第095話 ご招待
今日ここに来てからというもの、見かける女性従業員は皆、メイド服を着ていた。
そして今、ボク達の視線の先には3人のメイド服姿の女性が、それぞれ冒険者らしき人物を無力化していた。
まず女性従業員の内の二人は、地面にうつ伏せに倒れている男の背に乗り、左腕で男の首を締めつつ、更にもう片方の腕で男の右手首をつかみ、腕を背後に回しながら、更にその手首を捻っている。
その姿はまさしく、警察が犯人を取り押さえているような光景だ。
これならまだ暴れた客を取り押さえる従業員という事で納得出来る。
だが、問題は3人目の女性従業員だ。
その女性に無力化された人物の様子が明らかにおかしい。
というのも、3人目の女性従業員の隣には、上半身が地面の床に突き刺さっており、[Y]字の様に開かれてた両足だけが見えている。
ココが湖ならば、その光景は完全に[犬〇家]である。
「明らかに一人だけ酷いよな」
鼻で笑いながらそう呟くボクに、ルーリアは乾いた笑いで答えた。
「あら?もしかして貴方達…」
ボクとルーリアの存在に気付いたのか、〇神家風な光景を作り出していた女性従業員はそう言うなり、瞬時に距離を詰めて来た。
「っ!?」
明らかに一般人ではないその動きに、ボクとルーリアは驚き、身体がビクリとなる。
「ユウキさんとルーリアさんね?」
突如名前を呼ばれたボク達は、揃って「へ?」と、揃って気の抜けた様な返事をする。
一体この女性は誰なのだろうか?と不思議に思っていると、女性の身体が眩く光ると同時に、小さな小動物の姿に変わる。
「その姿はまさか!?」
全身の毛が薄い青色をしており、前身はまるでフェレットの様な姿だが、その頭部には細長い耳と額には青い宝石が付いていた。
そんな特徴的な姿から、ボクは目の前の存在の正体に気付いた。
「水の精霊王、ウンディーネ様」
「せいかーい!後、私の事はディーネって呼んで」
明るくそう答えながら、ディーネはボクとルーリアの頭をその小さな前足でナデナデしてくる。
何故撫でられているのだろうかと疑問に思うが、とりあえずその仕草は可愛いので、黙って撫でられておく。
そしてボク達二人を撫で終えると、ディーネは「そうそう!」と、ふと何かを思い出したかのように小さな両前足をポンと叩いた。
「あのね、ナツキさんが今夜二人を夕食に招待したいって言ってたわよ」
「夕食にですか?…分かりました。そのお誘い、是非参加させていただきます」
唯でさえこの[恵みの湯]の宿泊手配をしてもらったのに、更に夕食の招待までしてもらえるなんて申し訳ない、なんて考えたが、だからといって断るのも失礼かと思い、ボクはその招待を受ける事にした。
そんなボクの答えに、ディーネは嬉しそうな表情を見せながら「それじゃあまた夕方に迎えに来るわ」と言うと、そのまま建物の外へと向かい飛んで行ってしまった。
その後姿を見送った後、ボク達も部屋へと戻る。




