516 PTA! PTA!
タモリ倶楽部、三月で終了。
マヂですか・・・。
まあ、タモリさんも八十近いわけで、それはそうかな、と。
なんというか。気付きのあった番組でしたね。
人が見ていないというか、見ていても気にも止めない場所にスポットライトが当たるような。
年二でも年一でもいいから特番してくれないかな。
もう、初回から再放送でもいいかも。
たぶんそれでも視聴率がとれるんだろうなぁと思いながら書いた516話目、“面白い”ってどこにあるんだろう・・・。
「いかないか」
「・・・どこに」
左手はベンチの背もたれの後ろで、右手は胸元。
なにやら漫画に出てきそうなポーズで自分に問いかける全に、丞は訪ね返した。
某J○J○ラスボス級キャラクターに言わせると、質問に対して質問で回答してはいけないそうだが、行き先も告げないお誘いにほいほいついて行けるほど丞も暇ではない。
何しろ相手は地球育ちの宇宙人。
軽い問いかけで連れていかれる場所は宇宙規模なのだ。
「ここいらのTKGの地区本部だよ。移動は徒歩だ」
「なら・・・」
どうやら最終目的地に合わせて待ち合わせ場所を決めていた全に丞はうなずいた。
呼び出しのメール───まだガラケーの丞の携帯に、着信しないLINE系のメッセージ───の文面は硬質。
いつもと違い砕けたところのない内容でも、事態が差し迫っているのは明白だ。
こうして丞はTKGの地区本部とやらに足を踏み入れたのだった。
☆
「・・・」
人は本当に驚くと声をなくす物らしい。
とはいえ壁際に天井ギリギリ=三メートルの宇宙人が並び、最前列で灰色=グレイがその大きな頭をすまなそうに縮こませていれば、丞ならずともぽかんと口を開けるのも仕方ないだろう。
全に案内されて到着した超が付くほどの高級マンションの一室は、さながら宇宙人の見本市だった。
先に上げた二種類の有名どころを筆頭に爬虫類っぽい人が並ぶ。その横には金髪に虹色の瞳をした美男美女が、目のやり場に困るピタッとした服を身にまとっている。
その後ろにいるのは、昔に比べようもないほどスマホというカメラを皆が持ち歩いているのに、目撃証言だけなのは何かしら宇宙的に妨害してるのかなーというゴムっぽい質感カラフルな顔の一団で、そのとなりには手のひらサイズのおっさんっぽい集団がちょこちょこと歩いて。
こうなると、ごとりと場違いに床に置かれた石や、わさわさと枝葉を繁らせる観葉植物も、宇宙的な生き物に見えてくる。
「あのグループは?」
もちろんというかなんというか。
丞がここに案内されているように、人間もちゃんといる。
地球人も宇宙人の一種である以上、当たり前と言えば当たり前だが、額に目があったり、どう見ても関節以外のところで曲がっているのはどう理解すればいいのか。
「共生組、だな」
手足や脳の一部。
トラックに跳ねられたり、遭難したり。
稀な事態に稀な出会いが重なる事も多いらしい。
そういえばウル○ラマンも過失事故による合体だったなーと丞が思い出したところで、部屋の証明がスッと暗くなった。
「まずはお集まり頂いた事に感謝する」
とてとてとて、と表現するのがぴったり足取りで現れた小型犬が、身長に合わせた机の裏ですっくと立ち上がる《ダメな部分を隠す》。
このチワワっぽい人が、局部隠蔽検定有段者の本部長で、丞も知っているチチワである。
「単刀直入に言おう。PTAがくる」
ピタッからの~、qえrtゆい。
声にならない声=テレパシーやら、電子音やらに乗り遅れているのは純粋な地球人、丞や地球外生命体に体を貸している本体だ。
え? 父母と先生の会が何? という疑問は、発表者の丁寧な説明によって解消され───ていく。
「PTA、Planet Teaching Admimistratorの理不尽さは皆も知っているはずだ」
───たりはしなかった。
「そうだ! やつらの横暴を許すな!」
「地球文明を守れ!」
「B級映画万歳!」
「ゾンビとサメを保護しろ!」
口々に言いながら拳───もしくはそれに該当する器官───を突き上げながら盛り上がるTKG会員の中で、地球人だけきょとんとしているのはどうなのだろうか?
「プラネットてーちんぐアドミニストレーターって?」
頭文字の印象的にも、回りの反応的にも、あんまり良いイメージではないが、聞かないと始まらない。
「別名、ファーストコンタクトコレクター。そしてオンらイン普及主義者、かな」
どこか疲れた様子で全が重い口を開いた。
「詳しく説明するなら、空気を読まず、堂々と姿をさらしながら惑星に降りたって、オンらイン、地球で言うところのフぃみョンをばらまいて去ってく迷惑な集団だ」
「はぁ」
詳しく説明されても丞にはいまいちその迷惑さがわからない。
ファーストコンタクトやフぃみョンの譲渡に何か問題があるのだろうか?
「まずは降り立つ地域で大騒動だな。古代みたいに神っぽく扱われたりはしないだろうが、それでも来てほしい国は多いだろうよ」
話が通じなかったり、いきなり三本足のマシンで攻めてこないなら、ファーストコンタクトという名誉を求める国は多いだろう。
「そしてもたらされるのが、超技術の固まりの上、知識への扉を開く鍵だ」
丞はコンビニの喫煙スペースでもらったから実感しにくいが、フぃみョン本体はオーバーテクノロジーの産物である。
「あれ? 地球の技術以上の知識って持って変えれないんじゃ?」
「まあ、そうだな。でも、それを知らされるのは使った後だろ」
確かに。丞もシープに会ったのは使ってみた後だ。
「使えば一発で理解できても、言われて納得できるのが何人いるか。さらに他にもチートっぽい機能はあるのに、やつらは地球人口分なんてもちろん用意しないぞ?」
現在の世界人口、ン十億人。
一億台用意しても日本人にすら行き渡らない。
夢を利用したフルダイブ体験は言うに及ばず、フェムトマシンをインストールされた人間はそれによって一応不死になるのに、だ。
「頭痛くなってきた」
「オレはずっと痛い」
高級なだけあって防音レベルは高いのだろう。
いつまでも騒ぎが止まないマンションの一室で。
丞は自分にできる事を探し始めた。
次回投稿は三月一日予定です。




