64 違うスイッチ
最近PVが増えております。
たぶんエッセイを読んで頂いた方ですね。
増えると減るのが怖くなりますが、心を強く。エッセイに書いた言葉を思い出します。
では、64話目楽しんで頂けたら幸いです。
ダイエット、ダイエット。
倉居家からの帰り、丞は小走りで寮までの道を進む。
やっぱり途中で息が切れる。
走ったり、歩いたりを繰り返す。最後の方は走っているのに、ほとんど歩くのと変わらない速度でやっと寮に着いた。
玄関で靴を脱ぎ、廊下に人が居ないのを確認して素早く自分の部屋に入る。途中、自販機でノンカロリーコーラを買おうとして押し間違えた。普段飲まないスポーツドリンクが取り出し口に落ちてきた。
汗でぬれた服を脱ぎ、シャワーを浴びる。ぬるめの温度のシャワーが火照った体に気持ちいい。
食堂に灯りがついていた。今、夕食を食べに行くと社員さんに会ってしまうだろう。
丞はしばらく、ゲームとテレビで時間を潰す。シャワー上がりのスポーツドリンクがおいしい。今度からスポーツドリンクにしようかな、ダイエットしてるし、などと考えながら飲みおわる。
丞は気づかないがスポーツドリンクは結構カロリーがある。
二十時に近づいた頃、部屋着を着て廊下の様子をうかがい、人の気配が無いのを確認して食堂に向かう。
食堂は誰もおらず真っ暗だ。
灯りを点けて、室内を確認。カレーのいい匂いがしている。
ご飯を大盛り、気持ち普段よりも少な目にして丞はカレーライスに集中した。
人がこないうちに、こぼさないように。
フードファイターのようにカレーを食べた丞は、食器を洗浄器にセットして食堂を後にした。灯りを消すのも忘れない。
部屋に戻った丞はベッドの上でゴロゴロする。
「休日の夕食は食べた気がしない」
大盛りのカレーを食べてこの感想だ。
マンガやラノベを読みながら、寝るまでの二時間を消費する。
何かで食後二時間のうちに寝ると太ると読んだのだ。
二時間たったので歯を磨いて、本格的に寝ることにした。
「今日は寝てばかりだな」
白い空間で丞が独り言を言っているとシープが現れる。
『何時に起きますか?』
お決まりのセリフ。
「五時半で」
いつも通りに答えて丞はフぃみョンに入った。
いつものガラスの木の下のテーブルのそばに立つ。
ちゃんとトレジャーハントの獲物の風呂敷も持っている。
「さてと、忘れないうちにジョンさんにポイント返さないと。シープ、ジョンさんに連絡とってくれる?緊急事態じゃないけど会いたいって」
丞は椅子に座り、テーブルに風呂敷を置いてシープに頼む。
『わかりました』
座った丞の顔の高さに浮いたシープが、頭の横に小さな手を当てて目を閉じる。レーダーみたいにくるんくるん回り、しばらくすると一つの方向を向いて動かなくなった。
「「タスク ワタシ アイタイ?」」
丞の頭の中にジョンさんの声が聞こえた。
「「はい、ジョンさんの都合のいいときで良いんですが、まとまったポイントが入ったんで、返そうかなと」」
「「イツデモ イイノニ デモ タスク アイタイ スグ イクネ」」
「「お待ちしてます」」
テーブルからコーラを出して丞はジョンさんを待つ。
今日はガラスの木からレモンみたいないい匂いがしている。涼しげな風が吹くたびに色とりどりの透明な葉の影がテーブルの上に自然のアニメーションを描く。見ていて飽きない。葉がぶつかってしゃらしゃらと綺麗なBGMも聞こえている。丞はボーッとテーブルの上を眺め続けた。
『いらっしゃいました』
シープの見ている方向をみるとジョンさんが歩いてきた。
この前より伸びたのか頭のモコモコした羊毛が膨らんでいる。まるで大きなアフロヘアーだ。二つ見える丸いものはたぶん普段はバネの先に着いていて揺れているヤツだろう。今は髪?に埋もれてしまっている。
今日、ジョンさんは女性用のスーツみたいな服を着ている。ネイビーブルーの上着にパンツ。白いシャツを豊かな胸が押し上げてる。
女性のスーツもいいなと丞は近づいてくるジョンさんを見て思った。
「オマタセ タスク ドコミテ マスカ?」
ジョンさんからマズイ質問が飛んでくる。
さすがに胸ですとは答えられない。宇宙人的にもアウトだろう。丞はあまり回す物の無い頭をフル回転させた。
「か、髪伸びましたね」
なんとか無難な箇所を見てましたとジョンさんに伝えてみる。
「ノビテ ナイ コユウ カミガタ セット ジカン カカル マエガミ ガンバタ ドウ?」
上機嫌でジョンさんが髪型の感想を女性に慣れてない丞に聞いてくる。
ヤバイ、これ間違うと怒りスイッチ押すやつだ。五ミリ切って枝毛が減ったとか言うやつ。九海も時々やる間違い探しの突然の開催。丞の頭の回転は止められない。
「「シープ、何かわかる?」」
この場にいる唯一の味方に聞いてみる。
『『羊毛の質がステキです。きっといい毛織物になります』』
違う、そうじゃない。今度シープの毛で毛糸を作ってやろうか。丞は頼りない味方にガッカリする。
「よく、お似合いです」
結局、無難な答えを返した。正直、前回会った時と前髪の違いがわからない。
「ソウ アリガト コノ ヘア アクセ ツカイカタ イマ ハヤリ ビジネス シーン ツカエル サイ センタン キョウ スーツ イロ ・・・
丞はジョンさんの怒りスイッチ以外の、スイッチを押したようだ。ジョンさんの話が止まらない。
まあ、いいか。ジョンさん楽しそうだ。
不定期に開催される次の間違い探しのヒントにするべく、丞はジョンさんの話を集中して聞くことにした。




