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328 くせのある○○

当たらないというか、延びる天気予報が。

予想最高気温、来週には下がる予報だったのですが、最新の情報では三十度オーバーに。


それでも、夜には少しずつ虫の音が。


早く涼しくならないかなぁと思いながら書いた328話目、お楽しみ頂けたら幸いです。


「・・・なんなのかしら? この状況は?」

 フぃみョンへと移動してきた委員長の前に意味不明な光景が広がっていた。


 砂漠に立つ弁慶柱はサボテンの名前だが、良く似た風貌の宇宙人が、ガラスの木の下のテーブルに向かい合って座っている。


 頭、らしきところの側面に腕、が対に二本。

 体の部分を表す単語の後に “間” が入るのは、地球人と同じような部分が、人間と同じ様な体の仕組を果しているのか判断に困るからだ。

 さらにその下。腕、根本が合流して伸びた胴体の先端からは移動用らしい枝が生えているが、下向きに四本なのでさらに足、と表現して良いのか悩ましい。


 ギギギっと油の切れたような動きから、ガシン! と音のしそうな勢いで体の左右についた腕の角度を変更しあっている。

 たまに体を揺すっているのが笑いだとすれば、口の無い種族の会話───というか、意思伝達───方法だというのは分かるのだが・・・。


「問題は、目のような物も無いことね」

 キリッ。委員長の表情が更なる謎に引き締まった。


「イヤ、そこ(キリッ)じゃネーだろ・・・」

 来たとたんに隣のテーブルを向いて逃避し始めた委員長に黒次が突っ込んだ。

 そろそろ、こちらを見て貰わないと困る。

 軽く目を覆っている彼もあまり直視したくないのだが。


 九人中、五人。

 九海、丞、白次と。

 月子さんと抱きつかれたシープが口から煙りっぽいモノを立ち上らせて、ピクリとも動かない。

 よく見れば煙りっぽいモノの先端には腕のような小さな突起が二つついており、影で表されている表情は出所の人に良く似ていた。




「・・・そう言われても。何かしらこれ?」

 委員長が、白次と丞(男ども)に伸ばした指を引っ込めて、最終的に九海の口から出ているモノをちょんちょんとつついた。


「エクトプラズム的な表現なんだろうな。オンらインだとたまにある」

「オンライン?」

 怪訝(けげん)そうに全に向けられた委員長の眉間の皺は誰に説明されなくてもほどけていく。

 この世界の用語などはシープに教えられて───というか、記憶の転送をされて───いるので、宇宙人系の人がフぃみョンをオンらインと呼ぶのは自然に理解できるのだ。



「ん」

 そして、この状況の原因も。

 姫様がむぐむぐと口を動かしながら、金箔を散らしたような包装のスティックを委員長に差し出した。


 ・・・ダイイングメッセージはないけれど。

 ・・・同じような空容器が三人の周囲に散らばっている。


「しやわせー」

 シープに頬擦りをしている月子さんの周り、以外に。



「え? 何? この状況?」

 フぃみョンについた最後の一人、普段無口な虎城くんもさすがに口を開いた。

 あまり喋らない彼でも、十人中六人が変なモノを口から出している状況は確認する必要ありと判断するようだ。


「シープと月子さんは良いとして」

 シープが月子さんの過剰なスキンシップが原因だろうし、月子さんはシープへの過剰なスキンシップが原因だろうし。

 委員長と、・・・確か丞の友達の女性と。

 丞自身と白次に何があったのか。


「ん」

 とか、考える必要も無く。


 最後の一人にも。

 スティック状のおやつは差し出された。



 うん。

 無着色のトロリとした食品を舌の上に載せた虎城くんは一つうなずいた。


「まず最初に感じるのは第五の味覚。鳥モモにしても、ツナにしても、のどぐろや蟹でさえも構成している基本はたんぱく質。つまり、旨味ね。商品開発の構想上、塩味、酸味、甘味、苦味があまり使えないのでイノシン酸やグアニン酸を中心とした味の組み立て。ペースト状なのは手を使わない種族向けの商品だから。あえて噛みごたえを排除し、なめらかさを追及した舌触りは絹のよう。舌に力を入れれば味蕾の隙間さえも埋めるように入り込む濃厚さは、浅く嘗めればどこまでも途切れずベールのように被さり蕾が花開くのを・・・」

 委員長の口、ではなく、そこから出た煙りっぽいモノの先端がやや甲高い声で食レポしている通りの味だ。


 簡単に言ってしまうと “薄い” というか。


 調味料、特に塩が使われていないので物足りない。


「別に、いいけど」

 虎城くんにはお馴染みの味だ。

 などと言ってしまうと「普段何を食べているのか?」という疑問を招きそうだが。

 彼は別に、地球人以外用のおやつを常食にしているわけでは無い。

 度を越して野球が好きな両親が用意してくれる “身体に良い” もしくは “健康な体を作る” 食べ物に塩分が少ない事が良くあるのだ。


 そしてこれは塩の刺激が物足りない割には味が濃い。


 矛盾しているようだが食べすぎる原因は、まさにそこなのだろう。

 不味くは無いんだけど──という感想が次の一口を迎え入れて。


 気がついた時には食べすぎる。


「最高ですわね!」

「そうですね」

 もちろん、この味付けが好きな()もいるのだが。


「醤油」

 虎城くんは呼び指した小皿の液体に、ちょんとスティックの先端を触れさせた。



「全員そろったので始めます」

 口から出ていたエクトプラズムっぽいナニかを元に戻した委員長が仕切り直した。


 勢ぞろいどころか、本来の異世界会会員数をオーバーしているのでいつものガラスの木の下のテーブルがちょっと狭い。


「ちょっと関係のない人もいるけど、全員参加するのかしら?」

 委員長が満腹を抱えてコロンと転がった姫様とミッケニと高校の違う二人に確認する。


 特に否定なし。なら良いわね。


「次は日程。一泊二日か、二泊三日を考えているのだけれど。ゴールデンウィーク期間中、用事ある人いる?」

 

 ちょっと強引に、ある(・・)議題を避ける。


 丞と空来の二人とポンポン腹の子ダヌキ、もといナンニャー星人以外のメンバーは、そんな彼女にそっと目配せを送っていた。

次回投稿は六日予定です。

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