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177 シープのミニゲーム 2

 昨日で投稿を始めて一年がたちました。

 一年、よく続いたな、って思います。

 いや、続いてない(エタッてる)のもあるのですが。

 それでも感慨深くはありますね。


なんかしみじみしながら書いた177話目、楽しんで頂ければ幸いです。

『ン~』

 どこかで誰かが唸っている。

 うるさいな。

 誰ですか? と考えた所で、唸り声の発生源が自分の口だとシープの耳は捉えた。

 それを切欠に、じわり、じわり。乾いた砂に水滴がしみていくように徐々に意識が戻ってくる。


 ・・・どうやら仰向けに落ちたようです。なんだったのでしょうか、アレ。

 横向きの口が自分に噛みつこうとしているように見えたのですが。

 意識を失う前の(失神による影響が)記憶を思い出し(にないか)、まだアレいますかねと考えながら、シープはそっと、もし自分を見ている存在がいるならば、ソレに気づかれないようにと、目蓋をほんの、本当にちょっとだけ開いてみた。


 ・・・いる。なにかがいる。


 こう、輪になって自分を取り囲んでいる影がぼんやりと見える。


『何したの?』

『い、いや、か、肩を叩いて、声をかけただけ、だけど』

『なんで、それだけで落ちてくるんだ?』

『な、なんでかな?』

『もしかして、消えてなかった?』

『・・・』

『お前、それやめろよ』

『そうだよ。肩叩かれて後ろに誰もいないって心霊現象じゃねーか』

『この羊も災難だったな』

『イカルの犠牲者に追加っと』

『み、みんな、ひ、ひどいよ』

『ひどいのはイカルだろ』


 ああ。周りの人はお仲間(ナビ)のようですね。

 周囲から聞こえる声の性質でシープは影の正体を悟った。

 フぃみョンではナビの声がプレーヤーより優先される仕様になっている。

 それが独特な響きとなってナビとプレーヤーの声の区別を可能にしていた。


『あ、また消えた』

『お前、まずくなると消えて逃げるのやめろよ』

『だ、だって』


 イカルという方は透明モードをお持ちなのですね。

 透明モードはナビがセットできるオプションの一つだ。

 オプションの一つではあるが、実装している個体は少ない。

 実装するのにはポイントが必要だし、デフォルト(元々の基本実装)の非実体モードでほとんど同じ事ができるからだ。


 違うのは一点だけ、非実体モードは実体が無いので物に触れない、透明モードは透明なだけなので物に触れる。


 だけだと思ってましたが。


 シープは透明モードの新たな利点を見いだした。

 現在、シープの非実体モードはOFFとされている。

 これは今、プレイ中のゲームによるもので自分ではONにできない。

 目に見えないのは、結構有利に働く事が多いですからね。

 OFF(禁止)されるのも納得です。

 でも、あのイカルと呼ばれたナビは消えていた。


 別の能力だからでしょうか?

 デフォルトの非実体モードは一括でOFFに。透明モードはOFFから漏れたか、ポイント使用してまで得た能力なので見逃されている?


 普段、使えないような能力でも使い道はあるものです。


 でも、なぜ透明モードを?

「お前の消し方」とか聞かれ続けたのでしょうか?


 疑問は残ったが、ナビの会話自体に問題が(は自分の敵では)ないようなので、シープは周囲の人にもわかるように目を開けた。


『あ、気がつきましたか? す、すみません』

 気が弱そう、と一目でわかる様子のイルカっぽいナビがシープに謝ってくる。

 大きめの口が控えめに開くたびチラリと牙のような歯が見えた。

 イルカってそういえば、肉食でしたね。

 さっき、自分の背後に現れた口の正体はコレでしたか。


 自分が考えにふけっ(肩たたきを無視し)ていたので、大声を出そ(気づかれよ)うとしたタイミングで振り向いた、と。


 心霊現象の事を考えていたので、気を失いましたが。


 普通、普段なら平気ですよ?


 シープは誰にも届かない言い訳をする。


 ・・・。


 イカルと呼ばれたナビは謝った後は黙っている。

 周りにいるナビも沈黙を守っている。


 ああ、リーダー不在なのですね。


 シープは静かさの正体に気がつく。


 ・・・、今日はやたらと何かの正体に気づきますね。


『私はシープです。・・・様のナビです?』

 あ、そうでした。主人が誰だか思い出せないんでした。

 シープの少し間の抜けた挨拶に場が和んだ。


『い、イカルです』

『ワッラです』

『ウオタです』

『ヘビィ』

『フッワ』

『・・・』

 イルカっぽいナビ、藁人形ぽいナビ、水が丸まったようなナビ、羽のついた蛇っぽいナビ、風船っぽいナビが自己紹介した後、最後のナビがゴニョ、ゴニョと聞こえない声量で口を動かす。


『ァァァァ』

 皆の注目に耐えきれなくなったらしいモップのようなナビがもう一度口を動かすと小さく、小声で恥ずかしそうにしながら自己紹介した。


『ああ。主人が・・・』

『面倒くさがり屋だったか・・・』

『いや、アアアアっていうのが、こう、なんだ、良い意味だって可能性も』

『星が違えば、常識も違うから』

『か、可能性とか、じ、常識って言ってる時点で、ち、違うんじゃ』

 どもりながら、空気を読まないイカルに視線が集まる。


 スーっと空気に溶けるようにイカルの姿が消えていく。


『お前、気まずくなるたび消えんなよ』


 便利ですね。

 透明モード、何ポイントで実装できるのでしたか?


 いえいえ、このゲームが終われば要らなくなりそうですし。


 能力は一回実装すると返品とかできませんしね。


 シープの考えがまたずれていく。


 ナビは基本、主人に合わせて活動する。

 その為、自発的な行動は苦手なのだった。

次回投稿は二十一日予定です。

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