。もちろん、女性でお願いしますね!』

「…え!?そんなこと不可の…」

そう言いかけ、先程のノアとの話を思い出し、不可能ではない事を理解する。

「だけど…、空を飛ぶ事も出来ないのに、人を作り出すなんて…、出来るのかな?」

もっともな疑問を口にする。

『ふふ、実はさっきは私は何もお手伝いしなかったの。イメージしたものを実現するのは難しいことだって理解して欲しくって』

成る程、確かに難しかった。

結局、良翔一人の力では空を飛ぶ事は出来なかったのだから、ノアの言っていることは、よく理解できる。

『でも、今度は私も手伝うわ。そしたら、きっとうまく行くから。それに、そうして私の実際の機能を目の当たりにしてもらえれば、私の機能がどんな働きをするものなか、よく理解してもらえると思うの。ついでに言えば

、私自身も人の姿をした方が、良翔に対して何かを伝えたりする時に、より伝わりやすくなると思うのよ』

「なるほど…」

ノアの言っていることは、確かにその通りだと、良翔も納得する。

「分かったよ、ノア。そしたら…、俺はノアの姿をイメージしてみれば良いのかな」

『理解してくれてありがとう、良翔。そうね、良翔の言う通り、先ずは私の顔や体格をイメージしてね。あ、くれぐれもチャンとした、女性をイメージしてよ?』

「わ、分かってるよ」

戸惑う良翔に対し、ノアがアドバイスを追加する。

『実は、姿や形だけでは、イメージを実現するには弱いの。どんな時に怒って、何に笑って、何故泣くのか、具体的なシチュエーションも思い浮かべながら、その人がどの様に生きていくのかをイメージすると、よりその人物がどんな存在なのかを、具体的に形作る事が出来るわ。そうした、具体的な人という存在が イメージ出来れば、実現に繋がる大きな力を生み出すの』

なるほどな、と思った。

先程、空を飛べなかったのは、それが原因なんだろう、と良翔は思う。

空を飛ぶ為の翼などの形を一生懸命考えたところで、その翼がどの様に動き、どの様に空気を操ると空に飛び上がるのか、そういったイメージをしていなかったのだ。

「後でもう一回やってみよう…」

そう思った良翔は、一旦考えるのを止め、人型のノアのイメージを始める。

「何となく分かったよ、ノア。それじゃあ、早速やってみるね」

『分かったわ、良翔。宜しくお願いね』


ノアに言われた通りに、具体的なシチュエーションを思い浮かべ、笑った時の顔や、少し怒った時の顔、突然の事に驚いた顔などをイメージしながら、ノアの全体像をイメージしていく。

そうして、暫くイメージを続けていくと、一人のイメージが出来上がった。


「あぁ、確かに、声からイメージするノアってこんな感じかもな」そう思えた瞬間、目の前が光りだす。

一瞬驚いたが、目を閉じずに光を見つめる。

やがて、光は地面に向かって集まって行き、1m程の輪を作り出す。

輪はそのまま、ユックリと上昇していく。

輪が通り過ぎた所に、徐々に人の姿が現れて行く。

やがて、一人の女性を出現させると同時に、輪は消えてしまう。


そこには、目を閉じた女性が立っていた。

先程、良翔がイメージした通りの女性が現れたのだ。

女性はユックリ目を開ける。

そして、良翔を優しく見つめるのだ。


「…ノアなの?」

恐る恐る、その女性に声を掛ける。

暫く間をおき、女性が答える。

「ええ、良翔。私はノアよ」

先程まで脳内に聞こえていた、声が、目の前の女性から発せられた。

女性の声は、まさにノアのそのものだったが、口から発せられるその声には、先程とは異なり、生きている生命力の様な力強さを感じ、それでいてどこか艶めかしい。

「改めて、初めまして、かしらね」

ノアはそう言いながら、服の裾を指の先で軽くつまみ、少し広げて舞踏会の挨拶の様にお辞儀をする。

そして、顔を上げると、ニッコリ笑う。

絶世の美女がそこには居た。


ノアの髪は、とても柔らかそうな、美しい金色をしていた。

髪は斜め後ろで一つにまとめられ、肩の下ほどまで降りている。

風を受けると、陽の光を返しながら、顎の下まで垂れた前髪が、爽やかに、そして優しく揺れる。

後ろへ向かう髪の途中に、銀色に輝く大きめの髪留めが添えられており、ノアの髪とよく似合っていた。


緑がかった、青色の瞳をもつ、少し大きめな目は、力強く濁りなど一切ない。しかし、とても優しい温もりを帯びている。

そんな目を支えるかの様に、美しいラインを描いた鼻と、薄く赤みを帯びた、綺麗な形をした唇が、互いを引き立て合う様に存在している。


ノアは、動きやすそうな、だが、それでいて女性の雰囲気をシッカリと纏った服を着ていた。

袖はなく、首元から胸にかけて緩めの弧を描きながらたわみを持つ白地の上着を着ていた。

下は黒一色でまとめられており、膝下迄のタイトなズボンと、足にピッタリと沿ったブーツの様だが、決して動きづらい訳ではなさそうな靴が、ノアのスタイルの良さを主張していた。

腰には、何か小物を入れるための、バックが、ベルトの様に、斜めに下がっており、全体のふんわりとした印象にくびれを付ける。


上着がフワッと太腿の途中程までかぶる様な長さがあり、全体的に緩い服装の印象を受けるが、下をタイトにまとめる事で、その美しいであろうノアのスタイルを容易に想像させる。

服の間からは、ノアの健康的な白い肌が見え、全体を眺めると、とてもしなやかな動きを演出できそうな、上質な美がそこにはあった。


活発そうな、でもそれでいて、凛とした美しさと優しさを秘めている、ノアを一言で形容するなら、そんな印象だろう。

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